NOBUWORKS - TC楽器 - TCGAKKI

NOBUWORKS

神奈川県鎌倉市材木座海岸、ウインドサーフィンの名所としても知られるこの場所に新たなギターブランドが登場した。 広大な海からの豊かなインスピレーションと長年に渡りウインドサーフボードを製造してきた圧倒的なまでの技術により、 極めて高い完成度と唯一無二の個性を放つNOBUWORKS。新感覚のギターがここに登場する。

今まで弾けなかったフレーズが弾けるギター圧倒的に弾きやすい!しかしそれだけで終わらないある種、玄人向けとも言える懐の深いギター

ウインドサーフボードとギター!

ビルダーであるノブ吉田氏はミュージシャンとして活動する傍ら、鎌倉市材木座海岸にあるウインドサーフショップでウインドサーフボードの製作に勤しみ、週末はウインドサーフィンのインストラクターとしても活躍されている。しかしそんな多忙な毎日の中でもギター製作へのひたむきな情熱だけは変わらず、寸分の予断もなくハンドメイドに取り組んでいる。そんなスーパーマンのような生活を送る吉田氏にウインドサーフィンとギタークラフトの関わりについて語ってもらった。

数ミクロンの差が勝敗を分けるウインドサーフボードのシビアな世界

吉田氏「私はオリンピックウインドサーフィン日本代表選手の使用するボードなども手がけています。ウインドサーフボードというのはとてもデリケートなもので、裏面のアーチの形状、角度、塗装の仕上がり具合などにより海面の捉え方が全く違い、スピードや乗り心地などが全く異なってきます。プロの大会ともなればミクロン単位の仕上げの差が雌雄を決する時もある。このため私は表面仕上げのためのさまざまな技法や塗装法、塗料などを本当に何百通りと言えるほど試してきました。こうしたノウハウの蓄積がNOBUWORKSのギターに反映されています。

  • NOBU氏製作のボード
  • NOBU吉田氏とオリンピックウィンドサーフィンRS:X級日本代表 富澤慎選手

動的な木工技術

確かにギター製作と木工技術とは切っても切れない関係で、Fender Custom ShopのマスタービルダーやJacksonのマイク・シャノン氏など家具職人出身の有名ビルダーは多い。このあたりの関連についても吉田氏に尋ねてみた。吉田氏「確かにギターづくりにおいて木工技術は欠かせません。優れた家具職人が優れたギタービルダーになった例を私自身いくつも見ていますし、そういう人には敬意を抱いています。同様に我々が製作しているウインドサーフボードもそれと同じか、それ以上の精度が求められる世界です。特にプレイヤビリティという部分が勝敗を決める要因となります。プレイヤーの素早いパッションにマッチするかどうか、そうした動的なニーズにリニアに応えられるかどうかがウインドサーフボードとギターの共通点だとも思います。」

そして永続する価値へ

鎌倉という場所柄、神社仏閣など千年の時を経た木造建築物も多い。このような環境はギター製作にどのような影響を与えているのだろうか。吉田氏「インスピレーションに富んでいて、とても恵まれた環境だと思います。千年も前に作られた木造物が時を超えて今も尚、輝きを放っているなんて。非常に感銘を受けます。私の作るギターも年とは言わないまでも、末永く弾き続けてもらえたら。それがここでギターを作るロマンですね。」

万人向けのギターだとは思わないので、こういうの好きな人が弾いてくれれば(笑)
ノブ吉田氏

ある日、NOBUWORKSより製作中のニューモデルの画像が届いた。しかも吉田氏はニューモデルの開発に合わせて工房も新設したとのこと。期待に胸を弾ませ、新たな工房に取材に向かった。

吉田氏より届いた製作中のニューモデル「Karin」の画像

お伺いしたのはJR大船駅からほど近いビル。ドアを開けると看板代わりに光を放つNOBUWORKSギターが出迎えてくれた。

階段を降りると受付けのデスクがあり、まるでスタジオのよう。そうここには18畳のスタジオを併設して作っており、仕上がったギターをすぐにスタジオでチェックできるようにとのこと。

仕上がりの確認や調整の時にはバンドメンバーも交えてアンサンブルの中での音を確認しながら作業していくという、まさに現場志向の工房だ。

取材時にちょうど工事中だったスタジオの中も見せてもらった。完全防音でバンドリハーサルには充分な広さだった。

そしてこちらができたばかりの新工房。木の匂いがいかにも新築という雰囲気を放っている。基本的に大掛かりな切り出しや塗装はショップ工房の方で行い、こちらでフレッティング、組み込み、調整、仕上げ、を行うとのこと。

 

新しい工房らしくモダンできれいな佇まいの部屋。テーブルには珍しい木材やテンプレートなどが置かれていた。

壁に貼られた図面と作業中のニューモデル

トップのアーチの削り出しを行っているところ。階段状に削りだされたトップの段差がおわかり頂けるだろうか。この段々を四方カンナで滑らかで美しいアーチへと仕上げていく。

次第に滑らかなアーチへと仕上がっていく。美しく、かつ響きの良いアーチに仕上げるには経験しかないとのことだが、NOBU氏のカンナさばきが魔法のようで見ていて楽しい。

着色されたイメージを見せてくれた。こうして実際に仕上がりの色をイメージしながら美しいアーチへと整えていくとのこと。

フレットの仕上がりも美しい。特にフレットエッジはプレイヤビリティに大きな影響を与えるため並々ならぬこだわりを持っており、一度仮打ちした後にエッジを仕上げ、再度打ち込むという「二度打ち」を行っているとのこと。時間と手間を惜しみなくかけた入念な仕上がりになっている。

コントロールキャビティも小部屋に分かれており、木工技術の細かさを物語っていると同時に見て楽しい。これに実際にどんな配線が組み込まれるかはお楽しみ。

これがNOBUWORKSオリジナルのサスティンブロック。

フロイドローズにもかなりのこだわりがあり、あらゆる年代のトレモロやサスティンブロックをコレクションしている。サスティンブロックによってサウンドに多大な影響を及ぼすため、さまざまな実験や試行錯誤の繰り返しによって設計された。このNOBUWORKSオリジナルのトレモロブロックを取り付けることで鳴りはもちろん、音の分離や倍音の立ち上がりまで劇的に向上する。

ここで、NOBUWORKS製ギターを使ってレコーディングされたという音源を聴かせて頂いた。一言で言うなら「聴いたことのないエレキギターの音」。鋭い立ち上がり、タイトなアタック感、芳醇な倍音、それでいて太さもある。豊かなミッドレンジに伸びやかなサスティン。ギターカタログでよく見られる褒め言葉を全部集めたような表現になってしまうが、本当に音が良いとされるエレキギターの特徴をイイトコどりしたようなサウンドだ。「60年代の中期くらいのストラトの立ち上がりにレスポールカスタムの太さをサスティンを混ぜたみたいな音ですね」と私がいうと吉田氏はニヤリと笑った。

インタビュー

せっかくの機会なので鎌倉にあるウインドサーフショップの工房も拝見したくなった。その旨お伝えすると吉田氏は快く「いいですよ。車で20分くらいなので今から行きますか」とのこと。早速、吉田氏の運転でショップ工房に向かった。車の中で音楽談義に花が咲いたのは言うまでもなく。

吉田氏にいつ頃からギター製作を始められたのか、尋ねてみると驚くべき答えが帰ってきた。「そうですね。中学の時に親にエレキギターを買ってもらったのですが、翌日にはバラバラにして塗装まで全部剥がしてました。何か、自分なりに納得できない部分があったんでしょうね。以来、いろいろなギターを手にしてきましたが、どこか納得できず結局自分が弾きたいギターは自分で作るしかないと。」

現在、大多数を占める中級者を中心に評価の高いボード作りはどこで憶えたのかも気になって尋ねてみた。
「これもギターと同じような感じで、ウインドは好きでやっていたんですよ。でも既存のボードはちょっと違うかな~と思って自分で作り始めたんです。」さらっと答えてしまう。そしてそれを実際に作ってしまう行動力、そして作り上げるまでの執念とも言える半端のないこだわり。このあたりを苦労話をするでもなく、楽しそうに語る吉田氏。天才の片鱗をを見た気がする。

「そうそう、今作っているスタジオね、ミュージックビデオのロケ地にもできるように壁や照明にも凝って将来撮影もできるようにしたいと思っているんですよ。」吉田氏の夢は尽きない。そしてその細部に渡るこだわりも相変わらず半端なく…。

そうこう楽しく話している間に車はあっという間に材木座海岸へと到着していた。

早速、工房に案内してもらった。

先ほどの新しくきれいな工房とは正反対、長い年月に渡って作業がなされてきた工房ならではの貫禄がある。

ここで作られるボードは月に1本とのこと。少ないように感じるが、妥協のない入念な仕上がりを考慮するためにはそれだけの日数を要するようだ。もちろんギターについても同様に渾身の情熱が注がれている。

いろいろな木材を削ったパウダー。レア材等にもともとある傷をリカバリーしたりインレイ加工時に使用する。独自の使用法では塗料や樹脂、接着剤に配合して使われることある。工具類も使い込まれた年輪が感じられる。

工具のひとつひとつを愛おしそうに手に取り、それぞれについて嬉しそうに説明してくれる吉田氏。日中はボードの製作に没頭し、ギター作りはショップが閉まった後、主に夜間に行われるようだ。週末はウインドサーフィンのインストラクターとして海に出て、そしてミュージシャンとして海外での活動もこなしているという。この人は一体いつ寝ているのだろうか、と不思議になる。「いや~ほとんど寝る時間は取れないんですよ。」と笑顔で語る吉田氏の目を見て驚いた。疲労の色が全くないのだ。若々しく輝いて、時に子供のような無邪気な笑みを浮かべる。今取り組んでいることの全てが、楽しくて仕方がないという感じだ。すべてに全力で取り組み、そしてそれを心から楽しんでいる。このバイタリティも才能のひとつなのだろう。

当ショップではウエットスーツのオーダーメイドも行っている。生憎の雨模様だったが、窓からはすぐ近くに海が見えた。

ボディトップのアーチはさらに滑らかで美しく仕上げられていた。フレットの処理も完璧に。

キャビティ内は完全にシールディングされ、こんな風に仕上げられていた。通常の出力と別にNOBUWORKSオリジナルのS.A.Wシステム(Sonic Air Wave)が搭載され、ボディの鳴りをダイレクトにアウトプットすることができる。ユニークな仕様だ。

手に取って最初に驚いたのがネックの質感。ザラっとしていて正直「なんじゃこりゃ!」というのが第一印象。ではあったが1分も弾いていない間にこのざらつき感がかえって馴染むような気がして、心地良くなってきた。始めて触るネックなのに、ずっと昔から弾いていたかのような親しみが湧いてくるから不思議だ。吉田氏の説明によると、この塗装は弾き込むことによってザラつきが落ち、半年ほど弾けばそのプレイヤーの手の形状やプレイスタイルに合わせて変化していくことで、完璧に馴染むネックへと変貌するとのことだ。実際に吉田氏が半年ほど弾いたネックを触らせてもらったが、とても近年のものとは思えない、ヴィンテージのような質感へと変化していた。自分で弾いて育てて行く楽しみも味わって頂きたいとのことだ。

右側は弾き込んだモデル。この塗装は長年の実験の後に編み出した特殊な塗料と塗装法を用いるため、他では真似できないものだ。

生鳴りもとてもしっかりしていて、これが例のサスティンブロックによるものなのか、特に低域の響きが身体に心地良い。早速、アンプにプラグインしてみる。 ゲインやや高めのセッティングにして、やはり大音量で。とてもシャープでピュアなサウンドが飛び出してきた。レスポンスが速くてちょっと戸惑うほど。 セレッションからアルテックの417に変えた時の様な感じ、といえば近いだろうか。生音ではあれほど低域が出ていた割にはサウンドはタイト。 もちろん必要なローは充分過ぎるほど出ているが、不要なレゾナンスはなく低域の暴れもない。このあたりはやはりセッティングの賜物だろうか。 ピックアップはフロントにダンカンのCool RailsでリアはSH-14 Custom5とのことだが、ピックアップのスペックは最初には決めず、仕上がったギターのトーンにマッチするものを入念に選んで決めるそうで、このあたりもハンドクラフトならではの贅沢なのかも知れない。 出力も高すぎず低すぎず、美味しいところをジューシーにアウトプットしている、そんな印象だ。 プレイヤビリティについては申し分なく、とても弾きやすいが弾きこなすのは難しいそう、というかこのギターのポテンシャルを最大に引き出すにはやはりかなりの熟練度が必要だな…と思い知らされる奥の深さも味わうことができた。

S.A.Wシステム

今度はアンプをクリーンにして、ボディ鳴りをダイレクトに出力するというS.A.Wシステムに切り替えて試してみた。ピックアップからの音とは全く異なり、これまた不思議なサウンドでウッディなトーンだが、エレアコやフルアコの音とも違う。いわば「なんだか懐かしいような気がするが実は聴いたことのない音」。ギター全体がマイクロフォニックになった感じで、レコーディングなどでも威力を発揮してくれそうな感じだ。

最後に吉田氏におすすめのセッティングを尋ねてみた。「特にこうしろということはないんですけど、やっぱり自分自身80年代とかのハードロックが好きなんで、 そういう音作りだと向いているかなと思います。特にうちのギターはその頃の機材と良く合うみたいなんですよ。 JCM800とかに昔のRATとかOD-1とかを繋いで弾くと、信じられないくらい気持ちの良い音がします。 だから万人に好まれるギターではないかも知れないけど、そういう音作りが好きな人が弾いてくれたら嬉しいですね。」

14才の時に友人宅にあったギターを初めて手にし、15才で両親に頼みこんでギターを買ってもらうが翌日には全ての塗装を剥がし本体もバラバラにしてしまう。トレモロやピックアップ、回路等を手探りで改造しネックグリップも家にあった鉄のステーをカンナのように使いながら、自己流でシェイプしていた中学生だった。以降、所有する全てのギターはプロダクションではく、部品単位で買ってきたものをコンポーネントしカスタマイズしながら楽しむスタイルになる。17才の時にはポジションマークにLEDを埋め込み、光るネックを製作した。

いつしか木材からギターを作るようになり、これまでの経験を生かしてオリジナル工具を多数使った自己流のギタービルディングで作品を生んできた。木目が近くに見えるような塗装や、ネックグリップのザラザラした特殊塗装など、他分野での研究の成果も詰め込み、最後の工程まで自身で行うスタイルに強いこだわりを持っている。

98年、それまで8年務めたアパレル企画生産部を退職し単身カナダへ。帰国してからは老舗ウインドサーフィンSHOPに勤務する。土日は海上でウインドサーフィンを教え、平日はギターブランド名と同じ「NOBUWORKS」ブランドでウインドサーフィンボードを開発、製作している。1本づつハンドメイドで、オーナーの体格に合わせて生産。世界の有名ブランドも発売することが難しい指向性を明確に打ち出したこのボードは、その層に多く支持されている。またオリンピックウインドサーフィンRS:X級 男子日本代表 富澤慎 選手(北京、ロンドン)のボードメンテナンスなども行う。

音楽活動はCM用楽曲の製作、演奏等。(SUBARU SOUTHERN AFRICA 他)2011年には「Claire Johnston」「Mango Groove」と自身の楽曲「PARTNER」をコラボレーションする。彼らはネルソンマンデラ大統領との関係も深くクイーンのフレディーマーキュリー追悼コンサートへの出演や、ラグビーワールドカップでグラウンドセンターで国歌を歌うなどの活躍をする南アフリカ国民で知らない人はいない有名なバンドである。

 

 
ABALONE サンプル音源


SPALTED サンプル音源


KOA サンプル音源 

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