特集ドラムメーカー~Ludwig~緊急インタビュー - TC楽器 - TCGAKKI

 

今日は有難うございます。早速ですが、多くの方がヴィンテージ・ドラムに対して感じている「ヴィンテージ・ドラムは、現代の音楽においても使えるんだろうか?」この辺りについてお話を伺えればと・・

 

はい、十分使えますよ。まあ、年式やモデルによっては「う~ん、これはどうかな?」なんてのもありますが.....。あと、これは日本の文化ではないからなのでしょうか…..日本では、一般的に語られるヴィンテージドラムってのは、60年代や70年代物が多く、先日のフェスの時 (*1) にディスプレイしたような1920年代の物となると皆さん、「ここまで古いドラムは、付加価値だけで使える物ではないだろう」みたいな先入観を持っていると思うのです。

(*1 : ドラムマガジン・フェスティバル2012)

 

確かに 「 これは飾り用ですよね 」 という印象を持たれる方も多いですよね。

 

でも、それは大間違い!!! ( 笑 )。

まあ、古ければ古いほど良いという事ではないですが、あの当時のブラススネアに使用されたブラスは、現代の物とは純度も調合も、全然違う物で、現在では再現不可能なほど上質な素材で作られているし、PA等の音響設備のないオペラハウスみたいな所で、生音のみで観客席まで音が響くように設計されていた訳ですから、音量がない訳ないのです(笑)。

 

そうですよね。それこそ先入観ですが、私も最初は鳴りが弱いのかな・・と思っていたのですが、実際は音の大きさ (鳴りの良さ) にビックリしてしまいました(笑) 。

 

あの頃の、ブラススネアの特徴は、耳障りが良いアタックと、そこに付いてくる独特な倍音感ですね。ラウドでありながら、長時間聴いていても耳が痛くならないような音(笑)。

10数年前に、アメリカにて、ある人が当時のラディックのブラススネアを再現した完全コピー版のようなリイシューの製作を試みましたが、失敗に終わりまして.....(笑)。皮肉な事ですが、工場の設備は現代のほうが発展している筈なのに、何故か昔の物を再現することは無理なんですよ。

 

確かにヴィンテージって、今でも需要があるのは再現出来ないからなんですよね。再現させて同じ造りをしているはずなのに、不思議と音が違う 。不思議です(笑)。

 

あと、ウッドのドラムも同様で、一つ例に挙げると通常、皆さん、マホガニー材って聞くと「ああ、音量はないけれど、柔らかい感じの良い音がしますよね」みたいな事を言われる人が多いですが.....。

しかし、あの頃のマホガニーって、ギターで言えば50年代のギブソンレスポールや戦前のギター等にも多く使われたホンジュラス・マホガニーなんですよね。もう、その時点で木材自体の剛性が現代のマホガニーとは全然、違いますし、それに輪をかけて時が経っている訳ですから、更にシェルの剛性は強くなってますね。

20年代とかのウッドスネアのシェル本体を、指でカツカツと叩いてみて下さい。その音を聞くだけで、試奏しなくても、それが良い物か良くない物か、直ぐに分かる筈です!!!!!

 

「ヴィンテージの価値を裏付ける○プ○○○○○○○○○!? 」

 

それでは続いての質問に・・ 。HIROさんは、相当数のヴィンテージ・ドラムを見てこられたと思うのですが、ご経験上から見た「ヴィンテージ・ドラムの持つメリット、デメリット」 この辺りについもお話を伺いたいのですが・・。

 

メリットとしては、先ほども触れたように、現行品のドラムでは出せない上質で、且つ個性的な音が出せる事ですね。あと、もちろんルックスも個性的なので、人の目を引く事も出来ますよね? あれっ?

あのドラムって何だろう?みたいな感じで、周りからの注目を浴びたりとか(笑)。

それ以外のメリットは、普通の現行品や近年物の中古は、時が経てばただの中古として扱われるから、価値は下がっていくばかり.....(笑)。でも、ヴィンテージ物ってのは、80年とか100年、経っても使える状態で残っている物に関しては、ヴィンテージとしてのバリューが落ちる事はないですしね。まあ、もちろん景気の変化で、相場の変動はありますが(笑)タダみたいになってしまう事はないですからね。

 

なるほど。確かに80年とか100年の時間を考えると、アメリカの文化遺産といっても良いですよね。

それが手元にあって音を出すって凄いですね !! 80年とか100年前にも、どなたかがドラムの前に佇んで、スティックを振り上げていたんですよね。凄いです !!

 

さて、デメリットですね(笑)。う~ん.....どうでしょう? まあ、特定のモデルで、パーツが壊れてしまったりした場合に、直ぐにパーツが揃わなかったり、中には入手困難なパーツもあったりしますから.....。ただし、あの辺りのノウハウを持った、信頼出来るお店から購入すれば、パーツの供給も必ずケアしてくれると思います。

アメリカでは、ヴィンテージドラムは一種の文化でもありますので、交換用のリプレイスメントパーツを製作している業者は結構、いますから、パーツ交換が必要になっても、ヴィンテージなルックスを損ねずに直すことは簡単になりましたね。

 

なるほど! ヴィンテージとしての価値が確立されているからこそ、リプレイスメント・パーツが存在する訳なんですね。リプレイスメント・パーツの存在が、逆に確立された価値を証明しているのですね !!

 

 

「在庫が切れたら作って補充~♪・・・ってな感じにはいかない(T_T)」

 

そういえばHIROさんは、渡米された際にヴィンテージ・ドラムのショップ巡りをしたり、実際に著名なコレクターにお会いしたりされたと聞いたのですが、印象深いエピソードや、本場アメリカのヴィンテージ・ドラム観などお話頂けますでしょうか?

 

私は、本当に本当に、気の向くままに動くタイプの人間ですから(笑)思い立ったら直ぐに行動!!!!! みたいな感じで、ニューヨークの町中に滞在していても、隣の、そのまた隣の州とかに出物があると聞けば、翌日の朝には長距離バスに乗っていたりとか、インディアナ州に滞在中でも、メンフィスにブラックビューティーが売られていたと聞けば、翌日には車でメンフィスまで走りましたし.....(笑)。そんな旅を長年、繰り返しているうちに、某航空会社のミリオンマイラーになってしまいました(笑)。

 

そんなに(笑)。

 

でも、色々な場所に足を運んで、色々な人と出会う機会もあり、そして学び.....みたいな感じで、そうしているうちに、著名なコレクターや海外の有名なミュージシャンともコンタクトを取るようになりましたね。まあ、もちろんヴィンテージドラムの知識が豊富になった事は自分にとって大きな収穫だと思いますが、それよりも自分にとって重要だった事、そして今も重要な事は、人と人との繋がり.....つまり、楽器を通しての出会いですね。日本でも、もちろん楽器に敬意を持っていらっしゃる方は多いと思いますが、本場のアメリカでは、もっともっと文化の一部みたいな感じなんですよ。

だから、世代交代をしても、ずっと継承されて行くのですね。

 

なるほど。自国の文化に誇りを持っているのですね。我々も魅了されていますが、より深く文化の一部としてのリスペクトがあるのですね。

 

今日は色々お答え頂き有難うございます。最後の質問ですが、HIROさんは過去に相当数のヴィンテージ・ドラムを手にされてきたと思うのですが、実際ヴィンテージ・ドラムを使っていく上で、どの様に扱っていったら宜しいのでしょうか? ご経験上から、アドバイス等があれば教えて頂きたいのですが・・

 

う~ん.....これが一番、難しい質問ですね(笑)。思い立ったら、とりあえず「買え!!!!!」ですかね(笑)。

 

おお~(笑)。

 

いや、まあこれは冗談っぽいですが、真面目な話で、現行品のように在庫が切れたら、また作って補充ってな感じにはいかないのがヴィンテージ楽器ですからね。そして、個体差とかもありますので、ある意味、「これだっ!!!!!!」って思えるようなヴィンテージドラムに出会ったら、迷わず購入するべきです(笑)。そう.....無理してでも.....(笑)。

でも、そうやって無理してでも本当に欲しいと思って購入する楽器って、大事にすると思いますし、一生物として飽きないで使えると思います。で、どのように扱っていったら良いかという件に関しては..... いや.....別に、普通で良いと思います。

とりあえず、楽器に対しての敬意と愛情を欠かさず使っていけば良いと思いますよ。

 

そうなんですか。楽器に対する敬意と愛情が大切なんですね !!

今日は希少なお話の数々有難うございました!!

 

HIRO 
(ドラマー、プロデューサー、レコーディングエンジニア)

インディーズバンド、CROWLEYを経て86年にTHE STAR CLUBのドラマーとしてメジャーデビュー。93年には黒夢に参加 。
その後、ドラムの音作りに関する豊富な知識を生かして、主にロック系のバンドのレコーディング /ライブにドラム・サウンド・プロデューサーとしても多数参加。またVintage Drumsに対しても造詣が深く、90年代には、「リズム&ドラム・マガジン」での特集記事を提供するなど、Vintage Drumsのスペシャリストとしても知られる。

90年代後半以降は、日本とアメリカにてプロデューサー兼エンジニアとして活動。同時に、ドラマーとしての活動も再開し、現在は国内外でサポートドラマーとしての活動も行っている。今年7月には、THE STAR CLUB 1990という名義で、1990年当時のメンバーで一夜限りの再結成ライヴを東京 0-Westにて決行し、超満員御礼となったその日のライヴを収録した限定プレスのDVDは、先行予約の時点で完売し話題を呼んだ。

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