『名器か、迷器か。――その答えは、吹けばわかる。』
F.E. Olds “RECORDING” R20
[概要]
F.E.オールズ細管テナーバス・トロンボーン、レコーディング。8インチ・レッドブラスベル。495'-510'デュアルボア・スライド。フラットラップF管アタッチメント。アウタースライド、エンドクルーク:ニッケル製。インナースライド:十六角形インナースライド(double-octagonal fluted inner slide tubes)。付属品:純正ハードケース(上蓋文字書き消しあり) 1978年製造品
[状態]
ベルフレアの一部に切手サイズ程度のラッカー塗装落ち(ワッペン等の接着貼り付け痕と思われます)>マニキュア補修あり。その他はベルフレア、チューニング管にスリキズが点在する程度。年数経過を感じさせない美品コンディションを保っています。各所整備・点検済み。
[特徴]
F.E. Olds(※)が手がけたフラッグシップ、“RECORDING”シリーズのテナーバストロンボーンR20。
録音現場での高いパフォーマンスを志向して開発されたこのモデルは、当時のオールズが持つ技術と発想を惜しみなく投入した一台です。
まず目を引くのが、十六角形のインナースライド。
“double-octagonal fluted”構造と呼ばれるこの設計は、剛性とスムーズな動きを両立させるためのもの。
奇抜に見えて、すべては機能のため。
本気で突き詰めた結果が、この形です。
さらに特徴的なのが、このフラットラップのF管レイアウト。
一直線に並ぶその造形は、明らかに強い意志を感じさせます。
もちろん、息の流れやバランスといった設計的な意図はあるはずです。
ただそれ以上に、
「ここまで平たく並べたらどうなるのか」
「他がやっていないなら、やってみたい」――
そんな技術者の衝動が、そのまま形になったようにも見えてきます。
合理性の追求と、フロンティアスピリット。
その両方があふれ、少しこぼれてしまったような――
この愛すべきクセもまた、Recording R20の大きな魅力です。
ベルにはレッドブラス系のRe-O-Loy材を採用。
生み出されるのは、暖かく、濃く、どこか粘りのあるサウンド。
現代のモダントロンボーンのようなシャープさとは異なり、厚みと存在感で音を届けます。
スライドは.495/.510のデュアルボア。機動力を確保しつつ、F管付きとしての幅も確保。
大編成を押し切るというより、アンサンブルや録音の中で“どう鳴るか”を突き詰めた設計です。
この楽器は、万人にとっての正解ではないかもしれません。
しかし、ハマったときの魅力は非常に大きい。
名門オールズが本気で導き出したひとつの答え。
それが名器なのか、迷器なのか――
最終的な判断は、手に取って音を出した瞬間に決まります。
※1908年にカリフォルニアで創業。最先端の技術を常に投入して様々なパテントを取得し、他メーカーを牽引。アメリカのプロ奏者御用達ブランドとして優れた楽器を数多く製作。