『ヨーロッパの気品を、アメリカの現場へ。』
ハリー・“スウィーツ”・エディソンが生涯愛した、American Selmer K-Modified。
[概要]
アメリカン・セルマーB♭トランペット、K-モディファイド。118ミリ・イエローブラスベル。11.73ミリ(.462")ボア。Aストップ・ロッド装着仕様。ラッカー塗装仕上げ。楽器重量1098グラム。付属品:純正ハードケース(擦れ・傷みあり) 1959年製造品
[状態]
飴色へと熟成したオリジナルラッカーを約90%以上保持しています。ベル後方のカーブ部分および第2抜差管に凹み修正痕があり、その周辺にラッカー落ちが見られます。ほかにも小規模なラッカー落ち、アテキズが点在していますが、1959年製という年代を考慮すれば、全体として非常に良好なコンディションを保っています。各抜差管のクリアランス、ピストンの気密性ともに良好。管内外洗浄、軟物交換、各部整備・調整済みです。
[特徴]
1954年に登場したアメリカン・セルマーのヴィンテージ・トランペット「K-Modified」。フランス・セルマーのフラッグシップモデルをベースに、当時アメリカで広く使用されていたマウスピースのシャンク形状に適合するよう、金管楽器設計監修者キース・エッカー(Keith Ecker)がマウスピース・レシーバーを再設計したモデルです。
“K-Modified”のKはKeith Ecker、Modifiedは文字通り「修正・改良」の意。変更点だけを聞けば些細に思えるかもしれませんが、マウスピースのシャンクとレシーバーの適合、さらにシャンク先端とリードパイプ入口との位置関係は、レスポンスや抵抗感を左右する重要なポイント。1950年代の段階でそこに着目し、アメリカ市場への適応を図ったところに、このモデルの本質があります。
本機は1959年製の「23」タイプ。モデルナンバーはボアサイズとリードパイプ形状の組み合わせを示し、本機は11.73ミリ(.462")ボアを採用しています。
サウンドは、艶やかで張りのある芯を持ちながら、どこかしっとりとしたウェット感を残すのが特徴。アメリカ市場を意識して再構築されたモデルでありながら、原型となったフランス・セルマー由来の上品さやヨーロピアンな色彩を色濃く感じさせます。
また、やや小ぶりな118ミリベル、ベル縁を補強するクランツを思わせるリム形状、台座から持ち上げるように設けられた古式ゆかしいフィンガーフック、セルマーの“S”をモチーフとしたウォーターキー、長く凝った造形のバルブケーシング、内ネジ式ボトムキャップなど、当時のセルマーらしい手の込んだ意匠も大きな魅力です。
カウント・ベイシー楽団で名を馳せたハリー・“スウィーツ”・エディソンが、発売当初の50年代半ばに手にして以降、生涯の相棒として愛用したことでも知られるK-Modified。時代の主流を席巻したモデルではありませんでしたが、ヨーロッパ的な気品とアメリカン・ジャズの実用性が交差する、セルマー史の中でも極めて興味深い逸品です。