アコースティック・フロア特別研究 / アコースティック用ピックアップ特集 - TC楽器 - TCGAKKI

ある日のアコースティック・フロアでのこと。

ぷるるるるぅ~(電話の音)

アコースティック・フロア

担当:田部(以下T)

「お電話ありがとうございます!! THE中古楽器屋アコースティック・フロアでございます!!」

お客様(以下O)

「お忙しいところ恐れ入りますが、少々お伺いしたいことがあるのですが…」

 

T

「はい!! どういったご用件でしょうか?」

O

「アコギのピックアップのことなんですが、今はFishmanのRare Earth Blendを付けているんですが、どうも音に満足が出来なくて…」

T

「なるほど。ギターのブランドはどちらですか?」

O

「Martin D-28です」

T

「何年製ですか?」

O

「'74年製です」

T

「どのようにお気に召さないのでしょうか?」

O

「ん~何と言ったらいいんでしょう、エアー感があって音色自体は気に入っているんですが、バンドとかになると中音ばかりが目立っている感じで、ハウリングも多いんですよね」

T

「言うまでもなくMartinもFishmanも優れたブランドですが、Rare Earth Blendはマグネティックにコンデンサ・マイクを追加したタイプですので、そのコンデンサ・マイクがギターの生鳴りを拾いすぎてしまっているのかも知れないですね。'70年代のMartinですと、かなり箱鳴りしていると思いますので。バンドの時はハウリングの少ないマグネティック・タイプの方がベストですが、音色に好みが分かれますね」

O

「ピエゾ・タイプはどうなんでしょうか?」

T

「ハウリングは少ない方ではありませんが、音色は良いかも知れませんね」

O

「なるほど…店員さん的にお勧めのピックアップはありますか?」

T

「Fishman以外ですと…L.R.BaggsやB-Band辺りがお勧めでしょうか」

O

「それぞれどういったところがお勧めですか?」

T

「L.R.Baggsに関しては、山崎まさよしさんやスガシカオさんも愛用しているリボン・トランスデューサーというインブリッジ・ピエゾがお勧めですね。アタック感が少なく、よりアコースティックな音色が人気です。スタジオ・ミュージシャン系に人気のB-Bandは、0.4mmという薄さのピエゾなので、生音への影響が少ないのが魅力になっているみたいですね」

O

「僕のMartinもそういったピックアップに替えたら、完璧になるでしょうか…? プリアンプも色々試してみたんですが、今ひとつで…」

T

「ハウリングや音質はアコギ用プリアンプで、ある程度、調整出来ますが、限界はあると思うんですよね。ですので、やっぱりピックアップ自体を交換された方が良いのかも知れませんね。ただ、ピックアップはやはりギターとの相性なんかもありますから、 その辺が難しいところではありますが…」

O

「そうなんですよね。付けてみないと分からないっていうところがありますよね…お忙しいところ、ご丁寧にありがとうございました。参考にさせて頂きます」

T

「いえいえ、とんでもございません! こちらこそありがとうございました。又の御連絡お待ちしております!! 失礼いたします」

ピッ(電話を切る音)

 ん~、お客様のご質問にお答え出来たように見えて、完璧にはお答え出来ていないことに気付く私。ギター本体に関するご質問は無論、完璧にお答え出来ると自負していますが、アコギの後付けピックアップとなると、少々勝手が違います。いくら最高のギターとピックアップを持ってきても相性が悪ければ話になりませんし、ピックアップを付けたことによって生音が殺されてしまっては本末転倒です。さらには、プリアンプやアンプなどとの因果関係もあるので、一概に「これが正解!」と申し上げられないのが、自分としては非常にもどかしい限り。
 そこで、上記のようなお問い合わせが絶えない昨今、お客様のお悩みを解消すべく、そして自身への不満も解消すべく、「アコースティック用ピックアップ」を色々な角度から研究・検証してみようと思い立ちました。単なるピックアップの紹介や特性だけに止まらず、プリアンプやアンプ、はたまた材の振動に至るまで、長いスパンで言及出来たらと考えていますので、お付き合い頂けたら幸いです。

 さて、序章となる今回は、基本となるアコースティック用ピックアップの種別「インブリッジ・ピエゾ・タイプ」「貼り付けピエゾ・タイプ」「マグネティック・タイプ」を纏めてみました。その他に「コンデンサ・マイク・タイプ」もありますが、このタイプはピエゾやマグネティックにブレンドする場合が多いので、ピックアップの種類や音色の違いなどを言及したいと考えている次回にて詳しくご説明したいと思います。

 

インブリッジ・ピエゾ・タイプ

 ブリッジ下にピエゾ・ピックアップを内蔵したタイプ。ピエゾ(Piezoelectric Element)とは圧力や振動を電圧に変えることができる圧電素子で、これによりブリッジが受けた弦振動を電気信号として出力することが出来ます。これは電荷を帯びた結晶(セラミックなど)に圧力をかけることにより、それまで不規則に混在していた電荷のプラス・マイナスの流れを整合させ、電気信号を生じさせるという仕組みを応用したものです。こうした素子をブリッジ下に内蔵することにより、ブリッジの振動をよりダイレクトに出力させることが可能で、Ovationを初めとするほとんどのエレアコでこのタイプのピックアップが使用されています。
 特徴としてはブリッジ下でダイレクトに音を拾うためシャープでアタックの明確なサウンドとなります。また、ボディの共振などの影響を受けにくいためハウリングにも強く、大きな音量のアンサンブルでも干渉を受けにくいというメリットもあります。しかし、逆に音自体のキャラクターが強いため、いわゆる「ピエゾくささ」があるのも事実で、アコースティックならではの豊かな胴鳴り感などをそのまま再現するには限界がありそうです。「ナチュラルなアコースティック・トーン」ではなくとも、「良いエレアコの音」を求めるのであれば最も使い勝手の良いタイプと言えるでしょう。


 最近ではソリッド・タイプのエレキ・ギターのクリーン用として搭載されているモデルもよく目にすることがあります。また、弦ごとに独立した6つのピエゾを内蔵することで、各弦の音を独立して出力させることも出来、ギター・シンセのドライヴァーなどとしても使用されています。

 

貼り付けピエゾ・タイプ

 その名の通り、ピエゾ・ピックアップを主にトップ裏面に両面テープなどで貼り付けて使用するタイプです。ピエゾの基本原理はインブリッジ・タイプと同じですが、取り付け位置がトップ材背面へと移ることにより、トップ面全体の鳴りを反映させることが出来、より自然な鳴りを反映させることが可能です。また、インブリッジ・タイプの多くがブリッジ下からトップ材を貫通して内部に配線されているのに対し、貼付タイプではアコースティック・ギターそのものの音響特性を崩さない形で装着できるため、後付け用のピックアップとしては最も人気のあるスタイルであると言えるでしょう。
 また、インブリッジ式が弦の鳴りとして最もシャープなブリッジ・ポジションの音であるのに対して、貼付式では様々な場所への取り付けが可能であるため、ギター個々の鳴りのポイントに応じた取り付けが可能です。無論、取り付け場所に関しては、ある種のシビアさが求められますが、幾多のメーカーが如何にして自然な鳴りを再現するか研究を繰り返し、最近ではトップ面のみならずブレイシングの鳴りまでも反映させることを可能にしたモデルも開発されています。L.R.Baggsのi-Beamなどはこのスタイルで最も人気のあるモデルと言えるでしょう。


 さらに、これはインブリッジ式にも言えることですが、ピエゾ・タイプのピックアップは出力する信号量が極めて小さいため、アンプに接続して音を出すためにはプリアンプが必要になります。外付け式のプリアンプも各種販売されていますが、楽器の音響特性を破壊せずに内蔵させるために、エンドピン・ジャックとプリアンプが一体化したモデルが主流になっています。

 

マグネティック・タイプ

 通常のソリッド・タイプ・エレクトリック・ギターのピックアップと同じ原理による、トラッドなスタイルのピックアップです。ピックアップのマグネットが弦振動を直接キャッチして出力するスタイルで、主にサウンドホールに取り付けて使用するモデルが主流になっています。
 一見、弦振動しか反映されないのであればエレキ・ギターと同じではないか?という不安もあるかも知れませんが、弦振動とは共鳴するものがあって初めて音になっているわけであり、弦振動だけでもマテリアルの共鳴感はあるレベルにおいて反映されます。例えば、弦だけ両手で引っ張ってそれを弾いても楽器の音がしないことからみても、弦が鳴ること自体がボディの音を反映していることは確かです。故に、弦振動を出力するだけでも相応に楽器の音は反映することは不可能ではありません。無論、それでどこまで胴鳴りやハーモニクスまで再現できるかは別問題で、当然ながらアコースティック・ギターらしいサウンドではありますが、ナチュラルなアコースティック・トーンそのものとはまた別物と考えた方が良いでしょう。
 マグネティック・タイプの音の傾向としては、やはり弦振動自体がメインとなってくるため、アタックが目立ちやすくパーカッシヴなサウンドになる傾向が強いようです。また、エレクトリック・ギター的なエッジ感も強調されるようです。最近では各種メーカーがこのような特徴を踏まえた上で、よりナチュラルなトーンに仕上がるように開発を続けており、多くの有名アーティストが使用するSunriseやFishmanといったメーカーに人気が集中しているようです。


 マグネティック・タイプのメリットとしては、まず取り付けが簡単でギター本体の加工をほぼ必要としないこと、通常のエレキ・ギターと同じ出力レベルを持っているため、プリアンプなど無しでそのままアンプに接続して使用出来ることなどがあります。また、ハウリングにも強いため、日頃アコギを弾いているけど、ロック・バンドの中でもそのまま使いたいというようなヴォーカル・ギター・タイプのプレイヤーの方などには特にお勧めです。

 

 

Applied Microphone Technology

 20年近くもの間、マイクロフォンの開発を続けてきたアメリカのApplied Microphone Technology社。ミュージシャンの奏でた音そのままをリスナーに届けるという信念の下、あらゆるジャンルに適したモデル全てがハンドメイドで生産されている。数多くのビッグネーム達が愛用していることが裏付けるハイ・クオリティ・ブランドです。アコースティック・ギター用の他にも、管楽器や弦楽器、ピアノ、打楽器に適した物も数多くラインナップしている。

■ Acoustic Guitar Microphone Syste

AMT S15GBP42

 

 アコースティック・ギター・サウンドをフィードバックせず最適なゲインで集音出来るように、"カーディオイドの指向性"を考慮しデザインされたというコンパクト・サイズのコンデンサ・マイクロフォン。アコースティック・ギター専用のマウンティング・クランプでボディ外側に挟み込んで装着。挟み込めるボディの厚みは最小76.2mmから最大149mmの間で調整可能。フレキシブルに可変可能な150mmの長さのグースネックが装備されており、プレイヤーの望むアコースティック・ギターのベスト・サウンドを集音するためのマイク位置を容易に追求出来る構造。このグースネックは、航空機で使用される陽極処理が施されたアルミニウム素材を使用し、耐久性と耐腐食、軽量化に優れているとのこと。マイクロフォン自体は4点止めサスペンション・リングによってプレイ時のハンドリング・ノイズを軽減出来るようにデザインされている。ベルト・パック・タイプのプリアンプBP42に接続、ヴォリューム・コントロール装備でプレイヤーによる音量調整やケーブルのセットアップが可能。

参考標準販売価格99,750円

■ AMT S15G-STUDIO with AP40 Floor Preamp

 

          AP40 Floor Preamp

 

 S15Gとフロア設置タイプのプリアンプAP40とによって構成されるアコースティック・ギター用カーディオイド・マイクロフォン・システム。S15Gに付属しているベルトパック・プリアンプBP40がAP40に置き換わったタイプ。AP40は9Vバッテリーもしくは外部からの48Vファンタム電源によって駆動、マイク・レベルをロー・インピーダンスに返還して出力すると共に、S15Gに最適なフリーケンシー・カーブを作り出すという。ライヴ時にフィードバックさせずにゲインを十分かせぎ、最も自然なサウンドを再生。プリアンプのアウトプットは、XLR端子からロー・インピーダンスのバランスで出力され、マイク・レベルで信号は伝送。スタジオ録音において、エンジニアが求めるプロフェッショナル・レベルのセッティングとサウンド・コントロールが可能。リー・リトナーも愛用の一品。

参考標準販売価格109,500円

■ AMT S3G-STUDIO with AP40 Floor Preamp

AMT S3G

 

 ボディ内部に装着可能なS3Gは、オムニパターンの指向性でギター内部のサウンドを集音するコンデンサ・マイクロフォン。S15G同様、フレキシブルでスムーズな可変が可能なグースネックを採用、プレイヤーの望む最良のマイク・ポジションにマイク位置を固定可能。S3Gはベルト・パック・タイプのプリアンプBP42を使用、パット・メセニーも愛用のS3G-STUDIOにはフロア設置タイプのプリアンプAP40を装備。

S3Gの参考標準販売価格89,775円

AMT S3G-STUDIOの参考標準販売価格99,750円

 

B-Band

 新素材のトランスデューサーと高性能なプリアンプ・システムで、ラリー・カールトンやスティーヴ・ヴァイ等の数多くの一流ミュージシャンに愛用されているフィンランド製B-Bandピックアップ。何と言ってもB-Bandのセールス・ポイントは、生音への影響を軽減する極薄素材によるピックアップにある。繊細かつ丁寧な仕事が生み出したクリアかつ芯の太いライン・サウンドが魅力の人気ブランドである。

■ Under Saddle Transducer

 独自開発のB-Band素子(EMF特許)を採用し、その厚さは0.4mm。驚異的な薄さにより、生音への影響を極限まで軽減するという画期的なピックアップ。 クリアかつ芯の太いサウンドが魅力でもある。

参考価格6,800円

 

■ Acoustic Soundboard Transducer

 ボディ内部、もしくはサドル部の裏側に張り付けるコンタクト・タイプ・ピックアップ。UST同様、軽量かつ極薄設計なので、生音への影響が少ないのもポイント。USTとの併用でより厚みのあるサウンドに。

参考価格6,800円

 

 

■ A2.2 XOM Preamp for Acoustic Guitar

 USTとASTの2系統のピックアップをミックス・コントロール出来るシステム。ヴォリュームとピックアップ・バランスのコントローラーは、ボディ内部のサウンドホール縁に加工無しに貼り付けることが出来る。

参考価格14,300円 

 

 USTに対応したエンドピン出力端子とヴォリューム・コントロールの一体型プリアンプ。

参考価格10,500円

 

 

Barcus Berry

 Barcus Berry社はロンドン・フィルの奏者でもあったと言われるヴァイオリニスト、ジョン・ベリー氏とエンジニアのレス・バーカス氏の出会いにより1961年に設立されます。彼らの夢はヴィオリンを初めとする多くのアコースティック楽器の持つ鳴りや魅惑的なサウンドを電気的に増幅することでより多くの人々に届けられないかということでした。ちょうど時代はエレクトリック・ギターが台頭してきた頃で、コンサートなどの規模も拡大し、ヴァイオリンなど生の楽器の音量ではエレクトリックに太刀打ちできない状況が続いていました。そこで彼らはアコースティック楽器の持つ生のサウンドをそのままに電気的に増幅させるための研究を重ねていきました。
 楽器の音を電気的に増幅させるためには、まずは楽器の音自体を電気信号に変換する必要が生じます。既にエレクトリック・ギターは開発されていましたが、その方式では彼らの目指すナチュラルなサウンドを得ることは困難でした。そこで1963年、Barcus Berry社は世界で初めてピエゾ・クリスタルを変換機として使用することに成功します。
 
 本特集の序章でも触れましたがピエゾ・クリスタルとは、圧電素子と呼ばれる素子の結晶化されたもので(水晶ではありません)、受けた圧力や振動を電気信号として送り出す作用を持っています。素材としては天然のものでは石英などが有名ですが近年ではセラミックなどで人工的に製造されています。

 ピエゾの発想そのものは物質と電気の関係性という観点から、18世紀の中頃から既に研究されていましたが、それが実証されたのは19世紀末から20世紀初頭にかけてでした。特定の素材の結晶に振動を与えると電気信号を発生させ、また逆に電圧を加えると振動を発生させる作用があることが確認されました。この発見も当初はまだ具体的な実用性を伴わず、物理学者の間での興味となっただけでしたが、第一次世界大戦時における潜水艦の登場により、ソナーとして使用されたことから世界的に幅広い注目を集めます。当時開発されたソナーは、ピエゾの結晶に電気信号を与えることで水中に振動を与え、そしてその振動波が対象物に当たって反射され戻って来るのをまた別のピエゾに感知させていました。こうして水中での対象物までの距離を計算することが可能になったのです。また、このような特性により、レコード・プレイヤーのカートリッジにも使用されたり、電子信号を音波(音声信号)として発信できる作用などからリモコン装置などにも使用されました。

 このようなピエゾ素子を楽器の音声変換機(すなわちピックアップ)として活用するというアイディアは、アコースティック楽器史上でも画期的な発明ということが出来るでしょう。これにより、Barcus Berry社は世界初のエレクトリック・ヴァイオリンの開発に成功、以降ギターはもちろんハープやピアノ、ウッドベースといった様々な楽器用のピックアップを発明していきました。特にギターにおいては、ブリッジ下にピエゾ・ピックアップを内蔵した"インブリッジ・タイプ"や、アウトプット・ジャックをエンドピン部に設置した"エンドピン・ジャック"などは、全てBarcus Berry社のアイディアだと言われています。

■ Maple-Bar

参考定価12,600円

 40年を超える長い歴史とジョン・ベリー氏のヴァイオリニストとしての豊かな経験が知る「生楽器の豊かなトーン」。そんなナチュラルなサウンドへの指向はこのMaple-Barにも反映されています。

 1985年、社名をBarcus Berry Electronic(BBE)と改めたBarcus Berry社は、その豊かな実績に裏付けられ音響部門へと進出していきます。そしてソニック・マキシマイザーなどで知られるサウンド・イクイプメントの中枢としても、コンサート会場やレコーディング現場では不可欠な存在となっていきました。現在も世界中のテレビ、ラジオなどの放送局やほぼ全てと言って良いほどのレコーディング・スタジオで音の基本的存在として絶大な信頼を受けています。


 

 

Bill Lawrence

 日本でBill Lawrenceと言えばエレキ・ギターのブランドとしての認知が高いかも知れませんが、元々は現代のピックアップの基礎を築いたとも言えるピックアップ・デザイナーの名前に由来しています。(Seymour Duncanのギター/ベースを日本の輸入代理店が製造しているのに近いですね) ビル・ローレンス氏は、特にエレクトリック・ギターにおいて、ピックアップを交換することでサウンドを向上させるという概念を築いた「リプレイスメント・ピックアップの父」と形容されるべき人物です。

 ビル・ローレンス氏はドイツのケルンの出身で、子供の頃からヴァイオリンを演奏していましたが、中学生の頃に自らの自転車にエンジン式のプロペラを取り付けて空を飛ぼうとして失敗。その怪我によりヴァイオリンの演奏が困難になります。しかし、まさに怪我の功名と言うべきか、ヴァイオリンを続けることができなくなった彼は当時流行り始めたエレクトリック・ギターに興味を持ち始めます。バーニー・ケッセルやレス・ポールの音楽に熱中していた彼はエレクトリック・ギターにのめり込むと同時に、既に自分のエレクトリック・ギター用のピックアップを製作します。第二次大戦後間もない1948年のことでした。フェンダー初のエレクトリック・ギター"ブロードキャスター"が世に出る前の時代に、一人のギター少年がピックアップを自作していたとは…如何に先見的な感性を持っていたかが覗えます。そして'50年代、ギター・プレイヤーとしても既に秀逸だった彼は、ヨーロッパの米軍キャンプでの演奏を中心にプロ・ギタリストとしてのキャリアをスタートさせます。ギター・プレイヤーとしての彼の評判は瞬く間に広がり、ドイツのFramus社とエンドゥース契約を結びます。そして'60年頃には愛用していたフェンダーから、エンドゥーサーに加えられるほどの華々しい活躍ぶりでした。

 '60年代中頃、ビルはドイツにLawrence Electro Soundという会社を設立し、エレクトリック・ギター用のピックアップの製造を開始します。'60年代後半ニューヨークに渡った彼は新たにエレクトリック・ピアノを開発。これがスティーヴィー・ワンダーやマイルス・デイヴィスに評価されるなど大変な注目を浴びました。また彼は、ギター・デザイナーのダン・アームストロングとも共同製作を行い、ダンが当時Ampegと共にデザインしていたクリスタル・ギターのピックアップを開発します。ビルはこの頃、ダン・アームストロングの工房にしばし滞在しピックアップの開発を続けますが、それを手伝っていたのがダンの息子ケント・アームストロングでした。また近所の少年達もアームストロングの工房を訪れ、ビルのピックアップの開発風景を興味深げに眺めたりしていましたが、その中の熱心な一人にラリー・ディマジオがいました。ビルのクラフトマンシップはこうした彼らにも受け継がれ、DiMarzio、Kent Armstrong共に今日では第一級のピックアップ・メーカーとして世界中のあちこちの楽器でその姿を見ることができます。

 こうしたビルの評判はやがて、当時アメリカ最大のギター・メーカーだったGibson社の耳に入り、Gibson社は彼をカラマズーへと招きます。カラマズーへ移ったビルは新たなピックアップの製作を開始。彼が新たに開発したピックアップを搭載したS-1、L6-S、Marauder、Ripper Bassなど先鋭的なニュー・モデルが次々と生み出されていきました。

 '70年代も中盤に差し掛かる頃、ビルは友人だったチェット・アトキンスの誘いでナッシュビルへと移住します。そしてビル・ローレンスの名を世界的に知らしめることになる二つの傑作を生み出します。ひとつはエレクトリック・ギター用ハムバッキング・ピックアップの"L-500"。そしてもうひとつがアコースティックギター用サウンドホール・ピックアップの"FT-145"でした。これらは30年以上の時代を経た現代にあっても尚、幾多のプレイヤー達から愛され、今も変わらぬ姿で生産されています。ヴィンテージとしてではなく、あくまで「現行」モデルとしてこれだけ長く作り続けられているピックアップが他にあるでしょうか。

■ Bill Lawrence FT-145

参考定価9,450円

 サウンドホールにワンタッチで脱着できる便利さに加え、レスポンスに優れながらも太く暖かみのあるトーンは時代を超えて愛され続けている。エリック・クラプトンの来日公演でも使用された他、マイケル・ヘッジスやU2のエッジなど愛用者は多い。ノイズが少ない点も魅力的。

 21世紀に入って、ビルはFender社より顧問として招かれ、ロスコー・ベック・シグネーチャー・モデルのベースを初めとするニュー・モデルのピックアップの開発に携わりました。そして現在もビルはWildeやKeystoneなどのブランドでピックアップの開発を続けています。決してヴィンテージ・リイシューではなく、常に新しいものを作りだそうとするクリエーターとしてのポジティヴな視線、そしてあくまでプロのギター・プレイヤーの立場で「正しい音」を追求しようとする真摯な姿勢は常に変わることなく、だからこそ幾多のビッグ・ブランドが彼に師事し、そして彼が作り出すトーンを愛したのでしょう。自転車にエンジンをつけて空を飛ぼうとした少年だったビル・ローレンス。そんな彼のチャレンジングなキャラクターは終始変わらず、今この瞬間にも新しい何かを作りだそうと企んでいるに違いありません。

 

 

 

Fishman

 1981年にラリー・フィッシュマン氏によって設立され、現在はアメリカ・マサチューセッツ州のウィルミントンに工場を構えるFishman Transducers社。
 '80年代当時、ボストンでジャズ・ベーシストとして活動していたラリー氏は、ステージにおけるベース・サウンドのピックアップ/増幅にフラストレーションを感じており、自ら開発に着手。そして試行錯誤の末に完成させたのが、現在のアップライト・ベース用ピックアップ「BP-100」だという。その「BP-100」がユーザーに高い評価を獲得したFishmanは、次にプリアンプ付きのギター用ピックアップを開発する。それがGuild社のギターに採用され、Martin社用に開発したインブリッジ・サドル・ピックアップのリアルなアコースティック・サウンドの実現がFishmanを名門ピックアップ・ブランドへと導いたのである。


 プレイヤーと楽器製作家の両面の意見を充分に取り入れた開発方法や、ステージ・テスト等の入念な研究を経て完成されるFishmanピックアップ。今後のニュー・モデルにも期待される名ブランドのひとつだ。

Acoustic Matrix Series

 イン・ブリッジ・タイプのピエゾ・ピックアップとプリアンプをマウントしたエンドピン・ジャックのセット。9Vバッテリー使用する。

■ Acoustic Matrix Natural I

 低音部を軽くブーストした構造になっており、オーディトリアム・ボディ・タイプやナイロン弦ギター等に適したモデル。小~中規模のステージでの活用に向いているようだ。
参考定価21,000円。

■ Acoustic Matrix Natural II

 ドレッドノウト・ボディ・タイプ等のパワフルなサウンドを奏でるボディ・スタイルに適したモデル。フィードバックにも強いようで、大音量の増幅にも優れているらしい。

参考定価21,000円

Ellipse Pickup System

 2004年末にMatrix Natural I/IIプリアンプの追加アイテムとして発売されたモデル。Martinギターのエレクトリック・アコースティック・モデルの標準EQとして搭載されている人気のシステムのひとつだ。

■ Ellipse Matrix Blend

 Matrix Natural I/IIに加え、マイク、コントロール、アウトプットがフルセットとなったシステム。コントロール・ユニットをサウンドホールの内側に装着、手元で微調整が可能。ヴォリューム、マイク&ピエゾ・ブレンド・コントロール、フェイズ・スイッチを装備し、ボディ内のサウンドを集音するグースネック付きマイクロフォンがより生音に近いニュアンスを出す構造。
参考定価42,000円(Ellipse Blendのみの参考定価は17,850円)

■ Ellipse VT

 Ellipse Matrix Blendのマイクロフォンを取り除いたモデル。コントロールはトーン、ヴォリューム、フェイズ・スイッチの3つ。
参考定価28,875円

Rare Earth Series -Active Magnetic Soundhole Pickups-

 サウンドホールに装着タイプのマグネティック・ピックアップ。ネオジウム・マグネットを使用し、サウンド・バランスには定評有るようだ。エンドピン・ジャックも付属しており、恒久的な取り付けも可能。ボタン電池を使用する。

■ Rare Earth Single Coil

 ライトかつブライトなサウンドが特徴のシングル・コイル・ピックアップ。
参考定価26,250円

■ Rare Earth Humbucking

 外部ノイズに強く、太いサウンドが魅力のハムバッキング・タイプ。本体サイド部にミニ・ヴォリューム・コントロールを付属しており、サウンドホール部から容易に音量の微調整が可能。
参考定価35,700円

■ Rare Earth Blend

 ハムバッキング+コンデンサー・マイク仕様。ピックアップによるアタック感とボディ鳴りをブレンドさせて空間的なサウンドを造り出すシステム。グースネックのマイクですので、好みの位置に調整可能。各マイクのバランスは本体のブレンド・コントロールで調整する。
参考定価60,900円

■ Rare Earth Custom Blend

 Rare Earth Blendと同じ構造ながら、コンデンサー・マイクの位置をボディ内部と外部で付けかえることが出来るシステム。
参考定価66,150円

■ Neo-D Magnetic Soundhole Pickup

 シングル・コイル仕様のパッシヴ・タイプ。アクティヴ・タイプに比べてパワーは少々劣るが、繊細でピュアなニュアンスが魅力のモデル。
参考定価13,650円

 

 

Highlander

 山崎まさよしさんや坂崎幸之助さん、堂本兄弟さんらの愛用で有名なVG Guitarの標準装備ピックアップとしても知られるHighlander。ベーシック・スタイルの「IP-1」は、インブリッジ・ピックアップと、エンドピン・ジャックと一体化したプリアンプから成っており、その構造は実に画期的かつ優れている。
 粉末圧電素子と合成ゴムから出来ている直径2mmのインブリッジ・ピックアップは、柔軟性に優れており、サドルからのみの弦振動だけでなく、ボディとブリッジ自体からの振動も集音し、よりアコースティカルなライン・サウンドを実現。超ロー・ノイズ・ギター・エレクトロニクスの研究によって生み出されたというプリアンプ回路は、オーディオの専門家によって最も歪みが少ないと認知されている“A級動作”とのこと。また、周波数特性、インピーダンス、ピックアップの感度を調整する機能も内蔵されており、高音域が強調されがちなピエゾ・ピックアップの特性を、中~低音域のある太く艶やかなサウンドに仕上げているそうだ。
 弦&ボディ鳴りをロー・ノイズかつ最高な状態で増幅・出力させることが出来る優れたピックアップとして高評価を得るブランドである。

■ IP-1

参考定価32,550円
【IP-1V(ヴォリューム付き)参考定価39,900円】

■ IP-2

 IP-1にインプット・ジャックを追加したタイプ。マグネティック・ピックアップやコンデンサー・マイクを接続することにより、よりリアルなアコースティック・サウンドを再現出来るシステム。
参考定価35,700円

■ Internal Mic/Internal Mic SA

 ギター内部のブレイシングにクリップで装着、IP-2の追加インプット・ジャックにマイクのプラグを差し込み、電源の供給が可能なモデル。
Internal Mic SAは、インターナル・マイクのみの使用のためのモデルで、エンドピン・ジャックとバッテリー用スナップをセットしたタイプ。
参考定価35,700円(SAの参考定価は45,150円)

■ IP-1X

 ボディ内部にバッテリーの設置が難しいギター用の外部電池ボックス(専用ケーブル付き)。
参考定価50,400円





L.R.Baggs

 従来のギターに科学的なアプローチを施した革新的なギター製作家ロイド・バッグス氏。1976年から'83年までに彼によって造られたギターはジャクソン・ブラウンやライ・クーダー、ジャニス・イアン、グラハム・ナッシュら著名ミュージシャンによって愛用されたという。ギターの振動、共鳴やダイナミクスに関するロイド氏の知識とノウハウは、ギター・アンプリフィケイションの技術・企画・製作に反映され、LB6、Ribbon Transducer、X-Bridge、iBeam、Elementピックアップ等の独創的かつ革新的な製品を生み出す。ピックアップ機能だけでなく、ギターやアコースティック楽器を熟知していることが、L.R.Baggsピックアップの人気に繋がっているのかも知れない。

Piezo

・iBEAM

 パテントの特殊構造のピエゾ力学を応用した新発想のピエゾ・ピックアップ。ジャクソン・ブラウン等のアーティスト・ツアーでロード・テストも含み2年の開発期間をかけ、「いかにマイクで拾った音に近づけるか」をテーマに実現されたという。ブリッジの穴開け等の加工無しでボディ内部のトップ材(サドル下)に貼り付け装着。トップ材の振動を忠実に拾い、生音に近いサウンドそのままを出力。重量は10gと超軽量のため、ギター本来のサウンドに悪影響を及ぼさない構造。

■ iBEAM Passive

 ピックアップとエンドピン・ジャックだけのシンプルなシステム。もう1つのピックアップを増設出来るステレオ・ジャック仕様。
参考定価20,475円

■ iBEAM Active

 サウンドホール縁に取付け、手元で音量調整が出来るヴォリューム・コントローラー付。プリアンプ付きなので、取付け後あらゆる機器にそのまま出力出来る。
参考定価30,975円


■ iBEAM Classical

 その名の通りクラシック・ギター用ピックアップ。表甲裏のセンター・ブレイシングをまたいで取り付け。内部ブレイシング構造により、取り付け不可なギターもあるようなので要注意。
参考定価32,550円

■ element

 フィードバックに強いライヴ向き。バンド・サウンドの中でも音が埋もれず存在感のあるライン・サウンドを出力出来るのがセールス・ポイント。コスト・パフォーマンスに優れたアクティヴ・タイプのアンダー・サドル・ピックアップ。
参考定価23,100円

■ RT-System2

 リボン・トランスデューサーのプリアンプ付システム。専用プリアンプにはディスクリートA級回路というシステムを採用しており、サウンドは驚く程にナチュラルとのこと。
参考定価29,925円

■ LB-Series

 L.R.Baggsの記念すべき最初のパッシヴ・タイプのピエゾ・ピックアップ。樹脂成形のサドルとピエゾ素子の一体型。LB-6はスティール弦用、LB-Cはクラシック用。
参考定価18,900円

■ Ribbon Transducer

 '95年に発表され、L.R.Baggsの技術とそのサウンドの評価が決定づけられたモデル。フィルム・タイプのパッシヴ・タイプで、ピエゾとエンドピン・ジャックのシンプルなセット。スティール弦はもちろんのこと、ナイロン弦やウクレレなどにも対応のロングセラー・モデル。
参考定価18,900円

Dual Pickups

 アコースティック・ギターのサウンドを録音する際は、サウンドホール付近にマイクを立てて集音するオンマイクと、ギターから1~2m離してセットするオフマイクで両者の音をミックスする方法が一般的とされています。ライヴ時にその効果を得るために開発されたシステムがDual SourceとiMIX。

■ Dual Source

 2ピックアップによるブレンド・サウンドをリーゾナブルな価格で実現させた画期的なシステム。ナチュラルなサウンドで人気のリボン・トランスデューサー(パッシヴ・タイプ)と、ボディ鳴りの自然なエアー感を感知するコンデンサー・マイクをMIXコントロールして出力。より臨場感のあるアコースティカルなライン・サウンドが魅力です。
参考定価50,925円

■ iMIX

 2004年に発表されたニュー・ヴァージョンのデュアル・ピックアップ・システム。エレメント(アクティヴ・タイプのアンダー・サドル・ピックアップ)と、アイビーム(ボディ内部のブリッジ下に装着タイプ)をMIXコントロールして出力。よりレンジの広いパワフルなライン・サウンドで、フィードバックに強いところもセールス・ポイント。根強い人気のGodinギターにも採用されている。
参考定価54,600円


Magnetic

■ M1

 Tri-Axial Dynamic Technology(フィードバックを抑えつつ弦とボディの両方の振動をキャッチ)という技術の採用により、ナチュラルなサウンドを実現させたマグネティック・ピックアップ。過酷な条件でもハム・ノイズに強いハム・キャンセル仕様。アクティヴ・タイプには工具なしで簡単に脱着が可能なリチウム電池"CR2032"を使用し、小型電池ながら1,000時間の使用が可能。
パッシヴ・タイプの参考定価30,975円、アクティヴ・タイプの参考定価36,750円

 

 

Shadow

 Shadowピックアップで知られるShadow Electronics社は1971年にドイツで設立されました。創設者のジョー・マリニク氏は本国では有名なギタリストで、ブルース・バンドやジャズ・バンドを率い、多くのテレビやラジオのショーなどでレギュラーをつとめていました。名高いプロ・ギタリストとしての実績が豊富な一方、既にティーン・エイジャーの頃にギター・アンプを製作するなど、エレクトロニクスにも深い興味と造詣を持っていました。こうしてギター・プレイヤーとしての視点と、そしてそれを実際に形作るエンジニアリングによりShadowピックアップは開発されて行きました。
 '70年代初頭にはインブリッジ・ピエゾとマグネティック・ピックアップをブレンドさせた「Doubleplay」を発表。ピエゾとマグネティックそれぞれの良さを活かしつつ、拾いきれない領域を互いにカヴァーしあうことで、単独のピックアップだけでは再現できないトーンを可能にしました。この「Doubleplay」というシステムは現在にも受け継がれ、されに進化した形で生産されています。
 また、さらにマイクを加えたブレンド・システムなどにより、ギターはもちろんヴァイオリンやマンドリン、ウッドベースや民族楽器まで幅広い楽器のトーンの再現に成功し、今日では年間で100万個以上のピックアップを製造するビッグ・ブランドとなっています。

■ NanoMAG

 厚さ6mm、幅5mmのコンパクトなサイズにアクティヴ回路までを密封したマグネティック・ピックアップ。指板のエンド部にマウントし、ノイズが少なくフィードバックに強いサウンドを得ることが出来る。
参考定価25,200円

■ Nanoflex

 インブリッジ・タイプのピックアップ。通常、ブリッジ下に置かれたピエゾは上からの弦振動を拾うが、このNanoflexは複数の圧電素材の組み合わせにより、上方だけでなく、ブリッジ下方向へもセンシティヴィティを持つ。それによりブリッジ上の弦振動だけでなく、トップボードやブレイシングの持つトーンまでを音に加味することが出来る。
参考定価22,050円

 NanomagとNanoflexのトーンをミックスして使用することが出来る、Sonic Doubleplayプリアンプ・システム。
参考定価47,250円 

 

 

 

Sunrise

 海外ではローリング・ストーンズ、U2、ボニー・レイット、ディヴィッド・リンドレー、ジャクソン・ブラウン、ライ・クーダー、リチャード・トンプソン、エミルー・ハリス、レオ・コッケ、ウィリアム・アッカーマン、ピーター・フィンガー、ベン・ハーパー等。国内では中川イサトさん、小松原 俊さん、増田俊郎さん、大塚まさじさん、岸辺眞明さん、小川銀次さん、押尾コータローさん等の著名アーティストに愛用されるマグネティック・ピックアップ・ブランドSunrise。

 1978年にロサンゼルスのショップでリペアマンとして働き始め、'84年に独立、ギター・リペア・ショップをオープンさせたジム・カウフマン氏。かねてからピエゾPUのブライトながらも低高域の周波数特性に難を示し、マグネティックPUのサウンドに惚れ込んでいた彼は、'78年にSunriseマグネティックPUの原型を完成させる。それは彼が理想とする「高いフィードバック・スレッショルド(スピーカーの干渉を受けてフィードバックや共振が発生するポイント)を持ち、 なおかつギターの音像的キャラクターを失わないマグネティックPU」に近いものであったが、PUには付きもののノイズを打ち消すことは出来なかったらしい。数年に亘り研究を重ね、PU内部で適切な形でアースを取ることによってノイズを抑えることに成功、今現在の仕様に落ち着いたのは'80年代後半のことだったいう。

■ Sunrise S-2

参考定価50,400円

 Sunrise PUの完成の裏にはもうひとつ重要なファクターがあった。リペアマンということもあったジム氏はニール・ヤングやジェイムス・テイラー、ジャクソン・ブラウン、ダン・フォーゲルバーグ、スティーヴン・スティルス、デイヴィッド・クロスビーといった著名ミュージシャンを顧客としていたため、彼が作った製品をそのミュージシャンらに試して貰う機会に恵まれていたのである。

 アコギの音を電気信号に変換するために磁力とコイルを利用しているマグネティックPU。全属弦の振動(音)がコイルに電流(電気信号)を発生させて、それを出力しているという原理だが、使われる磁石の素材や、その磁石に巻き付けるコイルの太さや巻数等によって個体差が生まれるのは言うまでもない。Sunriseは、多くのブランドで大量生産される規格品とは異なり、ジム氏本人が全て手作りでクオリティを保持しているという。
 また、サウンド面での特徴として上げられるのが、高精度の低音再生。特にドロップさせた低音弦の音をパワフルに再現し、トップ振動までを拾うレスポンスに優れているところが、変則チューニングを多用するフィンガーピッカーに愛用される最大の理由なのでしょう。

 

 終わりに

 お蔭様で大好評の本特集。この企画に対する、かなりのアクセス数からも、ユーザーの方などの興味の程を窺い知ることが出来ます。

 さて、三回目となる「第二章」では、これまでとはちょっと趣向を変えまして、リアルな現場の声をお届け致します。

 アコギ用ピックアップを販売・製作する側、取り付けるリペアマン側、実際に使用しているユーザー側・・・とても気になる各方面の率直な意見を耳にすることで、答えが見えにくいアコギ用PUの要点に近づければと思った次第です。

 販売・製作する側には'96年創業以来、プロ&アマに拘らず、アコギに関するエキスパートとして活躍され、アコギ用PU『Highlander』の代理店としても知られる『Acoustic Guitar Pro Shop - Birdland』の代表である小貫 悟さん。リペアマン側には『Ovation』の代理店として有名な『中尾貿易』で長年リペア&調整担当として勤務、現在は自身の工房を構えるベテラン・リペアマン皆川隆行さんのインタビューをメインに掲載。そしてユーザー側として、当店のお客様の貴重なご意見を公表します。

 それでは本編をお楽しみ下さい。

 

'96年の創業以来、アコースティック・ギター全般のプロ・ショップとしてサービスを展開する『Acoustic Guitar Pro Shop - Birdland』の代表 小貫 悟さん。アコギ用ピックアップの代表ブランドのひとつである『Highlander』を始め、純国産ギター『Tears Guitar』や独自で開発したOBP(Birdland On Board Piezo Pickup)を販売、アコギ・シーンのエキスパートとして活躍されている人物だ。
 小貫さんとこれまでメール等でやりとりさせて頂いている中で、個人のお客様やプロ・ミュージシャンからアコギ用のPUに関しての相談が急増していることを知り、その辺の詳しい状況を伺うと同時に、実際にPUを販売・製造されている現場側の率直なご意見をお訊きするため、豊島区に会社を構える『Birdland』の小貫さんを訪ねた。

田部(以下T):『Birdland』さんでは『Highlander』ピックアップ(以下PU)や数多くのアコギを取り扱っていますが、これまでの経緯を簡単に教えて下さい。

小貫さん(以下O):以前勤めていた会社から引き継いだのが『Highlander』とカナダ製のカールトン・ケースだったんですね。その頃は『VG』とタイアップしていて徐々に『Highlander』が広まりつつありましたけど、時が経つにつれて他のPU付きの『VG』が多く出回ってきたんです。やはり『Highlander』の音を実際に聴いて貰って、その良さを実感して欲しいという気持ちが強かったんで、いっそのこと『Highlander』付きのギターを自分で手掛けてみようと思いました。まずはスペイン製のクラシック・ギターから始めまして、ラインで出したいという方はエレキからの人も多いんじゃないかという理由で薄胴ボディのギターにPUを仕込んだんですよ。その頃は個人的にはクラシック・ギターに関してあまり知識がなかったんで、音の善し悪しで突っ込まれるとキツイなぁ~って思ってたんですが(笑)、それがかなり好評で。だったらより多くの方に使って貰おうと思い、レギュラー・サイズのクラシック・ギターにも仕込んでみたところ、さらに好評で・・・多くのプロ・ミュージシャンの方に愛用して頂けるようになりました。

 その後、『Tears Guitar』とのタイアップの話がありまして、実際にPUを乗せたところ、これが実に素晴らしかったんですね。純国産の優れたギターと『Highlander』の最高の組み合わせをプロの方にも使って貰いたいということで、杉山清貴さんや大野真澄さん(ガロ)に試して頂いたところ、かなり気に入って貰えまして。杉山さんに至っては現在では「ソロでも、バンドでも手放せない一本です」と仰る程、惚れ込んでいます。大野さんもメインで使って頂いてますし、彼はSantastic(Internal Mic Matched Preamp)も愛用しています。大野さんは現在、伊勢正三さんと太田裕美さんの三人のユニットでツアーを廻っていますが、Santasticに合うようなPAセッティングでライヴを行っているんですよ。

T:オリジナルPUのOBPを製造・販売されてますが、何故それを開発しようと思ったのでしょうか?

O:最近ではインブリッジ・タイプとマグネティック・タイプというように2種類のPUを混ぜて使う方法も増えてきているじゃないですか。インブリッジの場合は中高域の音がメインですから、それに対して如何に中低域の音を出すかというように。

インブリッジは音が埋もれず、輪郭がハッキリしているところがありますから、もう少し生っぽい音が欲しいなっていう時に・・・私はコンデンサー・マイクもお勧めしてますが、コンデンサーはハウリングという問題が付いて回るんで、それに変わるものとして性能の良い貼り付けタイプを独自で作ろうと思ったわけです。


T:OBP開発にあたっての苦労した点は何でしょう?

O:セラミックの圧電素子はどうしても高域特性だけのキンキンとした堅めの音になってしまうので、それをどう解消しようかというところで悩みましたね。そこで考え出したのが木のチップです。楽器とセラミックの間にマホガニー材やエボニー材のチップをかますことによって、高域特性からもう少し中域寄りのサウンドになるですよ。取り付ける位置にもよりまして、ブリッジ真下だとカチっとしたタイトな音になるんですが、それを少しずらすことによってもう少しフワっとした柔らかい音になります。

T:ここのところ、個人のお客様やプロ・ミュージシャンからアコギ用のPUに関しての相談が増えており、"アコギ用PUの駆け込寺"化(笑)しているとお訊きしましたが、その辺りの現状をもう少し詳しく教えて頂けますか?

O:今現在使っているPUの不満や、もう少しこういう音が欲しい、2ピックアップ・システムにしたいが電源供給はどうしたら良いか・・・持っているギターの特性を考えながらどのようなPUを勧めるか・・・ユーザーやミュージシャンの方と考えながら悪戦苦闘している状況です。

T:具体的にはどのような相談が多いですか?

O:例えば「今付いているのがパッシヴのインブリッジなんですが、何か音がモワっとしてしているんで、もう少し堅い音が欲しい」というお悩みに対しては、そのインブリッジに追加してステレオ出力でOBPを付けました。インブリッジはもともと堅めの音ですが、パッシヴだとパワー不足なので、高域が多少ぼやけます。そこで、OBPをタイトな位置に取り付けることで高音をカヴァーしました。結果的に非常にバランスの良い音になりましたね。
 でも、もっと大変なのがアクティヴ系です。アクティヴPUに何か増やしたいという相談を受けることがあるんですが、パッシヴ系のものだったらすぐに対応出来ますが、同じアクティヴ系だと厄介なんです。今使っている電池を流用するには電圧などの問題が絡んでくるんですよね。あと、ステレオ・アウトなのにミックスで出力したいという相談も受けますが、これも厄介で。(苦笑) 同じパッシヴでしたらプラグで繋げてしまえばミックス出来るんですが、そうすると音のバランスが取れないんで、その間にヴォリューム・コントロールを増設して、上手く音を足していくみたいな方法になりますね。かなり強引ですけど。(笑)

T:音色以外にも電気系統の問題がありますので、その大変さが伺えます。

O:そうですね~。(苦笑) 両方アクティヴで同じメーカーのものであればインピーダンスもわりと近いんでミックス出力も可能ですが、アクティヴとパッシヴではなかなか難しいんですよ。マッチングがしっかりしていないと。

T:音色に関してもギターとの相性とかもありますから、一概にどのPUが良いのかというのが難しいですよね。

O:今付いているPUの音の傾向を教えて貰えれば、「このPUを足してみましょう」というように、こちらとしても色々なアイディアを出しやすいですね。インブリッジと貼り付けとコンデンサーを駆使して、出来る限りお客様の要望に応えようと頑張っています。

T:そういえばGibsonのアジャスタブル・サドル用PUを作られたと伺いましたが?

O:そうなんですよ。Gibson J-45のアジャスタブル・サドル仕様に『Highlander』をマウントしたいという相談があったんですが、これが実に工房泣かせの要望でして。(苦笑) オリジナルのアジャスタブル・サドルを元に戻すこともあるので、極力、現状のままでの加工がご希望だったんです。そこで試行錯誤の末に完成したのが、この特製の象牙製サドルと着脱可能なインストール・ガイドです。インブリッジなのでさすがにアジャスタブル機能はありませんが、インストール・ガイドとJ-45タイプの象牙製サドルを如何に確実に密着させて、なおかつ均等に圧力が加えられるか・・・を考えに考え抜いて作りました。オール・ハンドメイドの苦心作です。(笑)

T:何だか凄いですね。(笑) 是非とも商品化を望みます。さて、アコギ用PUとは切り離せないもののひとつにアンプというものがありますが、『Birdland』さんではアコギ用アンプとして『AER』のBingoを販売されていますよね。その他にアコギに適したアンプがありましたら簡単に教えて下さい。

O:『ULTRA SOUND』DS4がお勧めです。

ここで小貫さんが『ULTRA SOUND』DS4と『AER』Bingoを倉庫から持ってきて下さる。そして『Highlander』HP-2とOBPを搭載した『Tears Guitar』で実際に試してみる。

T:・・・おおっ! 音がもの凄くクリアですね。レンジが広く、レスポンスも素晴らしい。

O:DS4はアメリカの『Acoustic Guitar Magazine』のアコギ用アンプ部門でゴールドを受賞したんですよ。そしてBingoはシルヴァー賞でした。DS4はとてもクリアでナチュラルなサウンドですので、ジャズ系の方にもお勧めです。アンディ・マッキーやダック・ベーカーも愛用のアンプでもあるんですよ。

T:著名ミュージシャンに愛用されてる意味が分かりますね。

O:これからさらに人気が上がるアンプだと思いますよ。

T:最後になりますが、小貫さんが『Highlander』に惚れ込んでいるところは何ですか?

O:20年弱というこの世界では長い歴史を持つPUメーカーで、その頃から海外の著名ミュージシャンに愛用されていたことが、まずは大きな魅力ですね。当時は良いPUっていうものはなかなか無かったじゃないですか。その中で確固とした人気を博していましたからね。それから何と言っても惹かれるところは、そのクオリティ。もともと開発した人はPAのエンジニアで、自分でも卓を作っちゃうような人なんですよ。最良なパーツとノイズの少ないA級動作を駆使して作られていますので、非常に高品質なんです。一体型のプリアンプで中を開けることは出来ないんですけど、これまで修理や故障が殆ど無いというのも凄いところです。

T:『Highlander』は取り付けが難しいという意見も耳にしますが。

O:そうですね、取り付け作業には熟練を擁するんです。円柱形のピエゾの中に入っている素材はゴム質のもので、それを上手く使って柔らかい音にしています。ごく初期の頃はサドル下にポンっと敷いて、音が弱いところはサドルに木を張ったり工夫してやっていたんですが、円柱形なのでどうしても弱い音の部分が出てしまいました。そこで編み出したのが、ブリッジのサドルの溝の底面をU時に切るという方法でした。そこにサドルをちょっとハミ出るくらいに嵌め込んで、上からグッとサドルを押し付けると、素材が柔らかいですからピタッと平らな面になるんですね。このインストールの方法でブリッジからの音をかなり拾うようになったんで、そのギターの持ち味を十二分に発揮出来るんじゃないでしょうか。ただ、やはりブリッジの溝切りやジャックのネジ込みなど、取り付け作業は簡単ではありませんので、そんな時はいつでもご相談下さい。在駐リペアマンが一日で即セッティングします。

『Acoustic Guitar Pro Shop Birdland』代表 小貫 悟さん

'96年の創業以来、アコースティック・ギター全般のプロ・ショップとして小売店様やユーザーの皆様にサービスを展開。アコースティック・ギター本体を始めとするハードはもちろんのこと、ソフトとしてA.M.R.(アコースティック・ミュージック・レコーズ)商品をはじめ、アメリカ『メルベイ』社の商品まで幅広く取り扱う。また、『Highlander』ピックアップの組込みを始め、アコースティック・ギターの修理&メンテナンス部門を開設。専門のスタッフがギターのコンデションやプレイ・スタイルまでアコースティック・ギター全般の相談に乗ってくれる心強いプロ・ショップだ。

http://birdlandguitars.com/

 

『Ovation』の代理店として有名な『中尾貿易』で長年リペア&調整担当として勤務、現在は自身の工房を構えるベテラン・リペアマンの皆川隆行さん。飽くまでも"お客様主導主義"に拘る良心的かつ丁寧な仕事ぶりには、プロ&アマ問わず多くのユーザーからの定評を得ている。

 皆川さんと当店は5~6年程お付き合いさせて頂いており、迅速で確実なリペアには本当に驚かされるばかり。このところ急増しているピックアップ取り付けの殆どは皆川さんにお願いしているが、取り付け後のライン・サウンドの優れたバランスに感動することもしばしば。そんな微妙で繊細な作業でもあるPU取り付けを実際に行っているリペアマン側からの意見をお訊きしたく、足立区に工房を構える『皆川ギター工房』の皆川さんを訪ねた。

田部(以下T):現在、修理の依頼でピックアップ(以下PU)取り付けの需要はどんなものでしょうか?

皆川さん(以下M):そうですね~・・・PU取り付けの依頼が急に増えたという印象はなくて、コンスタントに頼まれるといった感じですね。

T:それは全体の何割くらいですか?

M:これから増える可能性はありますけど、今のところ全体の2割程度でしょうか。

T:具体的にどのような相談を受けるのでしょう?

M:結構、お客さんの方が勉強しているので「このPUを付けて下さい」という場合が多いですね。だから今のところ相談という相談はあまりないんです。PUについては僕の知ってる限りはお話しますけど、お客さん自身が選んだ物を試して貰うのが一番良いと思うんですよ。「これが良いです」って僕が勧めた物を実際に付けたら、その音がお客さんの好みじゃなかった場合、「あ~やっぱり自分が考えてた物にすれば良かった」なんてことにもなりかねないですからね。取り敢えず、お客さんが付けたいと思ってる物が決まってるんであれば、それを付けるのが一番です。

T:当店ではこれまでに皆川さんにPUの取り付け依頼を何度かお願いしてますが、お客さんからUPの指定がない場合は『L.R.Baggs』のelementを勧められますよね。それは何故でしょう?

M:elementはセッティングがいつも上手くいくんですよ。バシッと決まるんですよね。

T:先日、お客さんから依頼を受けたGibson Dove Custom Shopもelementを乗せましたが凄く良かったです。お客さんも大喜びでした。

M:それは良かった。嬉しいですね。『L.R.Baggs』と『Fishman』は僕の印象ではパフォーマンスは大体同じくらいだと感じていて、両者ともにセッティングが上手くいく。ただ、どちらかというと『L.R.Baggs』の方が印象が良いんですよ。

T:それはUPの内部構造ということが絡んでいるんですか?

M:ん~何でしょう、僕との相性が良いのかも知れませんですね。(笑) とてもやりやすいんですよ。その他に『Highlander』も凄く良いPUだと思うんですが、内部構造という点でとても取り付けに苦労するんですよね。(苦笑)・・・きゅ~~ぅぅぅ・・・・・・スミマセン、お腹が鳴っちゃって・・・・・・(苦笑)

ここで皆川さんのお腹が鳴る。取材させて頂いた時間は午後4時過ぎ。ちょうど小腹が空く頃だ。

T:いえいえ、大丈夫ですよ(笑)

M:きゅ~~ぅぅぅ・・・・・・ホントうるさくてスミマセン・・・(苦笑)

T:(笑)バードランドさん(『Highlander』の代理店)でもお訊きしましたが、『Highlander』は取り付けが難しいみたいですね。

M:『Highlander』が付いているギターをウチでも預かるんですけど、きちんとセッティングがなされていないものが多いんですよ。『Highlander』はピエゾPU自体が円柱形になってますんで、それに合うようにブリッジの溝をU字に削らないといけないんです。ジャック部分もネジ込み式になっているんで、タップで切っていかないといけない。

T:それは大変な作業ですね。でも、『Highlander』は個人的にも好きなPUで。音痩せがなく、とてもダイレクトな感じが。

M:そう、良いっていう方は多いです。インブリッジ・タイプにコンデンサー・マイクを追加したタイプがあるんですが、それは評価が高いですね。

T:PUの取り付けで気を付けている点や苦労する点は何ですか?

M:まずは一生懸命ブリッジの溝を直してサドルを造ってUPのバランスを出す。これが最初の到達点なんですけど、そこから一番気を付けなくちゃいけないのが、お客さんの手元に行って弦を張り替えた時にバランスが狂わないようにすることですね。ウチに来るギターで良く見かけるんですけど、僕が弦を張り替えた際にPUのバランスが狂っちゃう時がある。

T:ピエゾとサドルの接点の問題ですね。

M:そうです。チューニングをした時にちょっとサドルを後に戻すようにしないとバランスが取れないなんてことも多々あります。リペアをやってる者だったら分かりますが、なかなか普通のお客さんではその辺の微妙な調整は難しいですからね。だから、サドルを造った人じゃなきゃその辺の調整が分からないようではお客さんは困るんですよ。

T:そうならないための工夫とは?

M:やはり最初から如何にブリッジの溝を精度良くするように作業を進めていくかに尽きますね。修理依頼のギターであまりにもPUのバランスが悪いものは一回ブリッジの溝を埋めて新しい溝を造っちゃうんです。溝の深さも、底のラインもきちんと形成して、"このサドルのスリットとして問題ない"という状態にしちゃうんですよ。一生懸命サドルを造ってUPを仕込んでも、サドルのスリットに問題があると全てのバランスが狂っちゃうんです。さっきも話に出たGibson Doveも、既存のサドルはとっておいて、新たにサドルを造り替えるという依頼でしたが、あれもきちんとブリッジの溝が形成されてなかったら、そうとう苦労して抜け出せない暗闇の中を彷徨うような結果になっていたかも知れません(笑)

T:皆川さん自身はインブリッジ、貼り付け、マグネティックのどのタイプのUPが良いとお考えですか?

M:個人的にはやはりサウンドホールにマイクを立てるのが一番ナチュラルで好きですが。(笑) これを言ってしまうと今回の主旨からズレてしまいますね。(笑) それ以外ですと、一番使い勝手が良いのはインブリッジ・タイプでしょうか。ノイズも少ないですし。

T:最近では『Sunrise』や『L.R.Baggs』のM1などのマグネティック・タイプを使うアーティストも多いようですが。

M:ギターにもよりますが、やはりお客さんがどういった音を欲しいのか・・・見た目にもよるでしょうし。マグネティック・タイプもハウリングが少なくて良いですけど、どうも音がエレキっぽくなるので、その辺で好みが分かれるでしょうね。

T:これまでたくさんの修理をされている中で、「このギターとこのPUの組み合わせは抜群だ」と思ったものはありますか? 例えば、Martin D-28だったらこのUP、Gibson J-45だったらこのUPみたいな。

M:ん~、残念ながらこれまでに特にそういった具体例はありませんね。ちょっと質問の応えとは違いますが、Gibson J-45のアジャスタブル・サドル(AJ)に貼り付けタイプの『L.R.Baggs』のiBeamを付けたいっていう方が結構いらっしゃるんです。でも、AJだとボディ内部のブリッジ下にアンカーが伸びててiBeamを張るベストな位置を見つけるのが大変なんですよ。なので、色々な位置を試してみて「もうここしかない」っていう位置に付けるんですが、やはり音的にダメですね。(苦笑) PUのパフォーマンス不足になっちゃいます。質問の反対になっちゃいましたけど、J-45 AJとiBeamの組み合わせは良くないということで。(笑)

T:ところで皆川さんは第一号としてエレアコを造られたそうで。それには何のPUを付けているんですか?

M:(即答)『L.R.Baggs』のelementです。やはりセッティングしやすいんですよね。(笑)

T:そのエレアコを造るにあたって、ラインの音など、考えた点はありますか?

M:生音のイメージはあったんで、それに向かって造って行ったんですが、正直なところラインに関してはそれほど考えませんでした。ただ、ヴォリュームのツマミをどこに付けるかで悩みましたね(笑) サウンドホール脇に付けるのはちょっと詰まらないと思ったんで、考えた末、ボディ・サイドに付けました。

実際に皆川さんがそのエレアコを持ってきて下さる。

そして実際に弾いてみる。

じゃら~~~ん~~

T:おおっ!! 良い音ですね!! 薄いボディなのに生音がしっかりしてますね。ラインの音もレンジが広くてとてもダイナミック!!

M:ありがとうございます。知り合いのミュージシャンにも評判が良いんですよ。

T:仰る通り、ネックが結構太いですけど、その方が音に芯がありますよね。

M:そうなんですよ。でも、やはり長時間弾くにはこのネックだとキツイんで、削り直すことにします(笑)


『皆川ギター工房』代表 皆川隆行さん

約2年間のクロサワ楽器さんでのアルバイトを経て、'89年に中尾貿易さんにリペアマンとして勤務。そしてその10年後に斉藤弦楽器工房さんに移り、5年程前に独立し、自身の工房を立ち上げる。「こうしないとダメです!」などとは言わない"お客様主導主義"に拘る良心的かつ凄腕のベテラン・リペアマン。『Ovation』の代理店でもある中尾貿易さんでの経験からアコギ用のPUに関しても豊富な経験と知識を持つ。

http://www.m-guitars.com

 

 

東京都在住 BSさんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Fishman Matrix Natural 1 / Dean Markley DH7

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

Fishman G-II

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Martin D-1

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

音の輪郭がクリア。

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

アンプにプラグ・インし、ギターにじかにマイクを立てられる時は併せて使用。

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

マイクを立てるとハウったりするので、解決方が知りたいです。

担当から一言

アクティヴのピエゾとマグネティックの併用パターンですね。

ただ、D-1は結構ヴォリュームのあるギターですので、それ以上にマイクで拾うとすると、仰る通り、ハウリングを起こしてしまうかも知れません。

オン・マイクの際はピエゾのみで対応した方が良いかと思います。

 

 

東京都在住 TYさんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

使っていません。

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

持っていません。

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

搭載していませんが、K.YairiのRYF1000DXです。

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

無回答

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

無回答

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

実はピックアップを購入しようと思っていたのですが、どのメーカーがいいのか分からず困っておりました。

おすすめの製品がありましたら、教えて下さい。

担当から一言

良いギターをお持ちですね。

K.Yairi RYF1000DXは記憶ではRock Innさんとのコラボ作品でハカランダ合板仕様のオーディトリアムでしょうか。

S&Bが合板ですので、逆にPUを乗せてもハウリングが少ないかも知れません。

まずはアクティヴのピエゾから試してみてはいかがでしょうか。

 

 

群馬県在住 apollo-11さんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

無回答

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

選別中

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

使用しているギターはLowden F12C、 J.K Chaki 勘太郎です。

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

無回答

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

手持ちのAKG C3000Bマイクで手に邪魔にならないようホールを狙う。

アンビエントにはShure Beta57aを気持ちいい場所に。

D.I.はAvalon Design/U5。

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

ピエゾはペラペラ、マグネティックはエレキチックになり、なかなか気に入るものがない。

楽器の能力をきちんと再生してくれるピックアップの開発を切望します。

担当から一言

ピエゾはペラペラ、マグネティックはエレキチックという意見、良く分かります。

ひとつのPUで全て事が足りれば本当に良いですよね。

小貫さんのインタビューでも仰ってましたが、色々なPUを増設していくのも今のところは手かも知れません。

 

 

東京都在住 J.Kさんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Seymour Duncan Mag mic SA-6

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

L.R.Baggs Para Acoustic D.I.

T.C.Electoronics Stereo Chorus Flanger

Alesis Nano Verb

Boss Digital Dimension

Boss AD-8

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Santa Cruz OM Rose

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

マイクとマグネットの音のMixが割と簡単に楽しめる。

ハウリングに強い。

PU自体が重いので生鳴りが少しスポイルされる。

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

ギター → L.R.Baggs Para Acoustic D.I. → T.C.Electoronics Stereo Chorus Flanger(ステレオ・アウト)→ Alesis Nano Verb(ステレオ・アウト)→ ミキサー

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

音作りがたいへん難しいので、最初は予算内で必要最低限と思われる機材で試していくのがいいと思う。

または、遠回りせず一気にM-FactoryやG-Natural等高価で高性能なものを取り付けてしまう手もある。

担当から一言

SA-6は裏側にコンデンサー・マイクが仕込んでありますので、よりアコースティカルなライン・サウンドを楽しめますね。

ハウリングに強いのも魅力的です。

ただ、少々値が張る(定価73,500円)のと、重量のせいで生音が抑えられてしまうのが、仰る通り、難点ではありますよね。

 

 

北海道在住 full-houseさんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Highlander HP-1

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

無回答

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Martin D-35 '77

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

良い点は、何というか迫力があり、力強いところ。

悪い点は、ハウリングを抑えたい。

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

RolandのJC等に直接繋いで、アンプの音をマイクで取るみたいな。

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

無回答

担当から一言

'77年製のMartinですと、かなり生鳴りしそうですので、ハウリングしてしまうのかも知れませんね。

Highlanderを付けられてますので、バードランドさんから販売しているPro Acoustic Mix D.I.を試してみても良いかと思います。

ハウリング抑制になるかも知れません。

 

 

神奈川県在住 Kさんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Yamaha純正?

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

プリアンプ内蔵型/エフェクター無し。

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Yamaha APX-50

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

そもそもエレクトリック・アコースティックなのでPUのない状態というのは存在しませんが、推し量るなら重たいことが欠点です。

また、コントロール・ノブがギター本体外側に出ているのは便利ではありますが、その分、ノブ周辺の木に割れが入りやすいです。

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

無し。

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

特に無し。

担当から一言

もちろんエレアコはライン専用に作られてますので、その音は良いですが、生音も活かしたいユーザーには使いづらい面もありますよね。

重量の点も否めませんね。

しかしながら、APX-50のラインのサウンド・バランスは本当に素晴らしいと思います!!

 

 

東京都在住 takaさんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Bill Lawrence FT-145

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

Crews DPA-2A

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Sigma SEC-28

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

取り付けが簡単で値段も安い。

音も温かみがあり、気に入ってます。

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

プリアンプを繋ぐ時もありますが、小さい場所が多いので直で繋ぐ事が多いです。

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

最近は性能も上がってる様ですが、オン・マイクには敵わないのでしょうか?

担当から一言

お見受けしたところ、エリック・クラプトン・ファンの方でしょうか。

オン・マイクがベストと仰る方も多いですが、演る音楽やスタイルによって、それは一概には言えないようにも思います。

生音とは異なる、PUとしての良い音も存在しますからね。

 

 

千葉県在住 shintasukeさんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Fishman Acoustic Natural

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

Behringer V-AMP2

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Headway HD-528

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

利点は軽くて小さくて目立たないこと。

欠点は電池交換が面倒なこと。(弦を緩めなければならないから)

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

マイクとギター・ピックアップの2系統から音を拾っています。

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

なるべく小さくて目立たないものが良いです。

電池交換も簡単に出来るものが良い。

電池交換の必要の無い物があると良い。

担当から一言

ドレッドノウト・タイプにアクティヴ・ピエゾPUという正統的なスタイルですね。

ただ、やはりボディ内部のネック・ブロック部のバッテリー交換はホント面倒です。

Behringerもコスト・パフォーマンスに優れていますが、プリアンプに拘られて見ると、もう少しサウンドの幅が出るかも知れませんね。

 

 

神奈川県在住 H.Oさんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Fishman Rare Earth Humbucking

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

Boss AD-5,L.R.Baggs Gig Pro

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Headway HD-115RE

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

バランスが良くノイズが出難い。

電池の入れ替えが面倒。

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

ギター→プリアンプ・エフェクター→ミキサー

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

機材を通した音と生音とでは別物です。

ピックアップだけの問題ではありませんが、この点を解決出来るシステムが出来上がれば最高です。

担当から一言

Headway HD-115RE・・・'07年にリリースされた50本限定品ですね。

ノン・スキャ仕様で芯のある太い音が魅力の名機です。

ボディの共振を拾うSunrise等も試して頂けると、さらに良いライン・サウンドになるかも知れませんね。

 

 

兵庫県在住 S.Mさんの場合

質問1:

愛用のアコギ用PUのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

L.R.Baggs element

質問2:

愛用のアコギ用プリアンプ/エフェクターをお教え下さい。

答え:

SansAmp

質問3:

質問1でお答え頂いたPUを搭載したアコギのブランド名とモデル名をお教え下さい。

答え:

Gibson J-45

質問4:

そのPUを搭載したことによる利点と欠点をお教え下さい。

答え:

利点はライヴに強い。

欠点は取り付けが面倒で他の物が試せない。

質問5:

簡単で結構ですので、ライヴやレコーディングでの決まったセッティング等がございましたらお教え下さい。

答え:

ギター→プリアンプ→ミキサー

質問6:

その他、アコギ用PUに関してのご意見などがございましたら、ご自由にお書き下さい。

答え:

ギターとの相性がもっと明確化すれば良い。

担当から一言

拝見したセッティングですと、かなりダイナミックなサウンドかと思います。

ただ、ハウリングが心配ですので、ノッチ・フィルター付きのL.R.BaggsのPara Acoustic D.I.等も試して頂いても良いかも知れませんね。

この企画の最終章で必ずやPUとギターの相性を明確化させます!!

筆者後記

  今回はアコギ用ピックアップを販売・製作する側、取り付けるリペアマン側、実際に使用しているユーザー側の各々の率直な意見を掲載してみましたが、皆様はいかがな感想をお持ちになったでしょうか。

 製作・販売される側の小貫さんは、誇れる自身の持ち駒を活かし、その中で最大限の解決方法を見出しています。「これが駄目ならこのやり方を」という決して諦めない姿勢。何よりも小貫さんの「何としても良い音にしてやろう」という心意気がひしひしと伝わるインタビューでした。ひとつのPUに拘らず、それで駄目なら新たなものを増設していくというところが、ユーザーさんの考え方を少々柔軟にさせてくれたかも知れません。

 片や皆川さん。「サドルを造った人じゃなきゃその辺の調整が分からないようではお客さんは困るんですよ」という発言が印象的で、その辺から皆川さんの"お客様主導主義"らしさが窺える対談でした。飽くまでもお客様の意見を尊重する姿勢には、リペアに対する皆川さんの確固たる自信の裏返しが見て取れます。また、いかに優れたPUとギターであっても、取り付ける人次第でその善し悪しが決まることを改めて知らされた思いです。

 そして、ユーザーさんの声。正直なところ、この企画を始めた際は「果たしてユーザーの方はアコギ用のPUにどれだけ関心があるのだろうか?」「こちらばかりが騒いでいて、ユーザーさんはそれほど関心はないのかも知れない」と考えた時もありました。しかし、こうしてアンケートを試みて、沢山の方よりご応募を頂き、やはり多くの方が様々なお悩みやご意見をお持ちということが分かりました。それがひとつの大きな成果でもありますし、この企画の本当の第一歩になったように思います。残念ながら、ご質問等に完璧にお応え出来るまでには至っておりませんが、微動ながらも着実に進歩していきたいと考えておりますので、今後とも本特集にご期待頂ければ幸いです。

 最後になりますが、今回、お忙しい中、取材にご協力頂いた『Birdland』の小貫さん、『皆川ギター工房』の皆川さん、アンケートにご協力頂いたお客様には心より感謝致します。この場を借りてお礼申し上げます。

 

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