ハードロックシーンの高まりと共に、アンサンブルにおけるエレクトリックギターの役割が次第にきらびやかなものになっていった70年代後半から80年代初頭にかけて、先鋭的なギタープレイヤーのニーズを完全に充たすギターはまだなかなかありませんでした。無論それまでの音楽シーンの中枢を支えていた存在としてFenderとGibsonがありましたが、創始者レオ・フェンダーが去って久しいFenderは過去のデザインを繰り返すことに終始し、また度重なるコストダウンにより年々その質を低下させている状況でした。もう一方のGibson社も、レスポール以降の新世代型ギターという点においてはデザインに精彩を欠き、特にこの時代においては奇妙なモデルを乱発するだけに等しい存在となりつつありました。
そんな混沌とした時代の中、エレクトリックギターの父レオ・フェンダーの遺伝子を受け継ぐに等しいと言える人物が二人登場します。ウェイン・シャーベルとグローヴァー・ジャクソンです。ウェイン・シャーベルこそ、Fenderストラトキャスターというギターが持っていた自由なスピリットを受け継ぎ、そして初めて昇華させた人物と言えるでしょう。当時のFender社がただ保守的に受け継ぐしかなかったボルトオンギターを、その利点を生かし自由にコンポーネントするという新たな次元へと進化させたのです。無論、コンポーネントという概念はエリック・クラプトンの時代からありましたが、クラプトンが目指していたのがあくまで「ストラトキャスター」であったのに対し、ウェイン・シャーベルが求めたのはより自由で先鋭的なギターでした。そしてそれにさらなる独創性を加味し、ブランドとして完成させたのがグローヴァー・ジャクソンです。こうした彼らの功績は、エレクトリックギターの進化というものに無限の可能性を指し示し、多くのデザイナーに希望を与えました。その後ジェームス・タイラーやジョン・サーなど多くの優秀なギターデザイナーが登場しますが、シャーベル/ジャクソンのデザインの影響を全く受けていない人物は一人としていないでしょう。
