2007年6月号 - TC楽器 - TCGAKKI
Premium Selections 雑誌撮影こぼれ話
Player Player 6月号(2007年)
No one knows where the gift come from.

ある木曜の朝、ひとりの男が海岸沿いの砂浜を歩いている。
仕事をしながら地道に楽曲を作っている彼だが、数週間前に楽器店で見つけたヴィンテージギターの事が頭から離れない・・・。しかし残念ながら予算オーバーだった。

真面目な彼は、あんなステキなギターで自分の曲を思いっきり弾いてみたい!そんな夢を見ながら歩いていたのだ。

すると後ろの方でドザッと凄い音がした、驚いて振り向くとそこは・・・
ギター?!

なんでやねん!

と思いつつも彼の目前には落ち立てホヤホヤで砂浜に刺さっている、今最も"HOT"なヴィンテージギターを発見した!
彼は気づいた。こっこれはきっと神様が自分に授けてくれたプレゼントに違いない!
煙が消え止まぬ間に彼はギターを抜き取り、ここぞとばかりに海に向かってソロを弾くのであった・・・

 
>> ヴィンテージ・ベースの最新入荷情報

さて今月はヴィンテージ楽器は自分には縁遠い物、関係ない物と諦めているミュージシャンに対するメッセージを考えてみた。

ヴィンテージが全てではないが、使ってみたいものだろう。半世紀前に舶来のクラフトマン達が創造し今もなお生き続けるあの楽器を弾いてみたいと心のどこかで思っているに違いない。

ただおいそれと手を出せる金額では無くなってしまっただけだ。

だが諸君、少し腰を落ち着けてよく考えて見てほしい。あなたの人生を振り返ってみてほしいのだ。
誰にでも、まさかこんな事が起こるとは・・・と信じられない経験があるに違いない。
そう、
人生は何が起こるか分からない。

何かのきっかけで、あこがれのヴィンテージ楽器を手にすることが出来るかもしれないじゃないか!・・・(なんてポジティブなんだ)。

そんなメッセージを空(天)から貴方の下へ届いたあこがれのギター!として表現してみたのだ。果たして伝わっただろうか?

photo状況は正に空から落ちてきたばかりのテレキャスター。

強引すぎるって?

今や飛行機の部品が屋根を貫通して落ちてくる時代である。そして中国からの黄砂が日本に降り注ぐ時代だ。

空からプレゼントが降ってくるはずが無いと言い切れるか。

ストーリーは決まった。ではどのように表現すればいいのか。天から降ってくる幸せのプレゼント!をどのように写真に収めるかで議論が交わされた。

「空から落としましょう」

「何を?」

「ギターを」

「アホ」

とは言ったものの、戦闘機まで登場させた我々である。常人が諦めても俺たちは諦めない!

「やるぞ!」

photo強い。強いぞ俺たち!
じゃあ、どこに落とすか。
「屋根!」
「トタン屋根でも探すか・・・」
「道路!」
「コンクリに穴あけるの大変やなあ〜」
「じゃあ、砂浜!」
「おっ!いいねえ、それいこっ!」実にたわいない。
楽勝である。

海岸・・を探すため、某友人に電話で聞いてみた。すると三浦半島だったら広い砂浜あるよ、とのこと。早速 Google Earth で現場検証。

イイ感じだよ、じゃあ出発は来週の火曜ってことで。解散!

「ちょっと待って、ギターはどうするの?」

まさかヴィンテージを砂浜に刺すわけにはいかない。不幸か幸いか店内の商品でも代換えのギターがない。すると一人が「持ってるよ、テレキャス」

「えっいいの?」

「しょうがないじゃん」

感動した。

この撮影の為に命をかけているという君の言葉は本当だったんだ・・・。
しかしこんなところで泣いているわけにはいかない。
「じゃあ、ギターは決まりって事で」
スコップは二つ揃いそうだ。えっひとつは軍用?なんじゃそれ?
まあいいや、掘れればいいさ。
photo「ところでギターを砂浜に突き刺すだけじゃつまらんでしょ」
じゅうぶんつまると思うんだが一応聞いてみる。
「どうせなら、隕石が落ちてきたように地表を爆発させましょう」
ずいぶんと大胆な意見だ。
爆破は難しいが、落ち立てホヤホヤ感はほしいな。

「花火の煙を充満させてみては?」

なるほど。現実的に考えると蛇玉だな。あのうんこみたいにもりもり出ながら煙出すやつ。

で、今時売っているのか?蛇玉。

そんなやりとりをしていると事務担当から一言。

「ドライアイスを使えばいいんじゃないですか?」

おおお、エライ!君にはそんな才能があったのか。それ、使わせてもらうぞ。

煙は熱いものから・・という固定観念を見事に突いた発言だ。石のように固い頭で考えていた我々だったが、煙は冷たい物でも出せるのだ!そういえば良く遊んだものだよドライアイスで。
photoそして当日朝9時に店に集合した我々は荷物を詰め込み、いざ三浦半島へ出発した。

都内は混んでいたが、徐々にスムーズになり始めていた頃、途中のサービスエリアで朝食タイム。

それぞれがホットドック、メンチカツサンド、カツサンドを豆乳ラテをすすりながらエネルギーを蓄え、期待に腹を膨らませた。

photoさて、11時を過ぎたあたりで海岸線に到着。海を左手に見ながら国道143号線を進んだ。おっと、ドライアイスを買わねば。
我々は三浦海岸駅へ行き、近くのスーパーへ行ってみた。

ない・・・ない・・・・どこにもな〜い!

仕方がないのでダメ元で交番に行き聞いてみる。

photo「ドライアイス?あ〜FUJIYAのレストランにあると思うけど、今は例の騒ぎで開いてないわ」

なるほどケーキ屋にあるというのは良い発想だったが、そのケーキ屋がない。
困った・・・。

すると電話帳を出してくれた。祈る気持ちで探すと一件だけ見つけだした。

 

photo車に乗り込み住所をナビに打ち込み、走ること20分。某港の倉庫街にその看板を見つけた。

中に駆け込むとちょうど店のおとうさんとおかあさんがお食事中・・・今日はカレーね♪

挨拶もそこそこドライアイスを4kg購入した。
「いやあよかったです、はるばる三浦海岸から買いに来たんですよ〜」とおばさんに言うと、

「ウチは安いのよ!横浜からだってくるんだから!」
海育ちの女性は男勝りである。

photo急いで戻ってきた我々は、ひとけのない適当なポイントを見つけ出し、車を通りの反対側にあるパーキングへ止めて砂浜へ足を踏み入れた。

懐かしい感触だ、砂の上を歩くのは何年ぶりだろうか。

photo波打ち際から数メートル離れたある場所を決め、持ってきたスコップで砂をかきだし始めた。

ここ三浦海岸の砂浜は知人の言った通りにとても広くこの時期には人はまばらだ。そこへスコップとギターを抱えた男三人が現れて穴を掘り出し始めたのだ。

散歩中の地元民から妙な視線を背中に受けながらの作業であった。

photo50cmくらい掘ったところでおもむろにギターのヘッドを突き立てる。

ちなみにこれはフェンダージャパンのテレキャスターで、写真では見えないが真っ赤なPUガードを装着したレアな一本だ。

撮影が終わったら全面清掃して返すとはいっても、何ともいえない感覚だったに違いない。ありがとう>提供者。

さてギターは突き刺した。次は煙の番だ。

バケツに海水をくんで買ったばかりのドライアイスにかけてみる。

photoしょぼしょぼ・・・

やはり水をかけただけではダメなようだ。
我々はギターヘッドの近くにバケツが入るほどの縦穴を更に掘り、海水たっぷりのバケツを押し込んだ。そして4Kgのドライアイスを全て放り混んだのだ。

ゴボゴボゴボ!・・・

おお、凄いぞ。煙が出る出る、、うっひょっひょお〜!

photo子供のようにはしゃぐ我々。
おっとそんなに喜んでばかりはいられない、煙がどのくらいもつかわかないからだ。

写真を撮ろうとするとなぜか風が出てきた。野外なので仕方のないところだが、少しの風でも煙が飛ばされてしまうのだ。そのため風の様子を伺いながら様々な角度から撮影を行った。

ドライアイスの煙が少なくなったころ撮影は終わり、周辺の様子を数枚シャッターに収めてギターを砂中から引き出した。

す〜な〜だ〜ら〜け〜。

小細工なしに突き刺したのでそれは哀れな状態だ。

photoすぐに我々はそのギターを近くの公衆トイレへ持って行き、洗浄処理を行った。ギターを水でばしゃばしゃ洗う感覚は、子供の頃やった死んだ昆虫に爆竹を詰めて点火する時のような何とも言えない不思議な感じだ。うむ、後は店に持ち帰ってから清掃しよう。
photo撮影機材などを車に詰め込み、一路東京へ

と思ったがせっかくなので地元の海の幸を堪能して行きたいを考え漁港近くのレストランへ入った。

photo刺身定食、焼き魚定食、それに焼き肉定食(なんで肉やねん)を注文した。

 

photo都会から離れるときはなるべくその土地のものを食べるようにしたい、食も経験なり。

 

 

 

photo

 

さて予定より随分と時間がかかってしまったので早々と引き上げよう。

帰りの渋滞には閉口したが、無事撮影できたので安心したのだった。

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