なぜ1964年が至高なのか。

1960年に誕生したFender Jazz Bass。
すべてのベーシストにとってのスタンダードであり続け、誕生から60年以上が経過した今なお、その形と基本構造を保ったまま音楽シーンの第一線で鳴らされ続けています。

Fenderのリイシューモデルでは数多くの年代が再現されていますが、ビンテージ市場において、「至高の完成形」と特別な敬意をもって語られる年代があります。

それが1964年製です。


1.「Pre-CBS期」の最後の輝き

なぜ、1964年という年代がこれほどまでに称賛されるのでしょうか。
その大きな理由のひとつに、Fender社の歴史的背景があります。

Fender社は1965年、大手メディア企業であるCBS社に買収されました。買収後のいわゆる「CBS期」へと入ると、世界的なエレキブームに伴う大量生産化が進み、コストカットや製造プロセスの合理化、各種仕様変更が行われていくことになります。

そのため、創業者レオ・フェンダーの製作理念と、熟練の職人たちによるハンドメイドの情熱が惜しみなく注ぎ込まれていた「Pre-CBS(1960年〜1964年)」の個体は、ビンテージ市場で圧倒的な価値を誇る「黄金期」として君臨しています。
そして1964年は、そのPre-CBS期における「黄金期の最終年」なのです。

 

2. 1960年からの進化

ジャズベースの歴史において、初期の1960年~1962年製もまた非常に人気が高い年代です。
それぞれのサウンド・仕様の面でどのような違いがあるのか見ていきましょう。

・1960年〜1961年
2段重ねの「スタックノブ」を採用。指板にはローズウッドを平らに貼り合わせた「スラブボード」が用いられていました。

・1962年
2ボリューム/1トーンの「3ノブ」へ移行。スラブ指板と「ブラックボビン」ピックアップが生み出す、太く粘りのある粘着質な低音が特徴で、こちらもリイシューモデルで非常に人気の高い年代です。

・1963年
ネック材のカーブに沿って薄いローズウッドを貼る「ラウンド貼り」が採用されます。

・1964年
ボディに取り付けるタイプのミュートが廃止。
ピックアップには「グレイ・ボビン」が採用されます。
「クレイドット・インレイ」(翌65年にはパーロイドに変更)もPre-CBS期を象徴する仕様です。


1962年製が太く粘るトーンだとすれば、1964年製は高域の輪郭とレスポンスが向上したトーン。
あらゆるアンサンブルに自然と馴染み、現代のプレイヤーにとっても「最も扱いやすい」と感じさせるバランスの良さがあるのが1964年なのです。

 

3.ポピュラーミュージックを取り巻く環境の変化

1960年代半ば、レコードの制作現場は多重録音技術の進化に伴い激変していました。
バンドアンサンブルはより複雑化し、エレキギターの大音量化や、ストリングス、ホーンセクションが幾重にも重なる密度の高いトラックが作られるようになった時代です。
それまでの太く重いだけの低音では、混雑したアンサンブルの中で埋もれてしまうという課題が生まれました。

そこで登場した1964年製の「高域の輪郭と圧倒的なレスポンス」は当時の音楽シーンにマッチしたのではないかと想像できます。

私たちが日常的に耳にしている「ポピュラーミュージックの気持ち良い低音」そのものが、Pre-CBS期のJazz Bassによって作られたと言っても過言ではありません。
そんなPre-CBS期の最終年である1964年が「Jazz Bassの完成形」と呼ばれるのも納得がいきますね。

実をいうと、これまでにFenderから発売されてきた60年代リイシューモデルといえば1962年モデルが圧倒的に多いです。(Fender USA/American VIntage '62 Jazz Bassや、Fender Japan/JB62など)

ビンテージ市場においても、価格面を含めて1962年頃までのスラブ指板個体の評価が先行してきた歴史があります。指板のローズウッドが贅沢に使われた象徴的なルックスと、どっしりとした太い低音。「ジャズベースの原点」としての文脈から、スラブ指板期が支持されてきたのは当然の流れだったのかもしれません。

しかし、歴史的な評価から一歩足を踏み入れ、プレイヤーの現場感覚に目を向けたとき、1963年以降のラウンド指板に対する評価には絶対に見逃せないものがあります。

スラブ指板が持っていた粘りある低音に対し、ラウンド指板が生み出すのは、ピッキングの瞬間に素早く立ち上がる鋭いアタック感と、アンサンブルの混雑をすっと突き抜ける音の輪郭。

後発のモデルにはラウンド指板が採用され続けていることを鑑みても、ラウンド指板は決してスラブの「後追い」などではなく、現場の音楽的要望に応える形で到達した「実践的なジャズベースに最適な仕様」なのではないでしょうか。

 


さて、今回当店に入荷した本機はまさにその1964年製。

Fender 1964 Jazz Bass

サンバーストの褪色も少なく、数箇所の塗装剥離が見られるのみで非常に綺麗なコンディションが保たれた個体となっています。
年月相応のダメージは見られるものの、貴重なオリジナル・ハードケースが付属。さらにピックアップフェンスとブリッジカバー(ミュートスポンジなし)も残存しております。

 


本機はただ愛でるだけのコレクターズアイテムではありません。当店専属のリペアマンの手により、ストレスなくプレイしていただけるセットアップを施しています。
今まさに、ステージやスタジオで至高のアンサンブルを鳴らすための「現役の楽器」としての圧倒的な存在感を放つ至高の1本です。

 

約60年の時を経て、現代のプレイヤーが「Fenderの黄金期」を感じられる特別なベース。
4弦開放を鳴らした瞬間、ビンテージベースにしか出せないスピーディな低音を肌で感じていただけることでしょう。

あなたも是非、この至高のトーンを体感してみませんか?

 

店頭にて試奏可能!
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小田

ベース

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