Ren Ferguson Montana Rivers Masterpieces #3

〜大自然に呼応する至高の機能的アート〜

ギブソンを支えた奇跡のビルダー

ビートルズやローリングストーンズ、トム・ペティといった音楽史に名を刻むレジェンドたちのギターを手掛け、Gibsonアコースティックの黄金期を牽引した巨匠、レン・ファーガソン。

彼はいま大手メーカーからは退き「Ren Ferguson Co.」にて、独自の経験とアイデアをもとにしたアコースティックギターの製作を行っています。

そしてこの度、歴史に新たなページを刻む究極の作品が誕生しました。

それが「Montana Rivers Masterpieces」シリーズです。

Montana Rivers Masterpieces

モンタナ州の雄大な自然と、世界最高峰のトラウトフィッシングの舞台であるギャラティン川やマディソン川、イエローストーン川。この美しき川と大自然へのオマージュとして製作されたのが、この限定シリーズ。

「私の住むこの地域は、素晴らしいフィッシングと深く結びついています。それに敬意を表し、この世界観をギターに取り入れたかったのです」

レン氏がそう語る通り、このシリーズには息を呑むほどの緻密なアートが施されています。

ヘッドストックには、アバロンとマザー・オブ・パールで描かれた「巨大なニジマスと格闘する釣り人」。
エボニーの指板には、ウーリーバガーやエルクヘアカディスなど、モンタナの川で欠かせない9種類の毛鉤(フライ)が乱舞します。

さらに、ピックガードにはコア材や竹を用いたビク(魚籠)やフライボックス

極めつけはネックヒール部分に彫刻されたニジマス

自然に色づけられた様子で、今にも木から飛び出してきそうな生命を感じさせます

1本のギターを製作・彫刻・研磨し、完成させるまでに費やされた時間は実に「400時間」。

単なる楽器製造の枠を超えた、執念とも言える芸術作品です。

「音」に一切の妥協をしない

しかし、このギターが真に恐ろしいのは、これほどまでの装飾を施しながらも、楽器としての本質を一切見失っていない点です。

「私の最優先事項は常に、木材が許す限り最高の音を奏でるギターを作ることです。装飾が音を損なうことは決してありません」

極上のサウンドを生み出すイースタン・ハードロック・カーリーメイプルをボディに採用し、明るくもふくよかでバランスの取れた、弾き手を挑発するようなサウンドを見事に実現しています。

この芸術的な装飾は、決して見栄えだけのものではなく、プレイヤーの奥底からインスピレーションを引き上げるための「機能的なアート」なのです。

実際にNAMM2024で弾いたとき、騒がしい会場内でも一音一音の輪郭がわかるほど芯のある素晴らしい音色であったことを鮮明に覚えています。

シリーズが起こした衝撃

「Ren Ferguson Co.」の再始動と本作の誕生は、アメリカのギター愛好家やコレクターの間で大きな注目を集めています。

その評価の高さがうかがえるのが、モンタナ州ビッグスカイで開催された河川・景観保護のためのチャリティ・オークション「Wildlands」での出来事です。

このイベントに、レン氏が製作したカスタムギターが出品されました。
独立後のレン氏が手掛けた貴重なワンオフモデルということもあり、出品されたギターを巡って入札者同士による競り合い(フレンドリー・ビディング・バトル)が起こりました。オークションは白熱し、最終的に上位2名の入札者双方が、それぞれ「80,000ドル」を支払い、好みのギターを1本ずつ持ち帰るという異例の結末となりました。

これは、レン氏のギターが単なる楽器としてだけでなく、美術品としても高く評価されていることを示すエピソードです。

もちろん、ギターとしての本質である「演奏性」も卓越しています。同イベントで演奏を披露したアーティスト、ルーカス・ネルソン氏の専属テックは、その楽器としてのクオリティを次のように語っています。

「箱から出した瞬間からこれほど完璧な状態のギターは見たことがない。一切の調整が必要なかった」

80,000ドルという価値がつけられる芸術性を持ちながら、プロの現場で即座に通用する精度とサウンドを誇る。
これこそがまさに、究極の「機能的アート」と言えます。

奇跡の入荷。世界限定7本のうちの「#3」

Ren Ferguson MT-Jumbo #3

世界でわずか7本のみが製作されるこの完全ワンオフのマスターピースのうち、歴史的な【#3】の個体が、ここ日本、Advance Guitarsに入荷いたしました。

レン・ファーガソンがこれまでの長く輝かしいキャリアの集大成として創り上げた大自然とクラフトマンシップの結晶。

この「Montana Rivers #3」が放つ圧倒的な凄みと、細部に宿るレン・ファーガソンの魂を、深く紐解いていきます。

Ren Ferguson MT-Jumbo #3

今回、Advance Guitarsに入荷した【#3】は、GibsonのJ-200に相当するモンタナ・ジャンボ(MT)シェイプを採用しています。

この1本には、レン・ファーガソン氏がギター作りに込める「機能美(Functional art)」の哲学と、妥協なきクラフトマンシップが細部に至るまで宿っています。

ネックとボディを共にする「The Watchman(管理人)」の木材

このギターの最大の特徴の一つが、ネック、そしてサイド&バックに全く同じ1本の木から採れたウェスタン・メイプルが使用されている点です。 この木材には特別な歴史があります。コロンビア川のカラマ・フォールズにあったダムの敷地に生えていた、樹齢100年以上の木。これを伐採したダムの管理人である日本人(ワタナベ氏)が、自らの特別なコレクションとして窯に入れず自然乾燥(エアドライ)で長年保管していた最高品質の部分です。「君ならこれで世界で一番素晴らしいものを作ってくれる」とレン氏に託されたこの木材を、ファーガソン家は敬意を込めて「The Watchman(管理人)」と呼んでいます。レン氏自身が「今まで手にした中で最高のウェスタン・メイプル」と断言する材が惜しみなく使われています。

古き良き時代に学ぶ、内部構造と「音」への哲学

トップ材とブレーシングには、レン氏が1990年代前半に入手した、木目が均一なアディロンダック(レッド)・スプルースが使用されています。 特筆すべきは、ギターのブレーシングを意図的に「ツルツルに研磨しすぎない」ことです。
この発想の原点は、レン氏が1960年代に行っていたギターの修理経験にあります。 「私たちが大切にし、コレクションしている1930年代や40年代の古いギターは、内側に荒い削り跡があったり、接着剤がそこら中に垂れていたりする。それでも素晴らしい音がするんだ。新しいギターがなかった60年代に、古いギターを修理することで私はそれを学んだ」と彼は語ります。
この経験に基づき、彼はギターの内側に少しの質感を残しています。表面が滑らかすぎると音が速く伝わりすぎてしまうため、あえて音のスピードを少し落とし、内部で音が熟成する時間を作っているのです。レン氏が「温かくて居心地の良いキャビン(丸太小屋)の室内」に例えるこの内部構造により、メイプル特有の速いレスポンスに、分厚く、温かく、豊かな丸みが加わっています。

フライフィッシングの情景を再現した緻密なインレイ

フライフィッシングのインレイは、単なるデザインではなく、ファーガソン家からわずか5kmの距離にある「ギャラティン川」での釣りを正確に表現したものです。

ピックガード:
レン氏の祖父が1930〜40年代に使っていたクリール(魚籠)、1920〜30年代のハーディ製のリール、トンキンケーンのバンブーロッド、コア材のハンドルなどを、ゴールド、シルバー、真鍮、アバロンを用いて精巧に再現しています。

ネックヒールの彫刻(カーヴィング):
木材の上に貼り付けたのではなく、ブロックから直接彫り出されています。
その上から水彩絵の具を極めて薄く塗り重ね、斑点にわずかなラメを施してラッカーで仕上げることで、強いカーリー杢の奥に「水中で濡れているニジマス」が透けて見えるような視覚効果を生み出しています。

指板:
指板には、ギャラティン川での釣りに実際に使われる9種類の毛鉤(フライ)が、アバロンとマザーオブパール(白蝶貝)を用いたモザイクアートで描かれています。これは無秩序に選ばれたデザインではなく、熱心な釣り人であるレン氏の娘婿に「実際にこの川で一番釣れるフライはどれか?」と確認し、数あるパターンの中から厳選された、まさに「リアルなギャラティン川でのフライフィッシング」そのものが表現されています。

ブリッジ:
ブリッジ(と指板)には、最高級のアフリカ産ガボンエボニーが採用されています。ガボンエボニーは、マグロ(真っ黒)と呼ばれるような深い漆黒の色合いを持つ高級木材です。非常に硬質で密度が高く、音の輪郭をクリアにし、メイプルボディのレスポンスの良さをさらに引き立てる音響特性を持っています。このブリッジにも手彫りの彫刻が施され、フライフィッシングを象徴するインレイがあしらわれています。

完璧を求めた「ボディの作り直し」と、青い川のバインディング

実は、この【#3】のボディは「2つ目」にあたります。最初に製作されたボディはすでに塗装工程に入れる状態でしたが、ボディ接合部のバインディングの仕上がりがレン氏にとって「完璧ではなかった(ほんのわずかに隆起していた)」ため、彼自身の判断で直前に却下されました。通常の量産工場であれば、塗装を厚くして隠すような微細なニュアンスであっても、彼がそれを許すことはありませんでした。
一から作り直された現在のボディには、新たなアイデアとしてバインディングに「青い木材」が追加され、ギターの側面に美しい「川」が流れるデザインへと見事に昇華されています。
そして、この側面の川の流れに沿うように、ニジマスが上流を向いて泳ぐ習性がインレイで表現され、やがてヘッドストックに描かれた釣り人によって釣り上げられるという、一本の壮大なストーリーがギター全体に描かれています。素材、装飾、デザインのすべてを駆使して「フライフィッシング」という世界観を体現したこの個体は、ギターとして極めて稀有な存在であり、まさに至高の芸術作品と呼ぶにふさわしい仕上がりです。

Advance Guitars 井上より

ヴィンテージギター専門店として、これまで数え切れないほどの歴史的名器を扱ってきました。1930年代や40年代のギターが放つ圧倒的なオーラは、長い年月と弾き込まれた歴史によって作られるものだと考えていました。

しかし、モンタナの工房でレン・ファーガソン氏と対話し、完成したこの「Montana Rivers #3」を手にした瞬間、その認識は覆りました。

レン・ファーガソン

ティモシー

彼が目指すのは「鑑賞するための芸術品」ではありません。細部にまで異常なほどの情熱が注がれ、美しい装飾が施されていながら、一度つま弾けば、アディロンダック・スプルースと「The Watchman」メイプルが織りなす豊潤で太いサウンドが、弾き手に「もっと弾きたい、もっと上手くなりたい」と思わせます

「ギターは魅力的でなければならない。そうすれば触りたくなる。触れば、その音に恋をする」とレン氏は語りました。弾くことを躊躇させるような過剰な装飾品ではなく、傷がつくまで弾き込みたくなる「機能的アート(Functional art)」。

このギターには、私たちが愛するヴィンテージギターと同じ、時代を超えて生き続けるための「魂」が、作られたその日からすでに宿っています。

日本の、そして世界のギター愛好家に、この究極の1本を届けられることを誇りに思います。

ヴァージニア

モンタナ州リビングストン出身のライター兼写真家。
西部各地のアウトドアをテーマに撮影や執筆活動を行う傍ら、
屋内では高級ギター、アヒルのデコイ、最高級ステーキなど、食品や製品の写真撮影も行っています。

解き放たれた「機能美」の極致、レン・ファーガソンギターとアドバンスギターズによる2026年特注モデルの紹介

奇跡の出会いとレンの歴史的な経歴をご紹介

現地を訪れて

この最高級ともいえる、アコースティックギターが実際制作されるモンタナへ行ってきました。あの巨匠 レン・ファーガソンとその家族と会い、どのような環境でギターが造られてるかを現地で確認することは、日本で代理店としてユーザーさまにお届けするうえで、とても大切であると考えたからです。

想像を超える巧みな作業とチームワーク、そして楽器に対する姿勢と愛情が私の魂に伝わってきました。

アドバンスギターズの店長として胸を張って、最高のギターと確信しております。本当に感動するレベルの逸品です、ぜひその手でモンタナの空気とレン・ファーガソンファミリーの愛の結晶、濁りのないサウンドを満喫ください。

NAMMでMasterpiece#3を解説するレン・ファーガソン

レンと談笑する井上

この記事を書いた人:Advance Guitars 店長 井上(いのうえ) - ビンテージギター研究家

幼少期より楽器に触れ、数千本を超えるヴィンテージギターの査定・販売に携わるエキスパート。海外のコレクターやディーラーとも太いパイプを持つ。 「ギターの歴史は、色やスタンプひとつで変わる」を信条に、マニアックかつ愛のある解説を心掛けている。

ひとこと:Ren Ferguson Co.による待望のマスターピースです。これまで当店では、レン・ファーガソン氏が手掛けたGibson SJ-200の数々のフラッグシップモデルや、独立後の新たな作品をご紹介してまいりました。そして今、こうして再び「現代における最高峰のアコースティックギター」をこの手にできたことを、心から光栄に思います。レン、ティモシー、ヴァージニア、そして本機の製作に携わったすべての方々に、最大限の尊敬と感謝の意を表します。

保有資格・実績: 楽器鑑定士歴8年、ギターマガジン等への執筆・監修協力

 

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