婚約指輪って、よく給料3ヶ月分と言いますが!!
Fender社の現ラインナップであるVintage Series誕生が1982年、原点回帰でFenderブランドの威信を回復すべく、同社の輝かしい歴史を遺産とする方向に経営の舵が切られて行きました。量産による収益性ではなく、'60年代のクオリティが見直され、ここにFenderのオリジナルとリイシュー・モデルが存在することとなります。
Vintageというランクに成ることでステイタスが確立し、アコースティック楽器同様マーケットでの価格も希少になるほど、高騰するという縮図が生まれます。
もっとも、1960年代の発売当初でもベースの値段は$199.50、Bassmanアンプ$203.50、日本円でおよそ7万円(当時レート1$=360円)。この年、日本国内では一般家庭向けの小型冷蔵庫(90L)が約8万円で発売され、その価格はサラリーマンの10ヶ月分の給料に相当します。
婚約指輪が月給の3ヶ月分というお約束の相場もありましたが、三種の神器の1つでもある冷蔵庫と比較しても、1市民には程遠い楽器だということが理解出来ます。日本国内では、そのような事情からコピーモデルが数多く制作されることとなります。オリジナルの発売から、その品質に肉薄するまでおよそ20年程かかり、数多くのコピー・モデルとFenderオリジナルの差別化を明確にする意図で、1982年にFender Japanが設立することとなります。
※この頃の国内製造のベースを弊店では"サムライ・ベース"と呼称致しております。
Fender Golden Sixties
さて、その輝かしいFender社の飛躍した1960年代ですが、まず遡ること1952年、昭和27年ミュージック・トレード・マガジン誌にFender社が発表したプレシジョンベースの記事が掲載されています。そのタイトルは、"Portable String Bass"とあり、ウッド・ベースよりも大きな音で、持ち運びやすく疲れにくいと紹介されています。
そして、Precision Bassの改良版が、1960年に新たにラインナップいたしました。
1960 catalogue
1960年7月12日付けのNAMMデイリーには、新製品の紹介がこう記されています。
"Fender社は、新開発のJazz Bassを発表。2個のピックアップと新回路によって、豊かな低音域を実現。Precision Bassよりもネックは細くなり、
柔軟な高域のコントロールが可能になった。"
1900年代ごろアメリカで発達したBluesは、その中で行われるミュージシャン同士の音楽的会話から発展し、Jazzの形式を作り上げました。進化と熟成は一層進み、1960年代には、現在音楽のおおよそが既に完成しております。
ヨーロッパ音楽とアフリカ音楽が融合し、新たな形態を生み出すがゆえにJazz、Bleusが世界規模で発展を遂げる所以でもあります。
1960年代には、楽器の電気化が一層進み、音楽スタイルが激変した時代とも言えます。
1945年設立のFender社では、エレクトリック・ギターに続き、1951年エレクトリック・ベースを発売致します。コントラバスを担いで移動するベース・プレイヤーにとってコンパクトで大音量が出るベースに移行していく背景も頷けます。1950~1960年代のJAZZシーンでは、コントラバス主流ですが、Bluesや新たに生まれるRockに於いて、盛んに大音量化が進み、Bassの役割も変化していきます。音楽形態の変化に伴い、ベース楽器のラインナップも広がりを見せ、いよいよ1960年Fender Jazz Bassが誕生致します。
モデルと年式での仕様とサウンド
1961 Jazz Bass Stack Knob
P/U抵抗値: |
F 6.96kΩ / R 7.55kΩ |
至福感: |
☆☆☆☆☆ |
誘惑度: |
☆☆☆☆☆ |
お金: |
☆☆☆☆☆ |
1961 Jazz Bass Stack Knob
1961 PRECISION BASS SLAB BOARD
P/U抵抗値: |
11.15kΩ |
破壊力: |
☆☆☆☆☆ |
期待性: |
☆☆☆☆☆ |
いいねボタン: |
☆☆☆☆☆ |
フェンダー営業部でカラーチャートの配布をスタート。
1962 Jazz Bass
2Vol/2Toneから2Vol/1Toneに仕様変更 |
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アフターテイスト: |
☆☆☆☆ |
貫禄: |
☆☆☆☆☆ |
切れ味: |
☆☆☆☆ |
1962 PRECISION BASS SLAB BOARD
翌年'63年にかけて、指板のラミネイトはスラブ(平)貼りからラウンド貼りへ仕様変更。 |
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P/U抵抗値: |
11.09kΩ |
顔色: |
☆☆☆☆☆ |
コク: |
☆☆☆☆ |
旨味: |
☆☆☆☆ |
1962 PRECISION BASS SLAB BOARD
1962-63 fender catalogue
1963 Precision Bass
ネックプレートのシリアルナンバーが、Lからスタート |
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P/U抵抗値: |
11.38kΩ |
信頼性: |
☆☆☆☆☆ |
仕事ぶり: |
☆☆☆☆ |
体調: |
☆☆☆☆☆ |
1963 BASS VI
当時のスタジオ・ミュージシャンに好まれ、幾つかの名盤にもそのサウンドが刻まれることとなるBass VIが1961年にラインナップ。 |
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二面性: |
☆☆☆☆☆ |
人気者: |
☆☆☆☆ |
新感覚: |
☆☆☆☆ |
1963-64 fender catalogue
1964 Jazz Bass
Jazz Bassの"OFFSET Contour Body"ロゴ・デカールが、ヘッド先端に移動。同年の終わり頃よりポジションマークがクレイ・ドットからパーロイドに、Precision Bassロゴはトランジション・ロゴに、ピックアップのボビンはブラックからグレイに、エナメル・ワイヤーは濃茶からオレンジへ変更されます。 |
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相棒度: |
☆☆☆☆ |
ぞっこん度: |
☆☆☆☆ |
生活力: |
☆☆☆☆ |
1964-65 fender catalogue
1965 Jazz Bass CAR
Fender社をCBSに売却 |
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P/U抵抗値: |
F 3.52kΩ / R 3.52kΩ |
お洒落: |
☆☆☆☆☆ |
注目度: |
☆☆☆☆☆ |
攻撃力: |
☆☆☆☆ |
1965 Jazz Bass CAR
1966 Jazz Bass
左のモデルは、まだドットポジションですが、ネックにバインディングが入り始め、ブロック・ポジションも加わります。この年の半ば頃ミディアム・ジャンボ・フレット、ペグも自社生産され始めます。ペグは、クローバー型とパドル型で、逆巻が終了致します。コロナド・ベース、ムスタング・ベースがラインナップ。 |
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P/U抵抗値: |
F 4.24kΩ / R 3.33kΩ |
スッキリさ: |
☆☆☆☆☆ |
心強さ: |
☆☆☆☆☆ |
マイナーチェンジ: |
☆☆☆☆☆ |
1966 Jazz Bass
1966 MUSTANG BASS
オーバーサイズロゴ(CBSロゴ)を採用した最初のベースで、30インチのネックスケールで子供や初心者向けに発売され、瞬く間に市場に浸透。 |
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愛嬌: |
☆☆☆☆☆ |
元気感: |
☆☆☆☆☆ |
体重: |
☆ |
1965-66 fender catalogue
1967 Coronado Bass II
生産期間は1967年から1969年頃までの僅か2年程。 |
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孤高さ: |
☆☆☆☆ |
カウボーイ: |
☆☆☆☆☆ |
体格: |
☆☆ |
1968 TELECASTER BASS
その深みあるサウンドが1951年発表時にはあまり評価されず、時を経て1968年に、1951年のオリジナル・プレシジョンベースとほぼ同じ仕様で発売。 |
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一目惚れ: |
☆☆☆☆☆ |
男らしさ: |
☆☆☆☆ |
渋さ: |
☆☆☆☆☆ |
1968カタログ
1969 Jazz Bass
トランジション・ロゴがCBSロゴに変更。 |
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P/U抵抗値: |
F 3.70kΩ / R 3.75kΩ |
守ってあげたい: |
☆☆☆☆☆ |
箱入り度: |
☆☆☆☆☆ |
スタイル: |
☆☆☆☆☆ |
1969 Jazz Bass
1969ベースカタログ
2006 Fender Custom Shop
MBS 60 Jazz Bass NOS Masterbuilt by Dennis Galuszka |
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P/U抵抗値: |
:F 3.72kΩ / R3.75kΩ |
色白さ: |
☆☆☆☆☆ |
仕事ぶり: |
☆☆☆☆ |
フレッシュ: |
☆☆☆☆ |
2006 Fender Custom Shop
1999年にプレイヤーとしてだけではなく、楽器制作の情熱からFender社の門を叩き、カスタム・ショップの一員となるデニス・ガルツカ氏は、既に家具職人として素養があり、その実績から頭角を現すこととなります。元々、ドラム・プレイヤーとして実演し、ベース制作においてはベースプレイの側面から分析が行われ、その評価は世界的なものへ飛躍致します。1960年仕様のJazz Bassを氏の解釈で仕上げられた、現在Fennder最高峰のマスタービルダーモデル。
※ Guitar Play:高橋 司
夢を買うなら高くはない
名盤続出の60~70年代、そのサウンドは普遍性があり流行りに左右されることもありません。なぜならエレクトリック・バンドにとって、エレクトリックベース・サウンドの原点でもあ り、現代ミュージックの概ねは既に'60年代に確立されている為と言っても過言ではありません。当時のアルバムが今だに売れ続け、且つ新たなファン層を獲得している事実に裏付けられます。 あのミュージシャンが使っていた、あの年代のモデル......や色。 同じ音が出るわけではありませんが、雰囲気......やステータスですよね。
プレシジョン・ベースは、国内で当時20万円弱、ジャズ・ベースは23万円程、サラリーマンの当時初任給が3万円ぐらいの時代、山手線新宿~原宿で10円、ラーメン1杯35円の時代、この破格な楽器が日本のアマチュアプレイヤの手に渡り始めたのが1977年以降と聞きます。
当時に作られたものだけが持つサウンド、質感以外にも匂いといった感覚的な重みが重なり、Vintage価値を高めます。
少年の時代に聞いたアルバムは、いつでも安心感を齎してくれます。Vintageオーナーになるとは、単に楽器を所有するだけでなく、当時の空間も手に入れるということかもしれません。ベース・プレイヤーにとっては、贅沢な"至高のステータス"ですね。 それでも、一生のお買い物してみませんか。