アコギピックアップの選び方

最適解は十人十色!?

「どれを選べばいいかわからない」

せっかく憧れのアコースティックギターを手に入れたのに、アンプやPAから出てくる音を聴いて「なんだか違う」と感じたことはないでしょうか。

生音では気持ちよく響いているのに、ステージやスタジオでは硬く平面的に聞こえる。録音してみると、自分が思い描いていたアコースティックギターの音とは違う。

私自身もライブや録音を行う中で「生音では気持ちよく鳴っているのに、ラインを通すと気持ちいい音が出ない」という経験を何度もしてきました。

過去には弦やピックの種類を変えたり、弾き方を見直したりと様々な試行錯誤を重ねました。しかし、よくよく考えてみると、サウンドを大きく左右している要素のひとつは紛れもなくピックアップです。

 

アコースティックギターのサウンドにおいて、ギター本体や演奏技術が重要であることは言うまでもありません。しかし、ライブや録音など「音を増幅する環境」においては、ピックアップがサウンドの入り口となります。

どれほど素晴らしいギターであっても、その振動をどのように拾い、出力するかによって、聴こえてくる音の印象は大きく変わります。
Advance Guitarsでも、お客様よりご相談いただくことがあります。

「ライブで使うなら何を選べばいいですか?」
「できるだけ生音に近い音を出したいです」
「今付いているピックアップの音が硬いのですが、交換した方がいいでしょうか?」

こうしたご相談に共通しているのは「自分に合ったピックアップがわからない」という悩みです。しかし、一口にアコースティックギター用ピックアップと言っても、その仕組みや音のキャラクターはさまざまです。

ハウリングに強くライブ向きのもの。
繊細なタッチを再現しやすいもの。
生音らしさを重視したもの。
録音とライブを両立できるもの。

どれも優れたピックアップですが、求める用途によって最適解は変わります。
つまり、「一番良いピックアップ」を探すのではなく、「自分に合ったピックアップ」を見つけることが重要なのです。

今回は、代表的なピックアップの種類や特徴を解説しながら、それぞれがどのようなプレイヤーに向いているのかを詳しくご紹介します。
これから導入を検討している方はもちろん、現在のサウンドに不満を感じている方も、ぜひ参考にしてみてください。

第1章 「なぜ生音とラインの音は違って聞こえるのか?」を考える

「ライブハウスの外音やモニタースピーカーから出る音が、思い描いているものと違う」
「ライン出力の音が硬くて、アコースティック感がない」

アコースティックギターをライブや録音で使用する際に、そう感じたことはないでしょうか。この「生音とラインの音のギャップ問題は」は多くの方が直面します。

最初に押さえておきたい最も重要な前提があります。それは「ラインの音は、生音の完全な再現ではない」ということです。この前提を正しく理解することが、自身の最適なピックアップを見つけるための第一歩となります。

(1) 生音とラインの音の本質的な違い
私たちが普段耳にするアコースティックギターの生音は、実は非常に複雑なプロセスを経ています。
弦の振動がブリッジを介してトップ板を震わせ、ボディ全体が共鳴し、内部の空気がサウンドホールから押し出される。
さらにそれが周囲の壁や床に反射し、初めて「アコースティックギターの生音」として人の耳に届きます。
つまり、生音の本質は「空間全体の空気振動」と言えます。

一方で、アコースティックギターに取り付けるピックアップは、このプロセスの中の「ごく一部の局所的な振動」しか拾うことができません。

人の耳のように、ギターから離れた場所で空間全体の響きを拾っているわけではないからです。これが、生音とラインの音が根本的に違って聞こえる最大の理由です。

(2)「何を拾うか」でキャラクターが決まる
ピックアップは、その構造(方式)によって「ギターのどこから、何の情報を切り取るか」がそれぞれ異なります。
代表的な3つの方式を例に挙げてみます。

・ピエゾ(サドル下): 「弦の圧力とトップ板の直接的な振動」を拾う。

・マグネティック(サウンドホール): 「弦の金属的な揺れ」を磁力で拾う。(エレキギターに近い原理)

・コンデンサーマイク(ボディ内部): 「ボディ内部の空気振動」を拾う。

このように、各方式はそれぞれ異なる「一部分の情報」を切り取って電気信号に変換しています。生音とラインの音のギャップに悩んでしまうのは、この「情報の切り取り方の違い」をイメージできていないことが原因と言えます。

(3) 生音の「再現」ではなく「理想の出力」を選ぶ

「生音とラインの音のギャップをなくすこと」
もちろん、それは目指すべきゴールの一つとして間違いではありません。
しかし「生音とラインの音のギャップ=悪い」と捉えてしまうと、本来楽しいはずのアコースティックギターの世界を自ら狭めてしまうことになりかねません。

言葉にしてしまえば当然のことですが、ラインの音とは「ギターの振動を電気信号に変換し、スピーカーから鳴らすために再構築された別の音」です。
この前提を念頭に置いておくだけで、プラグインしたときの違和感や生音と比較したときの落胆ではなく、むしろサウンドメイクの楽しさを純粋に実感できるようになります。

言うなれば、私たちが目指すべきは生音の「再現」ではなく、「理想の出力」を選ぶことなのです。

では、自身にとっての「理想の出力」とは何でしょうか?
まずはシンプルに次の2つの点に立ち返ってみましょう。

・どのような編成で演奏するのか(弾き語り、ソロギター、バンド演奏)
・どのような場所で鳴らすのか(自宅、スタジオ、ライブハウス)

これらの環境や演奏スタイルに合わせて、「自分の演奏環境やスタイルに合った“情報の拾い方”をしてくれるピックアップはどれか」という視点で選ぶこと。
これこそが、失敗しないピックアップ選びであり、楽しいアコギライフへの近道です。

続く第二章からは、「自分の演奏環境やスタイルに合った“情報の拾い方”をしてくれるピックアップ」見つけるために、各ピックアップの方式の特徴を見ていきましょう。

第2章 ギターのどこの情報を拾う? ピックアップの構造

アコースティックギターのピックアップは、音を拾う仕組み(方式)によって大きく4つのタイプに分類し、見ていきます。
ここで重要になるのが、それぞれの方式が「ギターのどの部分に密着し、どこの情報を切り取っているか」という仕組みと、その特徴に着目していただきたいです。

アンダーサドル・ピエゾ・ピックアップ

弦を支える「サドル」というパーツの真下に細長いセンサーを仕込み、弦の振動を電気信号に変換するピックアップ。
アコースティックギターの出荷時に標準搭載されていることも多く、現在最も普及している王道のタイプです。

※画像はサドルの下にセットするL.R.Baggs ELEMENTのセンサー部分

拾う情報:弦の圧力と、ブリッジ周辺のダイレクトな振動

特徴:
・弦の振動をダイレクトに拾うため、アタック(音の立ち上がり)が非常に速く、ハキハキとした抜けの良い音
・構造的に空気の振動を物理的にシャットアウトしているため、音量をあげても不快な「キーン」という高音のハウリングが起きない。

特徴2:
・特に強く弾いた際に、アコースティックギター特有の温かみではなく、プラスチックを叩いたような電気的な硬い高音(いわゆるピエゾ臭い音)が感じられ、好みが分かれやすいサウンド。
・アコースティックギターの空気感や、ボディを叩く音(パーカッシブな奏法)は構造上ほぼ拾えない。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・ドラムやベースがいるバンド編成で演奏する方(爆音の中でもアコギの音がパキッと前に出て埋もれにくい)
・大音量のライブハウスに立つ方(足元のスピーカーから爆音で音を返してもハウリングしづらい安心感)
・音響トラブルの心配をせず、演奏に集中したい方

マグネティックピックアップ

サウンドホールに挟み込んで固定し、磁力を使って弦の揺れを電気信号に変換するピックアップ。
エレキギターと同じ原理が用いられ、愛器に大きな加工をせず手軽に導入できるため、多くのプレイヤーに愛用されています。

切り取る情報:
弦が振動したことによる「弦の揺れ(磁界の変化)」

特徴:
エレキギターに近い構造のため、中低音に厚みがあり、コードストロークが前に力強く響きます。
空気を直接拾うマイクではないためハウリングに強く、ネジ留めだけで大がかりな穴あけ加工をせずに着脱できるモデルが多いのも魅力です。

特徴2:
・木材の振動ではなく弦の揺れをメインに拾うため、ピックアップのモデルによってはアコギ特有の生感は控えめで、電気的な音(エレキギターに近い質感)に近くなる。
・サウンドホールに取り付けを行うため、外観上の変化が伴う。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・ジャカジャカと激しくかき鳴らす、ギターボーカルや弾き語りプレイヤー

コンタクトピックアップ

ボディの裏側(トップ板の内側など)に直接貼り付け、木材そのものの振動を電気信号に変換するピックアップ。
ギターの「皮膚の震え」をそのままキャッチするため、生音に近いニュアンスを表現できるのが特徴です。

※ボディに設置することでボディの振動を拾うことができるCling On CP01

拾う情報:
表板(トップ板)やボディ材が直接震えている「リアルな木材の振動」

特徴:
ギターの箱鳴りをダイレクトに切り取るため、アコギ本来の温かみや、ふくよかな響きがラインの音にもそのまま反映される。
・ 特殊奏法でボディを叩く「コンッ」という繊細な手のひらの音や、フィンガリングの擦れる音まで綺麗に拾う。

特徴2:
・ギターのボディは、スピーカーから出た大音量にも共鳴してしまいます。その振動をそのまま拾ってしまうため、大音量での環境下では「ブー」という低音のハウリングが起きやすい。
・貼り付ける位置によって高音が強くなったり低音がこもったりと音が変わるため、設置位置の調整が必要です。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・カフェや教室など、小規模な空間で演奏するソロギタリスト
・ボディを叩く特殊奏法を多用し、木胴のリアルな響きを最優先したい方

複合タイプ
これまでにご紹介した3つの方式(ピエゾ、マグネティック、コンタクト)や内臓コンデンサーマイクなどの中から、異なる2つの方式を組み合わせて搭載するシステム。
それぞれの弱点を補い合い、アコギ本来のリアルな響きとステージでの実用性をハイレベルで両立できるため、多くのプロプレイヤーやハイエンド(高級)機で採用されています。

※こちらはマグネティック・ピックアップとコンデンサーマイクの複合タイプ

特徴:
「ハウリングに強く芯のあるピエゾの音」に「空気感を足してくれるマイクの音」を混ぜるなど、お互いの長所だけをいいとこ取りした理想のサウンドメイクが可能。
・バンド編成ではピエゾを多めにして音抜けを良くし、静かな会場のソロギターではマイクを多めにして生音感を出すなど、1本のギターでどんな環境にも適応できる。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・これ1本でカフェから大ホールまで、あらゆる演奏環境をこなしたい実戦派プレイヤー
・予算をかけてでも、ライン出力のサウンドクオリティに一切妥協したくない方

※現代のピックアップは進化しており、デメリットと思える特徴が技術的に克服されているケースも多いです。
自分のスタイルに合ったピックアップを考える基本的な大枠を捉える参考としていただければ幸いです。

もう一つの重要な選択肢~アクティブ と パッシブ~
4つのタイプ(方式)で、どれが自分のスタイルに合っているかを、次に選ぶのが「アクティブ(電池あり)」と「パッシブ(電池なし」という、信号の出力方式の違いです。
これは簡単に言うと「ギターの内部に、電池で動くプリアンプ(小さなアンプ)が入っているかどうか」の違いです。
どちらを選ぶかで、扱いやすさがガラリと変わります。

アクティブ・タイプ

ギターの内部に電池(9Vやボタン電池)を取り付け、プリアンプを内蔵しギターの中で音をある程度大きく、かつノイズに強い状態に整えてから出力します。 シールド(ケーブル)を長く引き回してもノイズが乗りにくく、ライブハウスの音響機材へそのまま繋いでも太く安定した音が出せます。

・パッシブ・タイプ

電池を使わず、ピックアップが拾った微弱な振動をそのままダイレクトに出力する方式です。
電池切れの心配がなく、余計な電子基板を内蔵しないため、ギター本体の生鳴りや軽さを損なわないというメリットもあります。出力される信号が非常に微弱でデリケートなため、ノイズを拾いやすいです。
実戦で使うには、ギターの外部で音を増幅させる「外付けのプリアンプ(D.I.)」が必要となるケースが多いです。
「パッシブはノイズに弱く、外部プリアンプが必要」と聞くと、一見デメリットばかりに思えるかもしれません。
しかし、音質に妥協したくないプロやこだわり派のプレイヤーは、あえてパッシブを選択します。
それは、ギターの外部でお気に入りの高性能プリアンプやD.I.を用いて、理想のサウンドを妥協なく作り込めるからです。

第3章 ピエゾの芯、マイクの空気、コンタクトの温度

L.R.Baggsの名機たちを具体的にご紹介します。
L.R.Baggsは、世界中の有名ギターメーカーが標準搭載として選び、プロの現場でも圧倒的なシェアを誇る「世界基準」と言って差し支えないピックアップ・メーカーです。それぞれの切り取る情報や特徴を踏まえ、どのようなプレイヤーに適しているかも併せて紐解いていきましょう。

1. L.R.Baggs Element(Active System)

種類:
アンダーサドル・ピエゾ・ピックアップ

特徴:
ELEMENTは、世界中のアコースティックギター・メーカーが標準搭載として採用しており、アンダーサドル・ピエゾの世界標準(定番)とも言えるピックアップです。
ノイズが少なくハウリングにも強いので、ライブやバンド演奏に向いています。
低音域から高音域までバランスが良く、アンサンブルでも埋もれない存在感を持っており、アンダーサドル・ピエゾ特有の「ペキペキ」とした音(ピエゾ臭さ)を抑えたナチュラルなサウンドが特徴です。
単体でも実用的なピックアップですが、外部のプリアンプでより音を作り込むこともできます。
アコースティックギターのピックアップはギターとの相性も考えたりしますが、ELEMENTはどのギターでもサウンドに大きな差がなく安定しています。迷ったらこれ、と言えるほどの安心感があるモデルです。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・大音量のライブハウスやバンド編成での演奏

2. L.R.Baggs M1 Passive

種類:
マグネティック・ピックアップ

特徴:
M1 Passiveは、サウンドホールに取り付けるマグネティックタイプの定番で、電池を一切使用しないパッシブ仕様のピックアップです。
独自の構造により弦の揺れだけでなくボディの振動も同時に拾うため、アコースティックギター特有のエアー感のある音を実現しています。
従来のマグネティック・ピックアップの「エレキギターっぽさ」を感じずにアコースティックなサウンドを生み出します。

本体にプリアンプや電池を内蔵しないため本番中に電池が切れる心配がありません。ただし、出力される信号が微弱でデリケートなため、ノイズの影響を受けやすいという側面もあります。
また、後述するM1 Activeと違いボリュームコントロールが設けられていません。そのため単体で鳴らすよりも、外部のプリアンプやD.I.と組み合わせることで真価を発揮するモデルと言えます。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・外部プリアンプ(D.I.)を使って音を作り込みたい方

3. M1 Active

種類: マグネティック・ピックアップ

特徴:
M1 Activeは、サウンドホールに挟むだけで手軽に高品位なアコースティックサウンドが得られる大定番モデルです。
アンプ内蔵のためノイズが極めて少なく、ライブハウスのシステムへシールドをそのまま挿すだけで、実戦的な音を出力します。

パッシブモデルと同様に、独自の「3Dセンサー」がサウンドホールを介してボディトップの振動まで同時にキャッチするため、エアー感のあるサウンドが特徴です。また、解像度が高く、弦を指で押さえた際の「チャッ」という細かなタッチも拾い上げてくれます。
M1 Passiveと比較すると音が綺麗にまとめられている印象を受けます。

外部プリアンプを別途用意することなく、本体のボリュームツマミを使ってステージ上で手元から瞬時に音量をコントロールできるのも、このアクティブ仕様ならではの大きな強みです。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・シールド1本で手軽にライブを行いたい方
・ギターボーカルや弾き語りプレイヤー
・ライブ時のハウリングを抑えたい方

4. L.R.Baggs M80

種類:
マグネティック・ピックアップ

特徴:
M80はM1シリーズをさらに進化させ、マグネティックタイプの完成形とも評される革新的なモデルです。

最大の特徴は、サウンドホールに固定されているにもかかわらず、ボディトップ板だけでなく「ギター全体」の振動をほぼ全帯域で拾い上げる独自の構造にあります。これにより、これまでのマグネティックの弱点だった「エアー感のなさ」を見事に克服し、コンデンサーマイクで拾ったたようなリアルな箱鳴り感を実現しています。

ボディを叩くタッピング奏法の音も驚くほど鮮明に出力し、ボディタッピングのサウンドはM1と比べ約200%向上しているとされています。

さらに本体の裏側には、アクティブとパッシブを切り替えるスイッチを搭載。
シチュエーションによっての使い分け、場合によってはピックアップ自体を取り外すことも可能なので、あらゆる状況に対応できるピックアップと言えます。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・マグネティックの手軽さと、コンデンサーマイクのようなリアルな空気感を両立したい方
・ボディヒット(叩き系)を取り入れたソロギターや弾き語りを行う方
・様々な状況を想定してピックアップを選びたい方(今後プリアンプを導入する、レコーディング時は取り外したいなど)

5. L.R.Baggs HiFi

種類:
コンタクト・ピックアップ(ブリッジプレート貼付型)

特徴:
HiFiは、アコースティックギターのピュアな鳴りを究極まで追求して開発された、新世代のコンタクト・ピックアップです。
ブリッジプレート(ボディ内部のサドルの真裏)に、超軽量な2つのセンサーを両面テープでシンプルに貼り付けるだけの構造を採用しています。
ギターに負荷をかけないため、トップ板が持つ自然な振動や鳴りのポテンシャルを物理的に妨げません。
指で弾いた瞬間の繊細なタッチから激しいストロークまで、木製楽器らしい柔らかな響きをそのままの音量バランスで素直に出力してくれます。

アンプとセンサーのバランスを徹底的にチューニングしたアクティブ仕様のため、コンタクトタイプでありながら非常にノイズが少なく、安定した出力レベルを確保しているのが強みです。

センサーがサドルの真裏という「最も豊かな箱鳴りが発生する場所」に直接密着しているため、ピエゾのような硬さを感じさせない、深く豊かな低音から艶やかな高音までを一遍に拾い上げます。
演奏者の細かなタッチの強弱にも素直に反応し、楽器の振動を余すことなくアンプへと伝えてくれる最新鋭のシステムです

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・指弾きの繊細なニュアンスや強弱(ダイナミクス)をライブでもそのまま表現したいプレイヤー
・マイクのような空気感を手軽に手に入れたい方

6. L.R.Baggs Lyric

種類:
アコースティック・マイク・システム

特徴:
Lyricは、ブリッジプレート(ボディ内部)に取り付ける、特殊なコンデンサーマイク方式のピックアップです。
従来の一般的な「内部マイク」は、ギターの箱の中にマイクを置く構造のため、筒の中で喋ったときのような「こもった低音」まで余計に拾ってしまい、それが原因で激しいハウリングを引き起こしやすいという弱点がありました。

しかし、Lyricは独自のノイズキャンセル技術(Tru-Micテクノロジー)を採用しており、まるでギターの目の前に高級スタジオマイクを立てて録音しているかのような、リアルで生々しい空気感を出力します。
アンプ内蔵のアクティブ仕様なので、マイク単体でありながらクリアで十分な音量を確保できるのが強みです。

サウンドホールに固定するマグネティックタイプとは違い、内部に超軽量なマイクを貼り付けるだけなので、ボディの自然な振動を物理的に妨げません。
そのため、ギター本来の生鳴りや響きを損なわないという、楽器にとっても理想的な構造を持っています。

ただし、どれだけ技術が進歩しても「本物のマイク」であることに変わりはないため、ピエゾやマグネティックに比べると、大音量で演奏する際のハウリングのリスクが高いです。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・ギター本来の生鳴りを損ないたくない方
・「リアルな生音の空気感」をラインの音でも再現したいソロギタリスト

7. L.R.Baggs Anthem

種類:
デュアルソース・システム(マイク+アンダーサドル・ピエゾ)

特徴:
Anthemは、画期的な特殊マイク(Tru-Mic)と、世界定番のピエゾ(Element)という2つの異なるピックアップを組み合わせた、ハイエンド・システムの決定版です。
従来のデュアルソースは「音は良いけれど調整が難しく、ハウリングしやすい」という弱点がありました。
しかし、Anthemは200Hz以下の低音域をピエゾのElementに任せ、250Hz以上の高音域を空気感溢れるマイクのTru-Micで拾うという、完璧な役割分担を自動で行う回路を備えています。

マイクが持つ息をのむような生々しさを主役にしながら、ピエゾの持つ力強い芯の強さを土台に敷くことで、驚くほどナチュラルで立体的なサウンドを生み出します。

サウンドホール裏の目立たない場所にコントロールユニットを固定するアクティブ仕様のため、手元で全体のボリュームだけでなく、マイクとピエゾの「混ぜる比率(ブレンド)」を自在に調整可能です。
マイクの比率を上げていくと中高域に艶のあるふくよかなエアー感が広がり、逆にマイクを絞ればピエゾ特有の芯の太いタイトなサウンドへと手元で自在にキャラクターを変化させられます。

バンド演奏からソロギターまで、つまみ一つでどんな現場でも最適な音を届けられる、まさに死角のない最高峰のシステムです。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・マイクの生々しさをライブで再現したい方
・あらゆる演奏環境をこなしたい実戦派プレイヤー

8. L.R.Baggs HiFi Duet

種類
デュアルソース・システム(コンタクト・ピックアップ+マイク)

特徴:
HiFi Duetは、最新鋭のコンタクトセンサー(HiFi)と、新開発のスタジオ品質マイク(Silencer)という2つの異なるピックアップを組み合わせた、次世代の最高峰ブレンドシステムです。
先行して登場したAnthem(アンセム)が「ピエゾの力強さ」を土台にしていたのに対し、このHiFi Duetは「コンタクトセンサーによる木製楽器らしい柔らかな響き」をベースにしています。

そこに新開発の内部マイクが持つ圧倒的な空気感を重ね合わせることで、ライン出力であることを完全に忘れてしまうような、極めてナチュラルで解像度の高いアコースティックサウンドを実現しています。

コントロールユニットはサウンドホール裏にすっきりと収まるアクティブ仕様で、手元で全体の音量だけでなく、センサーとマイクの「混ぜる比率(ブレンド)」を演奏環境に合わせて自由に変更できます。
マイクの比率を高めて豊潤な響きを作り、大音量のステージではセンサー主体に切り替えてハウリングを抑えるなど、現代のライブプレイヤーが求める理想のサウンドメイクを1台で完璧に網羅してくれます。

ギターのトップ板の自然な振動を妨げない超軽量設計を踏襲しており、愛器の生鳴りを活かせる点も大きなメリットです。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・ラインの機械的な音が苦手で、とことん生の響きを追求したい方
・あらゆる場面で愛器本来の音を届けたいプレイヤー

ここまで、L.R.Baggsの主要モデルを見てきました。他にも定評のあるおすすめの選択肢として外せないブランドがいくつか存在します。
そこで、L.R.Baggsと並んで世界中のステージを支え続けている「FISHMAN(フィッシュマン)」、そして独自のアイデアで近年急速に支持を広げている「Sky Sonic(スカイソニック)」のピックアップについても、併せてご紹介します。

9.FISHMAN Rare Earth Mic Blend Active Soundhole Pickup

種類:
デュアルソース・システム(マグネティック+マイク)

特徴:
Rare Earth Mic Blendは、世界一のシェアを誇るFISHMANの技術が詰まった、アクティブ仕様のロングセラーモデルです。
サウンドホールに挟むパワフルなハムバッキング(マグネティック)に加え、本体からフレキシブルなグースネックマイクが伸びている独自のデュアル構造を持っています。
マグネティックが持つピッキングの正確なアタック音に、マイクによる柔らかな空気感(アンビエント感)を本体のダイヤルで思い通りにブレンド可能です。

また、マイクの裏側には「低音域のカット(ロールオフ)スイッチ」が搭載されています。
会場の壁の反射や音量によってマイク特有の「ボワボワとした低音のハウリング」が起きそうになった際、手元でマイクの低音だけをバッサリ削ることで、輪郭のハッキリしたタイトな実戦サウンドへ瞬時に最適化機能です。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・指弾きの繊細なニュアンスから、芯のある力強いストロークまで幅広くマルチに演奏するプレイヤー

10.Sky Sonic WL-800JP

種類:
ワイヤレス・デュアルソース・システム(マグネティック+マイク)

特徴:
WL-800JPは、アコギ用ピックアップに革新をもたらした、プリアンプとワイヤレス(無線)機能が一体となった画期的なモデルです。
サウンドホールに本体を取り付け、アンプ側へ受信機(レシーバー)を挿すだけで音を出すことができます。
構造は太くパワフルな音が得られるマグネティックと、エアー感を加えるコンデンサーマイクの2系統を備えており、それぞれの音量を手元のツマミで独立してコントロール可能です。
これだけの多機能でありながら、レイテンシー(音の遅延)を全く感じさせないクリアなサウンドを実現しています。 [

ギターの内部配線やエンドピンジャックの「穴あけ加工」が一切不要なため、大切な愛器に傷をつけたくないプレイヤーにとっても理想的な選択肢と言えます。

また、充電バッテリー駆動のため、煩わしい電池交換が不要なのもおすすめポイントの一つです。

どんなプレイヤー/シーンにおすすめ?
・愛器に穴あけ加工などの傷を一切つけずに、高品位なシステムを載せたい方
・ライブ中のステージングで、シールド(ケーブル)の煩わしさから解放されたい方
・ストロークからソロギター、ボディヒットまで手軽にマルチにこなしたいプレイヤー

終章 「一番おすすめのピックアップはどれですか?」

「一番おすすめのピックアップはどれですか?」
店頭でも、そのような質問をいただく機会は少なくありません。

しかし、ここまで読み進めていただいた方は、その問いに一言でお答えできない理由をご理解いただけているはずです。
ドラムのいるバンドで演奏する方と、静かな空間でソロギターを爪弾く方とでは、現場で求められる音の役割が根本から異なります。
力強くアンサンブルを突き抜けるサウンドが必要な場面もあれば、生音そのままの繊細な空気感を大切にしたい瞬間もあるのです。
だからこそ、ピックアップ選びとは「人気ランキングの順位」や「価格の高さ」だけで決めるものではないのだと、考えています。

アコースティックギターは本来、非常に豊かな響きを持った美しい楽器です。
その魅力をスピーカーの向こうにいるより多くの人々へ届けるために、ピックアップは大切な「表現の手段」として機能してくれます。
物理的な仕組みの壁がある以上、生音と全く同じ響きを100%再現することはで着ないのかもしれません。
しかし、自分の演奏環境という具体的な条件に、機材の特性を重ね合わせることで、愛器が持つポテンシャルをより自然に、そしてより魅力的に伝えることは確実に可能です。

「どうしてもラインの音が好きになれない」

もしそんな思いを抱えているのであれば、ぜひ一度「どこの情報を切り取るか」という視点から、大切な愛器を見つめ直してみてください。
そうすることで、まだ気付いていなかったあなたのギターの新しい可能性が、きっと見えてくるはずです。
当店へのご相談もお待ちしております。

この記事を書いた人:望月(Advance Guitarsスタッフ)

私生活ではエレキギターをメインに演奏。仕事の休憩時間にもギターを弾き続けるほどの楽器へのとめどない愛と興味を活かし、Advance Guitars屈指のストローク技術でアコースティックギターの魅力を発信している。

保有資格・実績: 楽器鑑定士歴4年

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