〜アコースティックギター専門店が紹介するアコギ保管術〜

実は危険? やりがちなアコギのNG保管方法

アコースティックギターにおいて、「弦を緩めるべきか?」という疑問の次に多くいただくのが、「どうやって保管・管理すればいいのか?」というご質問です。

「ケースに入れておくのがいいの?」「スタンドと壁掛けならどっちの方がいい?」「温度や湿度はどうすればいいの?」
大切なギターを持っている方なら、誰もが一度は気になるテーマではないでしょうか。

保管環境が原因で大切なギターの状態が悪くなってしまうのは、誰しも避けたいことだと思います。

今回は、これまで何万本もの中古・ビンテージギターを見てきた専門店としての知見と、店舗や自宅で実践しているリアルな管理方法を交えながら、「アコギの保管術」を紹介します。

1. ハードケースに"入れっぱなし"は実は危険!?

1-1. ハードケースでの保管

まずは、保管する上で注意すべき点についていくつか挙げたいです。

ひとつめがハードケースでの保管です。

「頑丈なハードケースに入れておけば安心!」と思って、そのままの状態で放っておくと、かえってアコギの状態を悪化させてしまうことがあります。

塗装のただれ:

高温多湿の環境では、ケース内装の化学繊維とギターの塗装が反応することがあります。
塗装がただれたり、生地の毛が本体にくっついて取れなくなったりします。

金属パーツのサビ:

気密性の高いハードケースは湿気がこもってしまうことがあります。
ケースの中に湿気がこもると、弦だけでなくフレットやペグまでサビてしまうことがあります。

思わぬ転倒時の木部割れ:

ハードケースを部屋の隅に立てかけている方も多いのではないでしょうか。
倒れたときには、硬いケースを通して衝撃がギターに伝わり、木部割れにつながることがあります。
特に純正ではないサイズの合わないケースでは、中でギターがガタガタ動いてしまいます。
その状態で倒れると、ケースの硬い部分にもろにぶつかってしまいます。
「ハードケースだから倒れても大丈夫」ではないので、置き方と置き場所には注意しましょう。

対策:

ときどきケースを開けて、ギターの状態確認とケース内の空気の入れ替えをしましょう。
立てかける場合は、倒れにくい場所/他の家具等がぶつからない場所を選んだり、ラックを使ったりするのがおすすめです。

2. ギタースタンドや壁掛け保管時の注意点!

2-1. 科学反応や転倒の危険

すぐに手に取れるスタンドや壁掛けは、弾く機会が増えるうえに、状態の変化にも気づきやすいのでおすすめの保管方法です。ただし、注意点もあります。

ゴムと塗装の化学反応:

室内が高温多湿になるとアコギの塗装がゆるみ、スタンドのゴムやスポンジ部分と反応して跡がついてしまうことがあります。接触部分を保護する「スタンドブラ」などを活用するのがおすすめです。もし塗装が反応してしまった場合は、無理にこすり取らず、まずは専門店にご相談ください。

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転倒・衝撃のリスク:

スタンドに置いていると、足を引っかけてしまったり、地震で周りの家具がぶつかったりするリスクがあります。
人の通り道や家具のそばを避け、安全な場所を選びましょう。

スタッフコメント

ギターとベースはバンド、音楽における役割がそもそも違っており、サウンドや帯域、プレイスタイルも似て非なるものです!
「どちらを選ぼうか」と迷った場合は、バンドにおける役割やサウンドに注目してみると良いかもしれません!もちろん、見た目で選んでみるのもありですよ!

3. アコギにとって避けたい置き場所

3-1. 極端な環境は避けたい

アコギは、とにかく温度と湿度の急激な変化に弱い楽器です。
保管方法にかかわらず、次のような場所は避けましょう。

直射日光が当たる窓際:

日差しで高温になり、ギターに悪影響を及ぼすことがあります。
また紫外線も塗装に反応しカラーが落ちたり、色焼けを起こすことがあります。
ヴィンテージギターであればそれもひとつの味になるとは思いますが、紫外線が塗装に影響するということはあらかじめ知っておいた方が良いことに思います。

エアコンの風が直接当たる場所:

温風や冷風が直撃すると、乾燥による塗装のひび割れ(ウェザーチェック)や木部割れにつながることがあります。

車の中・空調のない外の倉庫:

夏は異常な高温になり、冬は低温で乾燥します。

家の最上階(2階など):

日差しの影響を受けやすく、高温になりがちです。
建物の造りにもよりますが、暑くなりやすい場合は避けるのがポイントです。

空調のない倉庫、部屋のクローゼットや押し入れ:

場所によっては湿気がこもりやすく、特に夏場は注意が必要です。

4. 結局どうすればいい? 理想の保管環境とプロの実践

4-1. 知っておくべきアコギの保管環境

これまでにご紹介した注意点を守っていただいた上で、アコースティックギター保管においてポイントは大きく2つあります。

①温度を20〜25度前後、湿度を50%ほどに保つこと
②弦をだるだるに緩めること

②については、「アコースティックギターの弦は“本当に”緩めるべきか?」をご参照ください。

①については、まずは「温湿度計」を置くことから始めましょう。
一番大切なのは、今の状況を知ることです。
ギターの保管場所に温湿度計を置き、普段過ごしているときと、外出先から帰宅したときの数値を把握しておきましょう。

4-2. プロが実践する保管環境

店舗(アドバンスギターズ)での管理基準

まずは参考までにお店の保管環境を紹介させていただきます。
・温度:25度前後
・湿度:40%〜60%(基本は50%を目標)
・直射日光を完全に遮断。(店舗の構造上可能となっています。)
・壁掛けフックやギタースタンドで展示
※弦はゆるゆるの状態で保管しています。

この環境を保つため、夏場と冬場は空調を24時間稼働させています。
加湿器と除湿機も、シーズンに合わせてそれぞれ2台ずつ動かしています。
この環境では状態変化はほとんど起こりません。
たまにネックが動くことがあっても軽微で、調整で済む範囲です。

スタッフコメント

エレキギターもベースもどちらもメンテナンスが不可欠な楽器です。一見綺麗な見た目でも、演奏性を損なうような状態になっている場合もあり、演奏感が悪いと弾きづらさを感じ、挫折に繋がりかねません。
信頼できる楽器屋さんでコンディションの良い楽器を選び、相談できる店員さんを見つけることが大事です!

5. 店長・井上の自宅での保管方法

5-1. アコギショップの店長の実践

お店の管理方法を紹介されても「それだと参考にならない...。」と思わせてしまうかもしれません。
そのため、私が実際に自宅でどう保管しているかもご紹介します。
私の自宅は外の気候の影響を受けやすく、夏場は空調なしだと室温30℃・湿度65%を優に超えます。
そこで、次のような工夫をしています。

保管する部屋を1つに決めて、空調をフル稼働:

電気代を抑えるため、ギターを置く部屋を1つに決めています。その部屋でエアコンと除湿機(冬は加湿器)をほぼ一日中つけっぱなしにし、室温25℃・湿度50%を目指しています。実際は湿度50〜60%くらいで、除湿機が止まると65〜70%になることもありますが、これまで重大な状態変化は起きていません。

5-2. 実際に使用している加湿器・除湿機の紹介

加湿器はスチーム式(加熱式):

※商品の型番と写真が入ります。

水を温めて蒸気を出すタイプを使っています。温めないタイプだと、水道水に含まれるカルキ成分が放出されることがあるためです。あとは加湿器が赤カビで汚れるのを避けるためです。私が使用しているタイプはポットの中でカルキが固まるのでクエン酸洗浄の手間はありますが、それ以外の使い心地は良好です。かかりつけの歯医者さんでも全く同じモノが使われていて、安心材料になりました。

除湿機はコンプレッサー式:

※商品の型番と写真が入ります。

除湿機にはコンプレッサー式・デシカント式・ハイブリッド式があります。
その中で、除湿力が高く、デシカント式に比べて室温が上がりにくいコンプレッサー式をおすすめしています。
室温が低いと除湿しにくいという弱点はありますが、寒い時期はそもそも除湿機を使わないので問題ありません。
実際に使うと室温は2〜3℃ほど上がるため、夏場は冷房と併用しています。
設定は「室内の湿度50%を目指す」が基本です。
我が家は湿度が高めなので、一番強い衣類乾燥モードにしていることが多いです。
ただ除湿しすぎて40%を下回るのは避けたいので、ご自宅の環境に合わせて調整してください。

5-3. 種類別ケースの保管とモチベーションの維持

ハードケースとギグケースで保管:

小さな子どもがいるのでスタンドは使わず、ケースにしまっています。
毎回出すのは手間ですが、それが「状態確認」と「ケース内の空気の入れ替え」の良い機会になっています。
ハードケースは、空調の効いた部屋のクローゼットの中に縦向きで立てかけています。
扉があるので、万が一大きな揺れがあっても倒れにくくなっています。
ラックなどで倒れないようにするのも良い方法です。
ギグケースに入れている子たちも、同じ部屋の壁にちょこんと立てかけています。
たまに子どもが足を引っかけて倒すこともありますが、クッション性のあるケースなので、割れにつながったことはありません。

モチベーション用の一本:

本音を言えば、「保管にはあまり気を遣いたくない。壊れても直せるから、しゃーない」という気持ちもあります。
なので、いつでも弾けるように「最悪壊れてもいいギター」を1本用意して、この子だけはチューニングしたままスタンドに出しています。(いつもありがとう。)

ご家族の目もあって、一日中空調をつけるのは難しいという方もいらっしゃると思います。
その場合は、家の中で最も温度・湿度が安定している場所を選び、在宅中だけでも空調機器で環境を整えてあげることをおすすめします。

5-4. 今日からできる保管チェックリスト

☐ 保管場所に温湿度計を置く
☐ 窓際やエアコンの風が当たる場所を避ける
☐ 可能であれば空調を使用し、室温20〜25度前後を目標とする
☐ 夏は除湿、冬は加湿で湿度50%前後をキープする
☐ ケース保管なら、ときどき開けて状態確認と空気の入れ替えをする
☐ スタンドや壁掛けの接触部分に注意。必要に応じてスタンドブラなどで保護する
☐ 弦を緩めておく

これまでの注意点や保管方法をお守りいただければ、ケース、スタンド、フック、ど問題はありません。
環境が整っているのであれば、すぐに手に取れる&状態の変化にすぐ気づくことができるという点で、スタンドやフックでの保管に部があると考えています。

結局、ケース・スタンド・壁掛けのどれがいいの?

ここまでの注意点や管理方法を守っていただければ、ケース・スタンド・壁掛けのどれで保管しても問題はありません。
そのうえで、保管環境が整っているのであれば、当店ではスタンドや壁掛けでの保管に分があると考えています。
すぐに手に取れるので弾く機会が増えますし、状態の変化にもすぐ気づけるからです。

ギターは弾いてこそ楽しいもの。

だからこそ、最後にもう一つお伝えしたいことがあります。

最後に:完璧を目指しすぎないこと

最後にお伝えしたいのは、「管理に気を遣うあまり、ギターを持つこと自体がストレスになってしまっては本末転倒」ということです。
大切なギターが壊れてしまうのは、とても悲しいことです。
その気持ちは決して否定されるものではありません。ただ、状態を気にするあまりギターに手が伸びなくなったり、ギターが家にあること自体が心配になったりと、「管理疲れ」を起こしてしまっては元も子もありません。

どれだけ完璧に管理していても、木でできたアコギの状態が変わるのは「当たり前」のことです。そして、もし不具合が出ても、そのほとんどは修理して再び気持ちよく鳴らせるようになります。
「ここまでやったんだから仕方ない」と割り切って、ご自身や環境を責めすぎないでください。もし何かあったときは、全力でサポートいたします。どうぞお気軽に、私たちアドバンスギターズにご相談ください。

この記事を書いた人:Advance Guitars 店長 井上(いのうえ) - ビンテージギター研究家

幼少期より楽器に触れ、数千本を超えるヴィンテージギターの査定・販売に携わるエキスパート。海外のコレクターやディーラーとも太いパイプを持つ。 「ギターの歴史は、色やスタンプひとつで変わる」を信条に、マニアックかつ愛のある解説を心掛けている。

保有資格・実績: 楽器鑑定士歴8年、ギターマガジン等への執筆・監修協力

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