今回の企画を思い立った訳とは
私事の余談ではありますが、ここで実際にあったエピソードを一つご紹介したいと思います。それは約一年ほど前のこと、僕の友人が1987年製Eシリアル期のST62-140(EXTRAD)を売却するべく、地元の某楽器店さんを訪れた際の話です。
稀少で素晴らしいギターだから、さぞかし良い査定額が出るだろうと意気揚々と持ち込んだ友人。しかし、それはすぐに叶わぬ夢と砕け散り、悲しみの底に突き落とされました… なんと店員さんにVINTAGE SERIESの、所謂通常ラインのモデルと勘違いをされて、想像には程遠い査定額を提示されてしまったそうです。きっとヘッド裏デカールの無い初期モデルで(後述)、ネックポケットにも具体的なモデル名のスタンプが無かったことが、このような悲劇を呼んだようです。
そんな友人が悲しげな表情で、TC楽器にそのST62-140 EXTRADモデルを持ち込んでくれました。一見しただけで、並々ならぬ最上級モデルらしい抜群のクオリティがヒシヒシと伝わってきました。しかし、元々カタログの他に詳しい資料なども少ないモデルとなりますので、より慎重な査定業務が求められます。これまで長年に渡り蓄積されたTC楽器の販売データをフル活用するなどして、楽器の持つ本来の価値を最大限に評価!!弾き出した査定額は、悲しみに沈んだ友人の暗い表情を一掃して、大満足の笑顔へと変えました。
この喜びに満ちた友人の笑顔がとても印象的だったので、私はEXTRADやJVシリアル、LIMITED EDITIONなどのレアなモデルを全力で収集することを決意したのでありました。それから約1年に渡ってTC楽器のネットワークをフル活用し、国内に留まらず世界中から貴重なモデルを集めることに成功しました。その結果は、担当した私も驚く20本をも超える成果を上げることが出来ました。
せっかく集めた貴重な楽器の数々ですので、その開発や製造に携わった全ての方へのリスペクトを込めて、また私の友人のように悲しい思いをする人が出ないよう(笑)、少しでもお役に立てればとの思いから本コラムを企画しました。カタログやネットだけでは情報は惜しくも調べきれず、僕自身も悔しい思いをしました。私、1988年生まれの28歳、未熟な若輩者ですが、実機を前に勉強しつつ、頑張ってまとめました。誤っているところや気になる点、またご質問等ありましたら、お気軽にお知らせ頂けましたら幸いです。