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ローズウッド最高峰のハカランダと、現在主流となっている比較的安価なインディアン・ローズウッド。
Martinを始め、様々なハイエンドギターメーカーに使用されています!
今回はそのハカランダに代わるべく現れた”ニュー・ハカランダ”と呼ばれる高級ローズウッド達を国内外の著名ブランドからご紹介!
ローズウッド材の最高峰ブラジリアン・ローズウッド(呼称ハカランダ/以降ハカランダに統一)と、現在主流となっている比較的安価なインディアン・ローズウッド。Vol.1で取り上げた通り、優れたサウンド特性を持つハカランダは、価格高騰や保管材の枯渇により使用が極めて困難な状況です。そのハカランダに代わるべく現れた ”ニュー・ハカランダ” と呼ばれる話題の高級ローズウッド材、国内外の著名ブランドがハイエンド・ギターに採用しています。現在のマーティン社では、合わせてしまうと見分けがつかなくなってしまう、という理由でストックのハカランダとマダガスカルで離れた場所で保管しているそう。
それほどにローズウッドの代替材の中で最もハカランダに近い杢目外観を持つのがこのマダガスカル・ローズウッドです。
音質に関してもハカランダに最も近しいサウンドで、ブラジリアンに迫るレスポンス、レンジの広さと低域の輪郭、高域の抜けを持ちます。
初めは代替材として使われ始めた品種ではありますが、違法ギャングによる伐採問題なども有り2000年にマダガスカル政府により保護地域での伐採が禁止され、ワシントン条約でも規制が入り、入手困難となりました。
ハカランダ時代の戦前仕様を再現したMartinの高級モデルや、高級ブランドのハイエンドモデル等に使用されています。- Martin D-45
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Martinの最高峰D-45。
近年様々な復刻版やカスタムモデル、リミテッドモデルが発売されています。
Martinでは最高ランクのモデルにマダガスカル・ローズウッドを積極的に採用。「現行モデル最高峰ランク」というのも頷けるハイレベルな楽器を作る上で、非常に重要な役割を持っています。
- こちらは2012年製、D-45 Madagascar Anaheim。2012年のアナハイムギターショーにて発表された国内販売20本限定モデルです。
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“Madagascar”のワードをモデル名に入れるほど、マダガスカル・ローズウッドに価値が有ることが伺えます。
縦ロゴにスノーフレークインレイ、WEVERLYのオープンバックペグと、オールド仕様を忠実に復刻した高級感溢れる外観。
2ピースバックで広々とに使用したマダガスカル材。きめ細かく詰まった、真っ直ぐ流れる様な杢目から、うねるような杢目まで表情が楽しめる1本。
サイドにはハカランダにも似た黒いヤニの線がクッキリ入っています。超高密度な杢目は、インディアンとは明らかに違うアタック感とレンジを生み出します。
- Greven Vintage D
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Collings, Bourgeiosなど、海外を中心に現在多くのMartinタイプのハイエンドギターを製作している有名工房が活躍しています。
中でも戦前のMartinタイプの製作に定評のあるのが、巨匠・John Greven(ジョン・グレーベン)氏の手がけるGreven Guitars。
最高級モデルにハカランダを使用している他、マダガスカル・ローズウッド、ホンジュラス・ローズウッドと、数々の入手困難なニューハカランダを採用し、理想的なサウンドのギターを送り出しています。
- こちらは2007年製、The Oshio D Vintage。
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Grevenの人気モデルVintage Dと、押尾コータロー氏シグネイチャー・モデルThe Oshio Dのスペックを組み合わせたレア・モデルです。
ビンテージ特有の”芯のある轟音”を再現するため、上質なマダガスカル・ローズウッド使用。ズシッとパワーのあるサウンドに仕上がっています。
ハカランダと比較して、白っぽさのある茶色をしている個体の多いマダガスカルですが、この個体は赤みが強く、薄く黒いラインも見える個性的な杢目の個体。ホンジュラス・ローズウッドにも似た色味が見られます。
ハカランダ同様、個体によって様々な表情があることがわかります。
“ニューハカランダ”といえばホンジュラス・ローズウッドといわれるほどの代表種。マダガスカルに比べ赤茶みが強く、ブラジリアンほどエキゾチックなヤニの入った杢目は少ない均一な見た目をしています。
インディアンローズよりも確かに乾いたサウンドがして、レンジの広さや輪郭をとっても、ハカランダの代替材に相応しい音響特性を持ちます。
“ホンジュラス”と名がついていますが、産地はホンジュラス湾の対岸、ユカタン半島の付け根にあるベリーズという国が原産です。
ギターの他には高級家具や、ピアノ、木琴などにも使用されていますが、現在はワシントン条約での規制もあり、入手困難。むしろ音響特性はハカランダ以上、ともいうビルダーもいるほどです。
マーチンを始めとした海外ブランドでマダガスカルが多く使用される一方、ホンジュラス・ローズウッドは国内の個人工房系などでも好まれて使われているのがよく見られます。一般的によく「ホンローズ」と呼称されています。- HEADWAY
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長野県松本市に工場を構えるディバイザー社。名工・百瀬恭夫氏を筆頭に現在、momose,Bacchus,HEADWAYと様々なブランドを展開しています。
アコースティックブランドであるHEADWAYは80年代、工場が火災にあい製造停止しましたが、1999年にアコギの生産ラインを再構築します。
現在ではインディアン・ローズウッドの他にニュー・ハカランダ材を始めとした希少材を多く採用。表情豊かなモデル展開をしています。
- ヘッドウェイの人気モデルHOシリーズ。000タイプのHFシリーズに対して、スケールの長いOMタイプのモデルです。
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こちらは2003年製、限定生産のハイグレードモデル、HO-450。目の詰まったホンジュラス・ローズウッドを使用しています。
他種のローズウッドと比べ、赤みがあります。ハカランダ、マダガスカルのようなヤニは出にくいですが、目がつまりながらも表情豊かにうねりのある杢目も見られ、レスポンスの良さやレンジ感はニュー・ハカランダに相応しいサウンド。表面の艶感もインディアンとは違い、マダガスカルに似た雰囲気です。
- Terry's Terry
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日本のアコースティックギター創世期、ヤマハに在籍し、FGシリーズなどの数々のフォークギターを世に送り出した、テリー中本こと中本輝美氏。テリー中本氏が手掛けたFGのハイエンドランクのモデルなど、今では高値で取引されています。
現在は自身のTerry's Terry(テリーズ・テリー)ブランドを立ち上げ、高級ギターにも関わらずオーダー数年待ちは当たり前の人気ぶり。 日本最高峰アコースティックギターとして名を馳せています。
稀にハカランダなども使用していますが、レギュラーモデルには主にホンジュラス・ローズウッドを好んで採用していることでも知られています。
- こちらは1996年製、T’sTの代表モデルであるTJ-100。全帯域が際立ち、その音量感と倍音は随一。
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ホンジュラスには珍しく、色が濃く、杢目のぼやけた個体で、濃いめのインディアン・ローズウッドのような見た目をしています。
一見ホンジュラス・ローズウッドらしく無く感じますが、T’sTで採用されるホンジュラスローズにはこのような杢目の個体が多く、 T'sT独特の圧倒的な倍音感を引き出せる木材を選定すると、このような見た目の個体になってくるのかもしれません。
あとがき
今回はMartinの他にも、国内外の様々な上級モデルに採用されているローズウッドをご紹介しました!
一流メーカーから個人工房系まで、ハイエンドモデルにこぞって採用しているニューハカランダ!
もはやニューハカランダは代替材ではなく、それぞれに価値があり、重宝されています!
そして、この波に乗って、近年では様々なマメ科のローズウッド種が次々登場してきます…!続く。。。