Pickups history

ギターピックアップの歴史と偉人の軌跡

エレクトリックギターとアコースティックギター、何が違いますか?

そう聞かれたら恐らく大半の人が電気回路(エレクトリック)を使っているか否かと答えるのでは無いでしょうか。そしてそのエレキギターの[エレクトリック]という要素を大きく持つ部分がピックアップです。ピックアップとは簡単に説明すると弦の振動を電気信号に変換するパーツで、変換した電気信号をアンプに出力する事で大きな音を出せるようになっています。

これが現在エレキギターで主流となっているマグネティック·ピックアップの構造です。このピックアップと呼ばれるパーツは、エレキギターと共に長い歴史を歩み様々な種類、ブランドが存在します。今回はそんなピックアップの歴史とピックアップのブランドについて紐解いていきます。

ピックアップの誕生と基本構造

ピックアップの歴史を辿ると1920年代に遡ります。

1920年の公共ラジオの普及と25年のレコードの販売開始が大きな要因となり、全米でハワイアンミュージックの人気が高まります。

当時のギタリストはアコースティックギターをスライド奏法で使っている人が多かったですが、ボーカルとの音量差など楽器として不利な部分がありました。そこで、1926年にロサンゼルスのナショナル社からアコースティックギターのボディトップに洋白の金属を取り付けたリゾネーターギターが開発されました。

リゾネーターは金属板がスピーカーのような役割を果たし音量の増加に成功しました。

そのナショナル社で働いていたジョージ・ビーチャムは、同社で一緒に働いていたアドルフ・リッケンバッカー、ポール・バースらと一緒に1931年、ロー・パット・インという会社を立ち上げます。

このロー・パット・インという会社が後にRickenbackerです。

そこでスティール弦の使用を前提とし、弦の振動を電気信号に変換して音を増幅させるHouse Shoes PUが開発されます。

これがマグネティック・ピックアップの始祖とも呼ばれています!!

その後1936年頃にGibson社からアルニコIIIを使用した通称Charlie Christian PUが開発、1946年にはウォルター·フラーが開発したP-90が登場します!

1950年代 マグネティックピックアップの黎明期

GibsonがP-90を開発した1946年にはFender社が設立され、50年にブロードキャスターに搭載されるSingle Coil PUや51年にはハムキャンセルの効果を持つPrecision Bass PUが登場。

1954年にはStratocasterが発売され、ストラト用のシングルコイルも開発されます。

Fender社のエレキギター用ピックアップは、歯切れの良いシャープなサウンド特性を持っており、P-90と同じシングルコイルですが全く違うキャラクターを持ちます。

何故そのような特性を持つピックアップが開発されたのか?

それは、Fenderのターゲット層がカントリー&ウェスタンのギタリストだったという背景があります。

カントリー&ウェスタンにはラップスティールギターを使用する事も多くあります。

ラップスティールギターは芯がハッキリとしたタイトなサウンド特性のものが多く、Telecasterのサウンドはラップスティールギターに近いものがありカントリー&ウェスタンのギタリストを中心に広まっていきます。

またFenderのピックアップはマグネットを直接ポールピースにしているため、ピックアップが簡素な作りになっています。

そのため汎用が効きやすく、コイルの巻き数を増やしポールピースを短くしたJazzmaster用のピックアップやボビン横とサイドにかけてヨークを付けたJaguar用のピックアップなど1950~60年代で非常の多くのピックアップバリエーションを開発しています。

対してGibsonはマイルドで温かみのあるサウンド特性を持っていたため、Jazzギタリストを中心に広まっていきます。

Gibsonは1954年に「タキシードに合うLes Paul」としてジャズギタリストに向けてLes Paul Customを発売します。

Les Paul CustomにはP-480(アルニコV)をフロントに搭載します。

このピックアップはDeArmond Pickupを参考に作られており、構造が似ていますが角棒状のマグネットを使用しているため、非常に個性的な見た目となっています。

そして1957年にセス ラヴァーによってGibson社からP-490(ハムバッキングピックアップ)が登場します。

P-490はハムキャンセル効果を持つのと2つのコイルを直列で繋げるため、ノイズに強くパワーがあるピックアップとなりました。

現代まで続くハムバッカーの歴史はここから始まります。

ギブソンとグレッチ、ピックアップの歴史を紐解く

ギブソンが開発したP-480(アルニコV)ピックアップのルーツを辿ると、その基盤にはデュアルモンド社のダイナソニック・ピックアップが存在します。このダイナソニック・ピックアップは1949年頃からグレッチのギターに搭載され、その名を広めました。

デュアルモンド社自体は1938年頃から、アーチトップ・ギターに後付けできるピックアップを開発していました。特筆すべきは、これらのピックアップが木部への加工がほとんど不要で取り付け可能だった点です。この革新的なアプローチから、デュアルモンドはリプレイスメント・ピックアップの始祖とも呼ばれています。

ダイナソニックに続くグレッチの象徴
フィルタートロン・ピックアップ

デュアルモンド、そしてグレッチのピックアップ史において、もう一つ欠かすことのできない重要な存在があります。

それがフィルタートロン・ピックアップです。

フィルタートロンは、レイ・バッツ氏によって考案されたピックアップで、1957年頃からグレッチのギターに搭載され始めました。このピックアップは、P-490と同様にハムバッカー構造を採用しています。基本的な構造はギブソンのハムバッカーと共通していますが、フィルタートロンの大きな特徴は、12本のポールピースがそれぞれアジャスタブルになっている点と、ギブソンよりもサイズが小さくなっている点です。

特許の認可がギブソンのハムバッカーと同じ1959年という点も、その歴史的な重要性を物語っています。

1960年代後期 音楽シーンの変化とピックアップの進化

1960年代後半からロックシーンの拡大エフェクターの一般化に伴いエレキギターに求められるサウンドも変わってきます。

FenderはP-490を開発したセス・ラヴァーを迎え入れて、12本のポールピースを持つハムバッカー、Wide Range humbuckerを開発。

Gibsonはビル・ローレンスによってフェライトマグネットを3本搭載し、エポキシ樹脂をカバー内に充填したSuper Humbuckerを開発。76年にはS-1に搭載されるシングルコイルピックアップを開発し、FenderはハムバッカーをGibsonはシングルコイルの開発にも着手していきます。

1970年代 リプレイスメントピックアップとアクティブ・システム

70年代に入りピックアップを専門で取り扱うブランドが現れはじめ、「リプレイスメント·ピックアップ」という概念が世に広まります。

75年にはDiMarzio PickupsDual SoundSuper Distortionを発売。

Dual Soundはハムバッカーの片方のコイルを使用する事でシングルコイルのようなサウンドを出せる(所謂コイルタップ)が可能となっており、1つのギターで様々なサウンドキャラクターを出す事が出来るような作りになっていました。

クリアなトーンかつローノイズのDiMarizo pickupは多くのアーティストに絶大な人気を博します。

78年にはSeymour Duncanが登場し、ビンテージギターの純粋なコピーを目指したモデルやビンテージサウンドを元にモダンな要素を組み込んだピックアップなどの発売を開始します。

現在も続くFender/Gibson系のリプレイスメント・ピックアップの歴史はこうしてスタートしていきます。70年代はリプレイスメント・ピックアップの他にも一般化したピックアップがあります。

それがアクティブ・ピックアップ システムです。

アクティブ·ピックアップ システムは電池や電源を必要としたピックアップ システムとなっており、ギター出力をローインピーダンス化して出力出する事によってノイズの軽減、音質の劣化を防ぐ事が出来ます。

他にもピックアップ本体だけで無く、アクティブシステムを導入によって、任意の周波数帯のブースト/カットを行えるアクティブコントロールの一般化が進みました。

アクティブ·ピックアップが普及した背景には、電子部品/回路の小型化や消費電力の削減も理由の一つです。

その結果、アクティブピックアップの代名詞的ブランドEMGはピックアップサイズのプラチックケースの中にピックアップ本体とプリアンプを内臓してある特徴的な構造を持つピックアップを開発。

1976年にFenderを退社したレオ フェンダーが設立したmusicmanでは、コントロールに9Vバッテリーを使用し、ピックアップにはシングルコイルをシリーズ配線された独自のハムバッカーを搭載したStingray Guitar/Bassを開発。

こちらもローインピーダンスでの出力となっており、アクティブの恩恵を発揮しています。

音楽の歴史を変えた、ピックアップ界の先駆者たち

ギターの進化にだけで無く、音楽や技術の進化によって今だに進化し続けるピックアップ。ここからは現在まで続くピックアップの歴史に大きな影響を与えた人物/ブランドを紐解いていきます!!

Seth Lover

ハムバッカーの生みの親 Seth Lover (セス・ラヴァー) の功績

Seymour Duncan

リプレイスメントの先駆者 Seymour Duncan (セイモア・ダンカン) の歩み

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DiMarzio

高出力サウンドの革命 DiMarzio (ディマジオ) の世界

EMG

ノイズレスの極致 EMG アクティブ・システムの進化

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Bill Lawrence

天才設計者の哲学 Bill Lawrence (ビル・ローレンス)

Lace Sencor

新時代のシングルコイル Lace Sensor (レースセンサー) の秘密

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Ray Butts

この記事を書いた人:二瓶(TC楽器 エレキギター担当)

中学生の頃に漫画・「BECK」でギターを知り、Red Hot Chili PeppersやNirvanaに影響され、ロックに目覚める。
ギター製作の専門学校を卒業。TC楽器アコースティックフロア、TC楽器プレミアムギターラウンジのスタッフを経験。現在エレキギター担当としてコラム執筆、YouTube出演等でも積極的にその楽器愛を広めている。

ひとこと:エレキギターとともに進化を続けているピックアップの歴史を紐解いた事で、ギターだけで無く音楽の進化にも対応しなければいけないという課題とも戦ってきた事を改めて認識しました。
また各ブランドの重要な人物を紐解いたことで、人と人との繋がりや、理想を実現するための創意工夫を知る事が出来、各ブランド/人物への理解を深める事が出来ました。

保有資格・実績: 楽器鑑定士歴8年

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