『フォルムは豆鉄砲、中身は大砲級。』
ベル縁の常識にまで挑んだ、1932年 C.G. Conn 40B Connqueror。
[概要]
C.G. Conn B♭ヴィンテージ・トランペット
モデル:40B Connqueror
ベル:110mm/二枚取りイエローブラス
ベル仕様:Vocabell/リムレス
ボア:.459"(MLサイズ)
仕上げ:ほぼローブラス状態
重量:1155g(実測)
製造年:1932年
付属品:なし/本体のみ
[状態]
製造時はおそらくローブラス仕様(highly polished brass)だった個体に後年にラッカー塗装が施された痕跡が伺えますが、現在はほぼローブラス状態です。ベルフレア、ベル胴からベル後方に凹み修正痕と小浅凹み点在。ベル根元の直線部内側に浅凹み(現状お渡し)。ベル前後の支柱を外した修理歴あり(ハンダ痕残)。管内洗浄・各所整備・調整・軟モノ交換済み。
[特徴]
細く前方へ伸びた独特のシルエットから、“Peashooter=豆鉄砲”の愛称で知られるC.G.CONN 40B Connqueror。1932年から製造されたモデルで、本機はその最初期にあたる1932年製です。当時はCONNだけでなく、BuescherやMartinなども同様の細身のスタイルを製作しており、現在の目には奇抜に映るこのフォルムも、1930年前後にはモダンなトランペットのひとつの潮流でした。
最大の特徴は、CONNが“Vocabell”と名付けた独自のベル構造です。一般的なベルに見られる縁のカーリングとベルワイヤーを持たず、ベル先端までそのまま成形されたリムレス仕様。単にワイヤーを省略したものではなく、ベル自体の厚みを調整することで必要な強度を保ちながら、ベル全体をより自由に振動させようという設計思想によるものです。本機では110mmという小ぶりな2枚取りベルと組み合わされ、細身の外観からは意外なほど、太く密度の濃い、指向性に優れた響きを生み出します。
当時のCONNは、このVocabellについて、通常のベルより少ない労力で大きな音量が得られ、よりクリアで均一な音色を実現すると強くアピールしていました。広告にはCBSスタジオでの測定結果として「12〜15dB大きい」とする、今見ると驚くほど大胆な宣伝文句まで登場します。数値そのものはあくまで当時のメーカー発表ですが、それだけVocabellを革新的な設計として前面に押し出していたことがうかがえます。
そして40Bは、ベルだけが個性的なのではありません。外周を12角形に成形した重厚なバルブケーシング、1930年代のアール・デコを思わせる凝ったウォーターキー、細長いボディに呼応する独特のフィンガーフックなど、細部まで見どころの連続。現代の合理的な設計とは異なる、機能と造形を同時に主張する時代ならではの美意識が随所に息づいています。
フォルムは“豆鉄砲”、中身は大砲級。
90年以上を経た現在もなお、CONNというメーカーの自由な発想と実験精神を強烈に伝える、極めて個性的なヴィンテージ・トランペットです。
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