基本的な違いを徹底解説
フォークギターとアコースティックギターの違いとは?
特徴や歴史、代表的ブランドを解説
アコースティックギターとフォークギターの違いに戸惑っていませんか?実はフォークギターはアコギの一種です。本記事では初心者の方の疑問を解決しつつ、経験者も再発見できる深い歴史や構造の違いを解説します。
1. アコースティックギターとフォークギターの決定的な違い
ギターを始めようと楽器店に足を運んだり、インターネットで検索したりすると、必ずと言っていいほど「アコースティックギター」と「フォークギター」という二つの言葉を目にするはずです。この二つの違いが分からず、どちらを購入すべきか迷ってしまう方は非常に多くいらっしゃいます。結論から申し上げますと、「アコースティックギター」という大きな枠組みの中に「フォークギター」が含まれている、というのが正確な関係性です。
1-1. アコースティックギターは「電気を使わないギター」の総称
アコースティック(Acoustic)という言葉は、本来「音響の」「聴覚の」といった意味を持っています。楽器の世界では、アンプやスピーカーといった電気的な増幅装置を使わず、楽器そのものが持つ空洞(共鳴胴)の中で音を響かせて発音する楽器全般を指します。つまり、エレキギター(エレクトリックギター)の対義語として使われている言葉なのです。
したがって、後述する「フォークギター」はもちろんのこと、ナイロン弦を使用する「クラシックギター」や「フラメンコギター」、さらにはボディに金属の共鳴器を備えた「リゾネーターギター」なども、すべて「アコースティックギター」の一種に分類されます。電気を通さないギターは、広義ではすべてアコースティックギターと呼んで差し支えありません。
1-2. フォークギターは「スチール弦を張ったアコギ」の一種
一方、「フォークギター」とは、アコースティックギターの中でも「スチール(鉄)弦」を張っているものを指す日本特有の呼称です。英語圏では一般的に「スチールストリング・アコースティックギター(Steel-string acoustic guitar)」と呼ばれます。
なぜ日本では「フォークギター」という言葉が定着したのでしょうか。それは1960年代後半から1970年代にかけて日本で巻き起こった「フォークソング・ブーム」に深く関係しています。当時、井上陽水氏や吉田拓郎氏、かぐや姫といったアーティストたちがこぞってスチール弦のアコースティックギターを弾き語り、若者たちの間で大流行しました。フォークソングを歌うためのギター、ということで「フォークギター」という和製英語が生まれ、今日まで定着しているのです。現在、日本の一般的な楽器店で「アコギが欲しい」と伝えた場合、大抵はこのフォークギター(スチール弦のアコースティックギター)を指すものとして案内されます。
2. フォークギターとクラシックギターの構造的な違い
アコースティックギターの二大巨頭である「フォークギター」と「クラシックギター」。両者は見た目こそ似ていますが、その構造やサウンド、適したプレイスタイルは全く異なります。ここでは、フォークギターならではの特徴をクラシックギターと比較しながら詳しく解説します。
2-1. 弦の素材による音色と張力の違い
最もわかりやすく、かつ音色に決定的な影響を与えるのが弦の素材です。クラシックギターにはナイロンやフロロカーボンなどから作られた柔らかい弦(かつては羊の腸で作られたガット弦)が張られています。これに対し、フォークギターにはスチール(鉄)やブロンズ(青銅)などの金属製の弦が張られています。
スチール弦を弾くと、シャラーンというきらびやかで倍音豊かなサウンドが響き渡ります。音量も非常に大きく、ピックを使ってコードを力強くかき鳴らすプレイスタイルに最適です。一方、ナイロン弦はポロンポロンという温かみのある丸い音色が特徴で、指の爪や指の腹で弾くクラシック音楽やボサノバに向いています。
また、金属弦はナイロン弦に比べて非常に張力が強いため、フォークギターのボディはそれに耐えうる頑丈な設計になっています。弦を押さえる指にも一定の力が求められるため、初心者のうちは指先が痛くなりやすいという側面もありますが、弾き続けることで指の皮が厚くなり、スムーズに弾けるようになります。
2-2. ネックの形状と弾きやすさ
ネックの太さや形状も大きく異なります。クラシックギターのネックは平べったく、幅が広く(ナット幅約50〜52mm)作られています。これは、複雑な運指の際に弦同士の隙間を広く保ち、正確に音を鳴らすためです。
対してフォークギターのネックは、クラシックギターよりも細く(ナット幅約42〜44mm)、かまぼこ型のように丸みを帯びています。この形状により、ネックをガッチリと握り込むようなスタイルでの演奏や、親指をネックの上から回して6弦(一番太い弦)を押さえるような、ロックやポップスで多用されるコード弾きがしやすくなっています。細いネックは手の小さな方や初心者にとっても握りやすいため、入門用としても適していると言えます。
2-3. ブレイシング(力木)とピックガード
フォークギターのボディ内部には「X(エックス)ブレイシング」と呼ばれる、木材をX字型に交差させて配置する骨組みが採用されていることが一般的です。これは、強い金属弦の張力に耐えつつ、トップ板を効率よく振動させるために考案された画期的な構造です(1840年代にC.F.マーティンが考案)。クラシックギターで主流の「扇状(ファン)ブレイシング」とは異なり、音の立ち上がりが早く、力強いサスティン(音の伸び)を生み出します。
また、外観上の大きな違いとして「ピックガード」の有無があります。フォークギターの多くは、サウンドホール(中央の穴)の下側にプラスチック製などのピックガードが貼られています。これは、プラスチック製のピックを使って激しくストロークした際に、ボディの木材が傷つくのを防ぐためのものです。指弾きが基本のクラシックギターには、通常ピックガードはついていません(フラメンコギターにはゴルペ板と呼ばれる保護板が付くことがあります)。
スタッフコメント
「アコギ」とひとことで言っても、演奏ジャンルや出したいサウンドで選択肢が大きく変わります!
どれもハマると抜け出せない要素に溢れていて楽しいですよ!
漠然と「アコギに触れてみたい」であれば、まずはフォークギターを手に取ってみることをおすすめします!
3. フォークギターの代表的なボディシェイプ(サイズと形状)
「フォークギター」と一口に言っても、そのボディの大きさや形状(ボディシェイプ)はさまざまです。ボディの容積は音量や低音の響きに直結し、形状は抱えやすさやプレイスタイルに影響します。ここでは、長年にわたり基準とされてきた代表的なボディシェイプを3つ紹介します。
3-1. ドレッドノート(Dreadnought)
フォークギターの中で最もポピュラーで、世界中のメーカーがお手本としているのが「ドレッドノート」と呼ばれる大型のボディシェイプです。1916年にマーティン社が開発し、当時のイギリスの大型戦艦(ドレッドノート号)にちなんで名付けられました。
特徴は、くびれが浅く、全体的に四角張った大きなボディです。この豊かな容積から生み出されるのは、腹の底に響くような大音量と、深く力強い低音です。ピックを使ってコードを力強くかき鳴らすストロークプレイや、弾き語りの伴奏において、ボーカルの声をしっかりと支える頼もしいサウンドを提供します。これからフォークギターを始める方にとって、最も標準的で汎用性の高い選択肢と言えるでしょう。
3-2. フォークサイズ / オーディトリアム(000・OM等)
ドレッドノートに次いで人気があるのが、一回り小ぶりでくびれが深いボディシェイプです。マーティン社では「000(トリプルオー)」や「OM(オーケストラモデル)」と呼ばれ、日本では一般的に「フォークサイズ」と呼ばれることも多い形状です。
くびれが深いため、座って演奏する際に太ももの上にしっかりとフィットし、右腕も回しやすいため、小柄な方や女性でも抱えやすいのが最大のメリットです。音の傾向としては、ドレッドノートほどの爆発的な低音や音量はありませんが、その分、低音から高音までのバランスが非常に良く、一音一音がくっきりと分離して聴こえます。そのため、指を使ってメロディや分散和音を弾く「フィンガーピッキング」や、繊細なアルペジオなどのプレイスタイルに非常に適しています。
3-3. ジャンボ(Jumbo)
ドレッドノートよりもさらに大きく、ボディの下部(ロワーバウト)が丸く膨らんだ形状をしているのが「ジャンボ」サイズです。ギブソン社の「J-200」などが代表的です。
その名の通り巨大なボディを持ち、圧倒的な音量と、ふくよかで包み込むようなサウンドが特徴です。見た目のインパクトも絶大で、ステージ映えするため、多くのプロミュージシャンにも愛用されています。ただし、ボディが大きいため小柄な方には少し抱えにくく感じるかもしれません。力強いストロークでバンドサウンドの中でも埋もれないアコースティックサウンドを求める方に最適です。
あなた自身のプレイスタイルや体格に合わせて最適なボディシェイプを探すことは、長く楽器と付き合っていく上で非常に重要です。
4. 歴史に名を刻むフォークギターの代表的ブランド
最後に、フォークギターの歴史を築き上げ、現在でも世界中のギタリストから憧れの的となっている代表的な3つのブランドをご紹介します。それぞれのブランドが持つ哲学とサウンドの個性を知ることで、楽器選びがさらに楽しくなるはずです。
4-1. Martin(マーティン)
1833年の創業以来、アコースティックギターの歴史そのものと言っても過言ではないのがC.F.マーティン(Martin)です。前述した「Xブレイシング」や「ドレッドノート」といった現在のフォークギターの基本構造を生み出した、まさにパイオニアです。
マーティンのサウンドは、優等生的で美しく、倍音が豊かに響き渡る「鈴鳴り」と形容されます。高音から低音までバランスが良く、どんなジャンルにも対応できる懐の深さを持っています。特に「D-28」というモデルは、世界中のアコースティックギターの絶対的な基準となっており、ビートルズから現代のポップスシンガーまで、数え切れないほどのアーティストの録音で使用されてきました。伝統と格式を重んじる、まさに王道中の王道ブランドです。
4-2. Gibson(ギブソン)
マーティンと並び称されるアメリカの二大巨頭がギブソン(Gibson)です。マーティンが「美しく整った音」であるならば、ギブソンは「荒々しくも泥臭い、人間味あふれる音」と表現されることがよくあります。
ギブソンのアコースティックギターは、低音と高音が強調されたドンシャリ気味のサウンドと、ジャキっとした歯切れの良さ(パーカッシブなトーン)が特徴です。そのため、ロックンロールやブルース、そして荒々しいストロークでの弾き語りにおいて、ボーカルの声を邪魔せず絶妙に絡み合う伴奏楽器として無類の強さを発揮します。代表機種である「J-45」は、その丸みを帯びた肩(ラウンドショルダー)の形状と、独特のサンバースト塗装がトレードマークであり、多くのシンガーソングライターの相棒として愛され続けています。個性的でロックなフィーリングを求めるなら、Gibsonは見逃せない選択肢です。
4-3. YAMAHA(ヤマハ)
海外の高級ブランドだけでなく、日本の楽器産業を牽引し、国産フォークギターの品質を世界レベルに押し上げたのがヤマハ(YAMAHA)です。1966年に初の国産本格的フォークギター「FG150」「FG180」を発売し、日本のフォークソングブームの火付け役となりました。
ヤマハのギターの魅力は、何と言ってもその「安定した品質とコストパフォーマンスの高さ」、そして「日本人にも弾きやすい設計」にあります。数万円で買える入門用モデルから、数十万円のプロ用ハンドメイドモデル(Lシリーズなど)まで幅広いラインナップを誇り、どの価格帯でも価格以上の鳴りと耐久性を備えています。サウンドはクセがなくクリアで、非常に扱いやすいのが特徴です。初めての一本を選ぶ初心者から、信頼できるサブギターを求める経験者まで、誰もが安心して手に取ることができるのがYAMAHAの素晴らしい点です。
スタッフコメント
アコギを選ぶ上で、悩ましくも楽しいのがこの材料やボディシェイプ等のスペックを考えている時間です!
上記はあくまで傾向であって、「このジャンルには使えない、向かない」と断言するものはありません。
難しいことは考えず、まずは見た目の気になるものを手に取ってみて問題はないですよ!
まとめ
フォークギターはアコースティックギターの一種であり、スチール弦の煌びやかな音色と頑丈な構造が特徴です。クラシックギターとの違いや、ボディの形状、伝統あるブランドの個性を理解することで、楽器選びの解像度は格段に上がります。ぜひこの記事の知識を活かし、あなたの音楽ライフをより豊かにする最高のギターを探してみてください。
この記事を書いた人:Advance Guitars 店長 井上(いのうえ) - ビンテージギター研究家
幼少期より楽器に触れ、数千本を超えるヴィンテージギターの査定・販売に携わるエキスパート。海外のコレクターやディーラーとも太いパイプを持つ。 「ギターの歴史は、色やスタンプひとつで変わる」を信条に、マニアックかつ愛のある解説を心掛けている。
保有資格・実績: 楽器鑑定士歴8年、ギターマガジン等への執筆・監修協力
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